フランス・リヨン再開発地域のスマートコミュニティ実証事業の声がかかったとき、佐藤範宏は「やった!」と心から喜んだ。すぐに手を挙げて開発に参加してから今年で3年目。この事業の中核システムとなる「コミュニティマネジメントシステム(CMS)」の実証運用が本格化するフェーズまでこぎ着けた。
佐藤は、国内通信キャリア向けメールサーバーの構築や、社内の販売管理システムのつくり替え、電力会社の入退室セキュリティシステムの開発など、SIerに勤めるSEとしての仕事を着実にこなしてきた。実績は十分。そう考えた佐藤は、ステップアップの機会を模索していた。そんななか、社内の開発者コミュニティのなかで電力消費を可視化するスマートメーターの研究課題を見つけ、「少しでいいので、研究に関わらせてもらえないか」と首を突っ込む。向こうも人手が足りず、佐藤もたまたまプロジェクトが終わったタイミングだったので、この研究に関わることができた。これがリヨンでの実証実験への参加の声がかかるきっかけとなった。
社会インフラ事業に注力する東芝ソリューションにとって、スマートコミュニティは戦略事業の一つ。それだけに佐藤にとって「とてもやりがいがある仕事」である。とりわけCMSは、電気や水道、ガスといったエネルギー消費情報を集約し、分析、可視化するスマートコミュニティシステムのエンジンに相当する中核技術なので、難度も高い。「家庭やビル、電気自動車(EV)などさまざまな単位やフォーマットの情報をCMSで統合的に分析・可視化する技術開発は苦難の連続」だが、世界最先端のスマートコミュニティの研究開発のチャンスを掴んだ佐藤の意気込みは強い。(文中敬称略)
プロフィール
佐藤 範宏
佐藤 範宏(さとう のりひろ)
1979年、埼玉県生まれ。2002年、東洋大学理工学部卒業。同年、東芝ITソリューション(現東芝ソリューション)入社。12年から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「フランス・リヨン再開発地域におけるスマートコミュニティ実証事業」に参画。