約1000人の従業員を抱えるEMCジャパンの社内で、澤田昌之を知らない人はいない。会社の全般を俯瞰して、売上動向を可視化・予測し、経営陣にレポートする澤田は、社内の有名人である。また、営業の“相談役”も担っている。澤田のブラックベリーには、1日に10回ほども営業部隊から電話がかかってきて、「お客様からこんな要望を受けたが、うちのどこの部署が担当か」とヘルプを求められる。そのとき、澤田は、頭に焼きつけたEMCジャパンの組織図を思い起こして、瞬時に「この部署に聞いてみて」と的確にアドバイスする。このように、会社組織の細部に精通する知識を生かして、後方で営業活動を支えている。
澤田は、大学を卒業して、2年間、エンジニアの仕事に就いた後、大学院に進学した。昔から好きな映画の研究をしたいと考えて、戦後イタリアの監督、ピエル・パオロ・パゾリーニの作品にのめり込んだ。しかし、「研究はおもしろいけれども、これで大丈夫なのか」と、将来への不安が募った。そして、安定している職場を求めて、大学から離れることを決心した。アルバイトでイントラネットの構築に携わり、その仕事ぶりが高く評価されたEMCジャパンへの入社を決めた。最初の3年間は、営業の提案先となる企業の事業内容や財務状況を調べてセールス支援の資料を作成する仕事だった。ひたすら、営業現場との信頼関係を築くことに力を入れた。だからこそ、今も相談役として彼らに頼りにされている。
ハード中心だったEMCジャパンは、現在、ソフト事業を強化しようとしている。部門をまたいで活動している澤田は、裏方としてその方向転換をサポートする。「一歩引いて、全体をみる」。映画研究で学んだ澤田の仕事の技だ。(文中敬称略)
プロフィール
澤田 昌之
澤田 昌之(さわだ まさゆき)
1978年生まれ、奈良県出身。大学を卒業後、銀行系システム会社に入社。SEとしてシステム開発に携わり、2年間勤めた後に退職。大学院に入学し、イタリア映画の研究をする。07年、大学院を修了後、アルバイトがきっかけで常駐していたEMCジャパンに入社。セールスサポートやセールスプログラムの推進を手がけた後、13年9月、ビジネス・オペレーション部のマネージャーに就任。