仮想データ統合ソフト「DYNATREK」を開発するダイナトレックは、地域住民の健康データを仮想的に統合・分析して、健康づくりや病気を予防する分野への参入を進めている。人口約2万人の石川県羽咋(はくい)市および金沢大学と協業し、地域住民のデータ研究基盤を構築。個人を特定できる情報を暗号化するなどして個人情報を保護するとともに、分散している医療や介護関連の情報を仮想的に統合することで、データ分析を横断的に行えるようにした。羽咋市での研究成果をもとにして、将来的に他の地域への横展開も視野に入れる。
(安藤章司)
DYNATREKは、バラバラに散らばっているデータベースから仮想的にデータを統合して、検索や分析ができるツール。このツールを使えば、自治体や健康保険組合、病院、健診センター、介護施設などに分散して保管されている個人の健康データを仮想データベースに集約して、「個人を起点とした分析が可能になる」と、佐伯卓也取締役は話す。現状は、自治体や病院などの組織単位でデータを管理しているため、個人と紐づけた統合的なデータ分析が難しく、結果として地域全体での健康づくりや病気を予防する施策も打ち出しにくかった。
佐伯卓也 取締役
今年9月に発表した羽咋市、金沢大学との研究プロジェクトでは、住民基本台帳や介護・医療保険、国民健康保険などを統合した仮想データベースを構築し、住民個々人の食生活や健康診断の受診状況と、生活習慣病の発症の相関性を調べる。健康データは個人の機微情報であるため、研究や実用化に当たっては、特定の個人につながる情報はすべて暗号化して保護しつつ、個人を起点とした健康状況の変化を捉えられるようにする。
佐伯慎也 取締役
例えば、現役で働いているときの組合保険の加入期間、退職して国民健康保険に加入したとき、その後の介護保険が適用される年齢になったときなど、「ライフステージを時系列で追っていくことで、より深い洞察が得られるようになる」(佐伯慎也取締役)ことを期待している。
DYNATREKは、ここ10年弱の間で地方銀行の約4割で活用されるようになった仮想データ統合ツールで、OEMや姉妹製品を含めて400社余りのユーザー企業が活用している。
地銀での活用を例に挙げると、融資や預金、投資信託、保険などの金融商品ごとにデータが分散し、顧客を起点として俯瞰するようなデータ分析が難しいケースが多く見られた。
そこでDYNATREKによって仮想データベースを構築し、顧客番号で紐づけして分析。「地域の成長企業の経営者層、資産形成層、富裕層などに顧客起点で最適な金融商品を提案するのを支援できる」(佐伯慎也取締役)ことが、地銀ユーザーから高く評価された。また、地銀の支店でもデータ分析が行えるよう、支店ごとに必要なデータを切り分けられるようにしたことでデータ活用の幅を広げた。
顧客を軸に紐づけ分析する手法は、地域の住民を起点とした健康データの統合にも応用できることから、羽咋市での研究プロジェクトがスタート。広くデータを共有し、分析、活用するとともに、個人の特定につながらないよう厳しく制御している。佐伯卓也取締役は「データの共有と統制のバランスをうまくとることで、地域の健康分野に進出していきたい」と、将来的な横展開を視野に入れる。