エプソン販売は、10月1日付で社名を「エプソンジャパン」に変更した。1983年の会社設立以来、使い続けてきた社名を改称し、ソリューションビジネスを重視する姿勢をより明確に打ち出した。文教、自治体、医療、小売りの重点4業種を中心に、エプソン製品と同領域に強いビジネスパートナーのソフトウェアやサービスを組み合わせて、課題解決や価値創出の提案を積極的に行っていく。社名変更に込めた思いや経営戦略を栗林治夫社長に聞いた。
(取材・文/安藤章司)
新社名に込めた思いは何か。
43年前の会社設立当時は、エプソン製品をユーザーに届けることが第一の役割であったが、市場が成熟し、製品を届けるだけでは十分ではなくなった。困りごとの解決や、エプソン製品にプラスした当社ならではの価値を付加してほしいという要望が大きくなったことを受けて、近年ではソリューションビジネスに力を入れてきた。このタイミングで「エプソン」を引き継ぎ、「販売」に代えて日本市場における顧客接点を担当する「ジャパン」とした。海外ではエプソンアメリカやエプソンヨーロッパ、エプソンシンガポールなどエプソン+地域名となっているので、それに合わせた面もある。
エプソンジャパンが定義するソリューションビジネスとは何か。
当社のソリューションビジネスは、エプソン製品を軸にビジネスパートナーのソフトウェアやサービスを組み合わせ、課題解決や価値創出につなげる提案だ。SIerのように個別SIを行う形態ではないものの、当社の営業担当がユーザー企業の業務の流れを深く理解し、業務フローを効率化したり、省エネ、脱炭素に役立つ提案を行ったりする意味で、ソリューションビジネスだと定義している。当社の売上高は、7割を法人向けビジネスが占めており、個人向けでは学びや働き、暮らしをテーマに提案型のマーケティングを主軸としている。
業務全体を視野に入れた営業
法人向けではどのようなソリューションがあるのか。
例えば、PCメーカーであるエプソンダイレクトのPCやサーバーを販売するとき、どのような業務で使うのかを考える。その業務に役立つアプリケーションやサービスを持っているビジネスパートナーがいるとしたら、当社と共同でソリューション提案することはできないか。プリンターやプロジェクターを提案をする余地はあるかなど、業務全体を視野に入れた営業活動を重視している。
栗林治夫 代表取締役社長
省エネ、BCPを訴求ポイントに
ビジネスパートナーとの連携パターンにはどのようなものがあるか。
2029年3月期までの3カ年中期経営計画では、文教、自治体、医療、小売りの4業種を重点領域に位置付けており、それぞれの分野で有力なソリューションを持っているビジネスパートナーと組んでいる。
一例を挙げると、文教では学習塾向けICTコンテンツ開発のスタディラボと連携して家庭学習の支援システムを開発した。学習塾の復習テストの用紙を家庭用プリンターに直接配信・印刷し、答案用紙をスキャナーで読み取って学習塾に送り返すことで、従来の郵送に比べて即時性が大幅に改善した。
ほかにも全国各地で文科省のGIGAスクール構想を支える地場ベンダーと連携して、学校向け複合機の定額利用サービスであるエプソンのスマートチャージ「アカデミックプラン」を提案するケースも増えている。アカデミックプランは、GIGAスクールの主な対象である全国の公立小・中学校向けに月額定額でカラー印刷ができるサービスで、足元の導入率が35%近くに達している当社の売れ筋商材の一つだ。
自治体や医療、小売りはどうか。
自治体と医療の業種ユーザー向けの訴求ポイントは、省エネと事業継続計画(BCP)だ。当社の複合機はインクジェット方式を採用しており、他社の一般的なレーザー方式に比べて消費電力をおよそ8割削減できる。複数台のレーザー方式のプリンターを当社インクジェットプリンターに集約すれば節電効果はさらに高まり、災害時の電力供給が不安定なときでも運用しやすくなる。こうした点を評価してもらい、災害対策を重視する自治体や病院へのインクジェット複合機の納入数は順調に伸びている。
小売店向けでは、レジ横に置いてレシートを印刷するレシートプリンターの納入数は多いが、バックヤードで使う複合機の提案がまだ十分ではない。例えば当社製品の出張保守を担ってもらっているビジネスパートナーと協力して、店舗のスクラップ&ビルドの際にプリンター関連の機材を新店舗に移設するワンストップサービスを検討している。将来的にはプリンター以外の機器の移設もトータルでサポートできないかと保守パートナーとの新しい連携方法を模索している。
業績目標は。
中期計画は、ビジネスパートナーとともに顧客基盤を強化し、次の成長につなげることを大きな目標としている。ソリューション重視の経営方針を徹底し、期間中の3年間で3%伸ばし、29年3月期の単体売上高は1730億円を見込んでいる。次期計画ではフィジカルAIの技術が一段と進展する見通しである点を踏まえ、例えば当社の産業用ロボットと組み合わせた新規ビジネスを伸ばすなどして成長を加速させる。