組み込みソフトウェア技術者試験の「ETEC」、Android技術者試験認定制度の「ACE」など、さまざまな認定試験の事務局を務めるサートプロの近森満は、IT人材の育成に焦点を当てたビジネスを手がける。近森は、日本のIT産業の行く末を憂えてきた。90年代前半、バブル経済が崩壊したあたりから、日本のものづくり、とりわけIT分野の独創性の乏しさが目立つようになった。「このままでは、日本はダメになる」と危機感を抱いて、人材育成の道へ進んだ。
今から20年ほど前、当時通っていた専門校のバンタンデザイン研究所で、ウォークマンやハンディカムを世に送り出したメーカーのキーマンによる講義を受けた。「世界に誇るものづくりをこの目で見た思いがした」。強烈な刺激だった。だが、刺激は長くは続かなかった。「80年代には世界中で輝いていた日本の電機メーカーも、海外勢に押され気味になって久しい」と、危機感を抱き続ける。
このことが最初のきっかけとなり、今、近森が経営するサートプロでは、組み込みソフトやスマートデバイス関連の技術者認定制度の普及促進、IT教育のコンサルティング、教材開発などに取り組んでいる。組込みシステム技術協会(JASA)やAndroid開発支援などを手がけるOESFなどの業界団体とも密接な関係にある。
「世界で再び輝くようになるには、一にも二にも、人材の育成に尽きる」との考えに揺るぎはない。例えば、技術者試験認定制度は、社会や企業に埋もれている技術者の能力を客観的に評価し、より一層の努力を促したり、新しい才覚を見出すきっかけとなる。「日本に眠っている潜在能力を最大限引き出せば、再び輝きを取り戻せる」と、全力で臨む。(文中敬称略)
プロフィール
近森 満
(ちかもり みつる)1964年、埼玉県生まれ。83年、東邦電子(現沖電気コミュニケーションシステムズ)入社。92年、東邦電子に勤めながら専門校のバンタンデザイン研究所を卒業。97年、ニューホライズン・ジャパン入社。00年、ナショナル・コンピュータ・システムズ・ジャパン。03年、UML教育研究所。05年、Linux技術者認定機関のLPI-Japanに所属。06年、サートプロを起業し、CEOに就任。