日鉄ソリューションズ(NSSOL)は、AIによる生産革新や独自のSIアセットの活用、共同利用型モデルを組み合わせ、価値ベースの事業形態への移行を加速させる。3カ年中期経営計画の初年度に当たる2025年度は売上高全体の35%程度を新しい事業モデルが占める見込みで、最終年度には75%へと割合を増やす計画だ。25年7月には中堅企業向けERP「GRANDIT」などのSIアセットを持つインフォコムをグループに迎え入れるなど、M&Aの実施で成長に弾みをつける。
(取材・文/安藤章司)
ゴールに向けて疾走する年
26年度は3カ年中期経営計画の2年目となる。どのような姿勢で臨むか。
キーワードで表せば「ゴールに向けて疾走する年」である。AI全盛の時代を踏まえて初年度である25年度は価値ベースのSIを基本とする収益モデルを明確にし、目標に向けて歩みを始めた年であったのに対して、26年度は目標に向けて一段とスピードを上げ、全力で疾走する年にしたい。
玉置和彦 社長
中計では連結売上高4500億円、営業利益600億円を目標に掲げており、25年3月期実績に比べて売上高で約1100億円、営業利益で200億円余り上乗せする計画だ。M&Aについても前中計では100億円規模の予算だったのに対し、今中計では総額1500億円規模の予算に増やしている。内部成長とM&Aによる外部成長の両輪で事業拡大を目指す。
「価値ベースのSI」とは具体的にどのようなものか。
端的に言えば、AI活用によるシステム開発の生産革新によって、従来の人月単価をベースとしたコスト積み上げ方式のSIはいよいよ通用しなくなる。システムを「つくる」部分の価値が相対的に小さくなっていき、システムによってユーザー企業のビジネスがどれだけ加速し、成功を収められるかに価値の軸足が移っていく。
コストベースではなく、価値ベースでユーザー企業と向き合うには、ユーザー企業が目指す目標やビジネスモデルを早い段階で共有してもらい、当社が成功へのシナリオやストーリーを複数用意する。その上でどれだけ現実味を持ってユーザー企業に提案できるかが問われている。
「TAM型」事業モデル拡大へ
価値ベースの事業形態へはどのように変えていくのか。
まずは、▽AIによる生産革新を実現する次世代SIへの転換▽SIの核となる当社独自アセットの積極活用▽業界横断で複数企業が共同利用するマルチプラットフォーム型ビジネス―の三つの事業モデルへ軸足を移す。当社では転換(トランスフォーメーション)の「T」、アセットの「A」、マルチプラットフォームの「M」の文字をとって「TAM(タム)型」の事業モデルと呼んでいる。
24年度のTAM型事業モデルの売上高全体に占める比率は5%程度だったが、25年度は売上高全体のうち35%程度をTAM型の事業モデルへ移行させ、中計最終年度には全体の75%を占めるまでに拡大する計画だ。25年度のTAM型ビジネスの構成比はT型で19%、A型で16%、M型はユーザー企業の業界全体に働きかけていくため商談の足が長く、初年度は1%程度の見込みだ。
M&Aを巡っては、25年7月に中堅SIerのインフォコムをグループに迎え入れた。
インフォコムは、中堅企業を中心に1500社余りの納入実績があるERP「GRANDIT」や、医療機関向けに特化した「CWS就業管理」などのアセットを有しており、TAM型モデルにおけるアセット活用ビジネスの拡大に弾みがつく。当社は札幌や仙台、名古屋、大阪、福岡などに地域子会社を置いており、地場のユーザー企業に向けて、GRANDITなどインフォコムの商材を販売していくことも検討している。
GRANDITはコンソーシアム形式で開発された経緯から、多くの同業SIerが取り扱っている。競合にならないか。
GRANDITに関してはユーザー企業の待ち行列ができているほど多くの注文をいただいており、供給が追いつかない状態だ。当社の地方のグループ拠点を含めた供給力が加わるほか、全国約70社のビジネスパートナー経由による間接販売チャネルもこれまでと変わらず重視して、旺盛な需要に応えていく。
M&Aで1000億円規模を創出
伊藤忠テクノソリューションズやSCSK、NTTデータグループが相次いで親会社の完全子会社となったが、どう見るか。
ITを単なる効率化のツールとして捉えるのではなく、グループ全体の本業と一体化させてDXに結びつける企業が増えていると見るべきではないか。有力SIerが資金力や幅広い顧客基盤を持つ親会社と一体となり、より大規模なビジネスを展開することが予想され、競争は一段と激しさを増す。
M&Aに1500億円の予算を組んで規模拡大を目指すのも、そうした競争環境の変化に対応するためか。
中計目標を達成し、さらにその先の30年に向けた展望である年商5000億円、営業利益率20%を達成するには、外部成長は欠かせないと見ている。インフォコムの年商は約300億円相当だが、当社グループとのクロスセルなどの相乗効果として100億円の売り上げ増を見込む。25年6月にはマイクロソフトのERP「Dynamics 365」の構築を強みとするインドネシアの中堅SIerのWCS ABYAKTA NAWASENA(WCSアビセナ)を当社グループに迎え入れた。30年にはM&A投資効果として国内外で1000億円規模の事業創出を視野に入れている。