ネットワールドは、米CrowdStrike(クラウドストライク)とディストリビューター契約を締結した。クラウドストライクのサイバーセキュリティ統合プラットフォーム「Falcon Platform」を販売する。国内の顧客層の拡大を狙うクラウドストライクとセキュリティ事業の強化を図るネットワールドの思惑が一致した。ネットワールドの森田晶一社長とクラウドストライクの日本法人代表の尾羽沢功・ジャパン・カントリー・マネージャーは「今回の協業は両社にとって千載一遇のチャンスだ」と口を揃える。今後は全国をカバーするネットワールドの販売網を通じて新規顧客の獲得を目指す。
(岩田晃久)
ネットワールドの森田晶一社長(左)と
クラウドストライクの尾羽沢功・ジャパン・カントリー・マネージャー
セキュリティ事業の柱となる製品
クラウドストライクの日本法人は2017年に設立、18年以降本格的にビジネスを開始した。マクニカをディストリビューターとして製品を拡販、エンドポイントセキュリティ強化を図るエンタープライズ向けを中心に導入してきた。
Falcon Platformはプラットフォーム上で複数の製品群を展開し、総合的なセキュリティ対策を提供する。エンドポイントセキュリティの群では、EDR(Endpoint Detection and Response)や次世代アンチウイルス(NGAV)のモジュール、クラウドセキュリティの群ではクラウドの可視化やCSPM(Cloud Security Posture Management)のモジュール、そのほかにもID保護や脅威インテリジェンスなどの群を設けており、現在は、22のモジュールを提供中だ。ベンダーによるMDR(Managed Detection and Response)サービスを用意している点も差別化ポイントだとしている。
ユーザーはエージェントをインストールし、必要なモジュールを選択するだけで容易にセキュリティ対策を強化できるとしている。
今回の協業についてクラウドストライクの尾羽沢・カントリー・マネージャーは「これまでも高成長を遂げてきたが、サイバー攻撃が変化している中では市場へのアプローチを変えていくことが必要であり、一言で言えば次のステージに進まなければいけない時期となった。その中で、セキュリティの豊富な知見を持つネットワールドと協業することで、これまで以上に国内企業を支援できる。エンジニアはもちろんだが、森田社長をはじめとした役員の方々もセキュリティにものすごく詳しいので心強い」と述べた。
ネットワールドの森田社長は「当社は創業以来、10年ごとに強化するビジネス分野を作っており、30年まではセキュリティビジネスに注力している。特にエンドポイントセキュリティはホットなセグメントだと思っており、事業の柱となる商材を探していた。その中で、クラウドストライクは非常に魅力的だった」と説明。続けて、「製品の機能面に加えてメーカーとして優れた哲学を持っていることも重要だった。私は優れた哲学を持つメーカーと仕事をしたいという思いがある。実際、(クラウドストライクは)第三者調査機関の評価が高く、お客様からも大きな支持を得ている。これは哲学が優れているからだ」と強調した。
ブランド認知度の向上を図る
クラウドストライクの顧客層はエンタープライズが中心となっているが、ネットワールドの販売網を生かし顧客層の拡大を図る。森田社長は「大手企業に加えて、中堅中小企業や地方企業での導入を促進する。これらの企業には潜在的チャンスがあると見込んでいる」とし、「そのためにもお客様が買いやすく、リセラーが売りやすい環境をつくる。例えば、リセラーへの仕切り価格や年間サポート価格などをすぐに提示できるようにするといったディストリビューターならではの価値を提供していきたい。セキュリティは専門家が強みを発揮してきた市場だが(売りやすく買いやすい環境をつくることで)“民主化”を目指していく」と力を込める。
ブランド認知度を高めるため、両社によるマーケティング活動の強化も図るとした。「特に地方ではクラウドストライクという名前を知らないユーザーやパートナーがまだまだ多い。知っていてもEDRだけのベンダーとして認知されているケースもある」(尾羽沢・カントリー・マネージャー)ため、総合的にセキュリティ対策を提供できることを周知させていきたい考えだ。
世界初のサポートパートナー
ネットワールドはクラウドストライクのパートナーでは世界初となる「サポートパートナー」契約を結び、さまざまな技術支援や日本語サポートを提供するとしている。「ソフトウェアの場合、ディストリビューターがサポートを提供するケースは少ない」(森田社長)が、サポートまでを手掛けることで、顧客満足度とエンジニアの製品への理解力と技術力の向上を図るのが狙いだという。
Falcon Platformは7月に新たなモジュールとしてXDR(Extended Detection and Response)を追加した。「Zscaler」や「Okta」など豊富な製品との連携が可能であり、これらの製品を導入しているユーザーへのアプローチや製品を組み合わせた提案を進めていく。尾羽沢・カントリー・マネージャーは「ネットワールド、マクニカとタイアップする形でXDRのコンセプトを広めていきたい」と展望した。
今後はクラウドストライクからネットワールドのエンジニアに対する支援を強化するなどして、販売体制の構築を進める。尾羽沢・カントリー・マネージャーは「当社の製品は、『エンドポイントセキュリティを強化したい』『クラウドセキュリティ対策を実装したい』などお客様の要望をシングルエージェントで容易に実現できる強みがある。リセラーにとっても提案のしやすさなどメリットは大きいはずだ。ネットワールドと一緒にマーケットと販売チャネルを開拓していく」と抱負を述べた。森田社長は「セキュリティ業界全体で今後もマルチベンダーの競争共存が続く。そのため、リセラーにはマルチベンダーで製品を用意し、お客様の要望に沿った提案が求められる。既にリセラーにクラウドストライク製品を提案しており、いい反応も返ってきているので、クラウドストライクと共にセキュリティビジネスを成長させる」と語った。