日鉄ソリューションズ(NSSOL)の注力領域における本年度(2023年3月期)売上高が予想を上回る勢いで推移している。NSSOLが強みとする製造業や大規模プラットフォーム(PF)サービス事業者などに向けたビジネスが力強く伸びており、上期(22年4~9月)の注力領域の売上高は前年同期比12.5%増の585億円に到達。森田宏之社長は「通期でも同様の勢いで伸びる見込み」と手応えを感じている。
森田宏之 社長
注力領域は製造業やPFサービス事業者、デジタルワークプレイス、ITアウトソーシングの主要4分野で、25年度までの5カ年中期事業方針で定めたものだ。製造業とPFサービス事業者向けで同領域全体の約8割の売り上げを占める。
製造業向けではデータ活用基盤の構築や、データを起点とした業務改善、効率化するビジネスが好調に推移。親会社の日本製鉄向けのデータ活用基盤の構築実績を生かし、製造業のデジタル化ソリューション「PLANETARY(プラネタリー)」として体系化している。PFサービス事業者向けでは、キャッシュレス決済やSaaSアプリなどの企画・設計の段階から参画し、ともに事業を立ち上げる共創型のビジネスが大きく伸びている。
直近では22年11月に小野薬品工業と共同で統合データ活用基盤を構築したと発表している。小野薬品の研究開発や営業、生産に関わるデータを全社横断的に単一のプラットフォーム上で分析できる基盤とすることで効率化を促進。例えば、開発から納品までの時間を短縮することで投資回収までの速度を上げたり、市場の外部環境変化リスクを最小化するといった効果が期待できる。
組み立て系の製造業では、機械の耐久性や性能、使い勝手などの設計工程に課題が多く、ここでもデータを駆使して設計通りの製品ができるよう支援。大型の精密機械や検査装置になると数十年使うケースも多く、「長期にわたって顧客の要求を満たす性能や品質を維持するには、設計工程におけるデータ活用がかぎを握る」と森田社長は話す
また、コロナ禍期間に非接触・非対面を余儀なくされたこともあり、「生活様式の変化に伴ってオンラインサービスが大きく伸びた」(森田社長)ことが、オンラインサービスを手掛けるPFサービス事業者向けビジネスを後押しした。最新のデジタル技術を駆使した新規事業の立ち上げは“DXの難所”の一つであり、「顧客とともに難所を乗り越えて、事業を軌道に乗せる」(森田社長)スタイルが顧客から支持を得た。
注力領域の本年度の売上高は前年度比10.5%増の1265億円を見込む。昨年度の同領域は前年度比18.0%増と大きく伸びていることから、見通しが上振れる可能性も十分にあるとしている。中期事業方針の最終年度の25年度には、データ活用ソリューションを深掘りすることで、注力領域の売上高を1600億円に増やす方針。
(安藤章司)