門河善也は大学を出てから約6年間、組み込みソフトの開発に従事してきた。前半3年は、電子機器メーカーなどからの引き合いが強く、意欲的に仕事に取り組むことができた。しかし、後半3年はiPhoneなど海外メーカーのスマートデバイスが躍進したことによって、日本の組み込みソフト需要はしぼんでしまった。「ある日、突然、顧客や市場から必要とされなくなる怖さを思い知った」という。
データセンター(DC)事業者のデータホテルに転職してからは、IaaS/PaaSといったクラウド基盤系の研究開発を手がけているが、「組み込みソフトとは別世界」で、最初は戸惑いを覚えた。組み込みソフトは日本のお家芸だったこともあって、技術習得はほとんど日本語の資料を参考にするか、先輩からの伝授でまかなうことができた。ところが、「クラウドの先進的な文献はほぼ100%英語で、日本が技術的に進んでいる点が今はまだ見出せていない」。
門河は中学生までオランダで過ごした。今でも親しくしているオランダの友人は「すべての国が米国のようになれるわけではないが、何か強みはほしいね」と話しているという。オランダは、情報セキュリティに強く、ドイツは組み込みソフト技術が盛んだ。「じゃあ、日本の強みは何か」と考えたときに思い浮かんだ答えが、「サービスレベルの高さ」だった。これがかたちを変えて日本が誇る品質のよさにつながっている。
かつての日本の組み込みソフトのように、ITの世界は、突然、環境が変化する。だからこそ、「必ず一つ以上、世界的にみて突出して秀でている強みをもつ」ことが求められる。門河は「サービスレベルの高さ」を追求し、勝ち残る。(文中敬称略)
プロフィール
門河 善也
門河 善也(かどかわ よしなり)
1984年、大阪府生まれ。中学校までオランダで過ごし、高校から日本の学校に通った。東京の大学を卒業後、ソフト開発会社で約6年間、組み込みソフトの開発に従事。2013年9月にデータホテルに入社。IaaS/PaaS系のクラウド基盤の研究開発に携わっている。