新型コロナウイルスの感染拡大によって、日常生活や経済活動は大きな影響を受けている。売り上げを大きく落として店を閉めざるを得なくなった企業も少なくない。ウクライナ情勢による影響も加わり、まさに世界的な動乱の只中にある。そんな中でも、新たなビジネスチャンスを生かして成長曲線に戻ろうとする企業も出てきている。コロナショックを乗り越え、今行うべきこと、できること、それは、現状を認識して、成長するために必要な「方向転換」を行うことだ。生まれようとしている新たな機会を探し出し、新しいマーケットに合わせて戦略を少しスライドさせて変えていくことによって新たなビジネスチャンス、つまりブルーオーシャンを自ら創り出すのだ。
コロナショックを乗り越え、収益拡大へ
「方向転換」を行って成長軌道に乗せていくためにはどう進めていけばいいのだろうか。そのための七つのステップを紹介し、まずは最初の二つのステップを詳しく解説する。
コロナショックを乗り越える7ステップ(出典:ActionCOACH)
ステップ1「マインドセットの切り替え」
何かショッキングな出来事に遭遇したとき、時間の経過とともに人々の感情はさまざまな変化を示す。これを「感情曲線」という。
感情曲線(出典:ActionCOACH)
「ショック」から始まり、時間の経過とともに、その感情は「拒否・非難」から「怒り」「欲求不満」へと移っていき、「落ち込み」という感情の底値に行きつく。「方向転換」を図っていくためには、その事実を「受け入れ」、「問題解決」へとシフトしていく必要がある。自分は今どこにいるのか、をしっかりと認識し、現状の課題を明らかにしたうえで「問題解決」に向かっていく心構えを持つこと、これが「方向転換」に進む第1ステップである。
ステップ2「現状の確認と方向転換」
下図は企業が破綻してしまうまでの「終焉曲線」である。
企業の終焉曲線(出典:ActionCOACH)
全く新しい環境や、予測不能な環境にいると、自分自身や自分のビジネスを「制御できている」のか、今後は「制御できなく」なりそうなのか、を見極めるのに苦労する。このことに現実味を持って対応しないと、結果は「制御不能」から「事業破綻」、そして「事業清算」となってしまう。「問題を制御している」、遅くとも「制御不能」のフェーズのいずれかであるうちが、方向転換し「事業再生」に向かって移動するチャンスである。
方向転換というアクションを起こせば、その結果から「マーケットニーズをつかんでいた」か「マーケットニーズとのズレがあったか」が分かる。経営者は、素早く、手軽に、そして数多く方向転換をトライし、早く失敗することで成功へのプロセスを絞り込み明確にすることができる。
方向転換の成功事例
では、どのような方向転換ができるというのだろうか。いくつかの事例を紹介する。
事例1「新たな顧客層やニーズに対応」
家具ビジネスの事例。在宅勤務や学校のオンライン授業によって、自宅で過ごさなければならなかった人々が急増。ソファーや机の仕入れを増やし需要の変化に対応した結果、売上増の機会となった。
事例2「リソースを再配置」
鉄鋼建材ビジネスの事例。アメリカで建設が中断されていた時期、身体を鍛えることに熱中していた1人の若い社員が、なかなか手に入らないダンベルやバーベルを、いっそのこと自分たちで作ってしまえばいいと提案し、その新しいビジネスは急成長した。
事例3「考え方を変え、機会を創り出す」
あるピザレストランは、広告の内容と方法を変えて、お店が「ランチタイムにオープンしている」ことを近隣のお客様に伝えることで、ランチの売上を4倍に増やした。
今こそマーケティングに取り組むとき
何もしないまま過去の状況が戻ってくるのを待っていてはだめだ。チャンスを探し、労力をあまりかけずに売り出せるものを見つけること、生まれようとしている新たな機会があるはずである。マーケットの新たな機会に合わせて戦略を変えていくことが重要なのだ。コロナ禍が明けようとしている今こそ、マーケティングに取り組むべきときなのである。
■執筆者プロフィール

小竹敏(オタケ サトシ)
Green Sun Japan 執行役員 ITコーディネータ
1962年新潟県生まれ。85年に野村総合研究所(NRI)に入社。33年にわたり、同社のグローバル事業の発展に寄与。延べ15年の海外勤務を経験。2002年、ITコーディネータの資格を取得。06年、同社シンガポール現地法人の社長を9年間務める。19年、米国に本部を持ち全世界でフランチャイズ展開するActionCOACHビジネスコーチとして活動中。