ラネクシーは、クライアント操作ログ管理サービス「MylogStar Cloud」をリリースした。これまではオンプレミス版のみで展開してきたが、ユーザーからクラウド版を望む声が多く寄せられたことを受け提供に踏み切った。管理サーバーの設置は不要で、すぐに導入、運用ができることや、1エージェント単位の月額サブスクリプションにより小規模環境でも利用しやすいことなどをアピールし、メインターゲットとなるSMBの顧客獲得を目指す。
精密な操作ログを取得し競合と差別化
同社は、2007年10月にクライアント操作ログ管理ソフトウェア「MylogStar」を発売。操作ログ管理機能に加えて、監査証跡管理機能、デバイス制御やアプリケーション起動制御などによる情報漏えい対策、問題発生時の原因究明・拡散防止を容易にする追跡機能などを提供している。大規模環境には管理サーバーでログを一元管理する「集中管理型」、小規模環境向けにはPC1台から対応する「スタンドアロン型」などを展開し、大手金融機関や自治体などさまざまな業種で利用されているという。
(左から)古川伸一・取締役、猪狩大介・部長
今回、クラウド型サービスの「MylogStar Cloud」をリリースした背景について、同社取締役の古川伸一・第1営業本部長は「企業のシステム全体がクラウド化する中で、操作ログ管理もクラウドにしたいという声が増えてきた。加えて、新型コロナ禍でリモートワークが普及したことで、中堅中小企業でも管理する端末が増加し、操作ログ管理への関心が高まっていることからニーズに対応した」と説明する。
操作ログ管理は、専用ツールだけでなくIT資産管理ツールの機能の一環でも提供されるなど、競合が多い。同社は差別化のポイントとして「他社の操作ログ管理製品はOSとアプリケーションの間のログを取得しているが、MylogStarはOSのカーネルレベルでログを取得しているため、精密なログや他のログ管理製品では取得できない操作を把握できる。精密なログでなければ分からないセキュリティ上の課題も少なくないため、大きな強みだ」と古川取締役は強調する。
サブスク型の提供により環境に沿った利用が可能
従来、クライアント操作ログ管理の仕組みをオンプレミス環境で導入する場合、専用の管理用サーバーを企業内に用意する必要があり、加えて事前に取得ログ項目を設定するなどの手間もかかっていた。MylogStar Cloudの導入ではこうしたプロセスが不要だ。
専用の管理画面ではグループ設定やアラートタグ設定、エージェント管理などが可能。また、取得したログデータはグラフなどで可視化できることから、禁止されている操作を行った社員がいた際は、一目で把握できるという。
MylogStar Cloudは「Standard」と「Plus」の2種類のサービスをラインアップしている。Plusは操作ログ収集機能に加え、メール分析やWebアクセス分析などの「業務分析機能」を搭載している。価格は1エージェント単位の月額サブスクリプションで、Standardが800円、Plusが1600円。規模や予算に合わせた導入が可能だ。
メインのターゲット層はSMBを想定している。現在は間接販売のみで、大手ディストリビューターのダイワボウ情報システム経由で再販している。「導入の際に複雑な構築作業が発生しない手離れの良いサービスのため、パートナーも提案しやすい商材だ」(古川取締役)と自信を見せる。将来的には直販も行う予定だという。
また、同社は「DX推進室」を設立するなど自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを強化している。その中で、MylogStarを活用して社員の業務効率化を図っているという。同社第1営業本部の猪狩大介・プロダクトソリューション部部長は「実際に利用することで蓄積されたノウハウを積極的にユーザーに伝えていきたい」として、Webセミナーの開催やHPコンテンツの拡充を行い、情報発信の頻度を高めていく考えだ。
今後の目標について古川取締役は「MylogStarシリーズにおけるクラウド版の売り上げ比率を3年以内に50%程度まで引き上げる」と話す。ログ管理ツールの導入にハードルの高さを感じていたSMBにも、操作ログ管理を活用した情報漏えい対策や業務効率化が比較的容易に実現できることをアピールし、顧客基盤の拡大を図る。(岩田晃久)