カスタマーサクセスマネージャー(CSM)が日々どのような活動をしている職種なのか、イメージできる人は少ないかもしれない。前回に続き、日本IBMのCSMである澁谷慎太郎に話を聞くと、“Not tell us, show us(語るな、見せろ)”アプローチによって、CSMが顧客との共創に重要な役割を担っていることが分かる。
澁谷 慎太郎
シニア カスタマーサクセスマネージャー
IBM歴34年のベテラン。管理職身含めさまざまな職種を経験し、
今年5月からCSMのチームに参画。
技術的な面もさることながらこれまでの経験を活かした活動を
幅広い層のお客様に向け積極的に展開している。
CSMという組織の特徴
園田 CSMチームメンバーの相談に乗っているという話が前回ありました。前のチームと違って、「こういうところがCSMという組織の特徴だな」と思うところはありますか?
澁谷 「これ、共有するといいかな」ということをシェアするというのは、やはり特徴的なところかなと思います。しかもCSMチームのマネージャー(マネージャー)が「やってください」ということはほぼなく皆が自発的にやっている。それを通じて、各々がさらに専門性を高めていっているっていうところが、本当に好きなところです。
園田 なるほど、他の会社から転職してきたメンバーから、そういった「自発的にシェアする文化」は特徴的だという話は聞いたことがあるのですが、IBM社内から異動してきた場合も、これは感じるところなのですね。
澁谷 はい。頼り頼られというのが、広範な守備範囲を担うCSMロールにとっては最も必要なスキルとすら思います。
CSMの多様な活動範囲
園田 対お客様向けの活動や勉強会以外には、コミュニティー活動などもされているとのことですが、そこではどういったことをしているのですか?
澁谷 Raspberry Pi(超小型コンピュータ)をベースに、IBM Cloud経由でWatsonのAPIと連携して喋ったり手を振ったりする紙製のTJBotというロボットがあるんですね。これを教材に休日にワークショップをコミュニティーメンバーと実施しています。一時中断していたのですが、ちょうど再開に向けて動き出したところです。
園田 そうなのですね。基本的にボランタリーな活動だと思いますが、こういうコミュニティー活動がCSMの活動にも役立つこともあるのでしょうか。
澁谷 与えられているミッションそのものには直接的には貢献しないのですが、活動を通じて得られるものは非常に大きい。社外の方と一緒にお金に縛られない何かに向けて活動することは、会社の仕事では経験できない課題に直面したり、達成感を共有できたりと、いろいろな成長ポイントを感じています。TJBotの場合は、IBM Cloudの勉強を勝手にすることになりますし、プログラミングもしますので、自己鍛錬になります。
園田 なるほど。お客様に対して“Not tell us, show us.(語るな、見せろ)”ということが言われていますが、IBM Cloudやプログラミングは、お客様にお見せするデモの作成にも必要ですし、CSM活動にも活きそうですね。
顧客向けには、IBM社員のみならずパートナーも
IBMidがあれば検証・デモ環境“IBM Technology Zone”が使える
澁谷 はい。マネージャー陣もこの辺りは積極的にということで、とても良い環境だと思っています。お客様と何か新しいことをしようとする時の小ネタとしてももちろん使えます。IoTの基礎的な要素もありますし、入門者を増やすのにとても良いんです。メンバーには、学生向けに大学の授業の一つとして取り組んでいる人もいます。
園田 そういった社外向けの活動をすることで、CSMの広報にもなりますしね。
澁谷 はい。パートナー様をはじめとして、広く社内外にIBMのCSMの活動を知っていただき、お客様の成功に向けて共創させていただきたいと思っています。
園田 CSMは昨年立ち上がった比較的若い組織ですから、私自身はどう共創していくか、やりながら模索中という感じです。
澁谷 共創という言葉は便利に使われていて、本質の意味を隠すのですが、パートナー様とのビジネスという観点では、お互いを尊重しあって、お客様にさまざまなご提案をしてゆきましょう、といったところでしょうか。個々のケースで手法も内容も違うと思っています。
園田 :なるほど、そういったところにIBMは前向きだよということですね。
■執筆者プロフィール
園田緋侑子(ソノダ ヒユコ)
日本IBM テクノロジー事業本部カスマターサクセスマネージャー
2015年、日本IBMグループ会社に新卒で入社後、主にWatson製品(Watson Assistant/WEX/Watson Discovery)を使ったアプリの開発者や製品スペシャリストとして従事。EC業界の顧客を通じてアジャイルプロジェクトを経験し、提案の面白さに目覚め21年7月、日本IBMに出向。現在は保険業界のお客様のCSMとして活動。