CO2 off
「グリーンIT」に貢献も
サーバー
新チップで電力「減る」「見える」
サーバー統合や既存のIT機器を有効活用することによるコスト削減の動きは、ユーザー企業が新規にパソコンやサーバーの購入を見送ることにつながり、コンピュータメーカーにとっては“逆風”になりかねない。この悪条件下で、コンピュータメーカーは、消費電力削減と環境対策(グリーンIT)のセット提案によって窮状を乗り切ろうとしている。
日本IBMや日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、富士通、デルなどが最近発売したサーバーは、基本的に従来に比べて消費電力が削減できる最新プロセッサを搭載している。まずはこれを提案材料として使う。今春発売されたインテルの最新Xeonプロセッサは、消費電力が従来プロセッサに比べ約40%カットできる。サーバーメーカーは、消費電力の新旧対比表を作成したり、「環境対策」であることを共通して訴え始めている。散在する複数サーバーを統合する際に高パフォーマンス・サーバーが必要になるが、同時にコストと環境に配慮できることを示し、リプレース需要を生み出そうというものだ。
一方、パソコンはどうか。サーバー同様に最新プロセッサ導入による消費電力削減を訴えるが、地道な努力も続けている。
NECは、コスト削減やグリーンITが叫ばれる以前から、環境対策と消費電力削減に着目していた。パソコン内に「エコボタン」というモードを備え、押すだけで「省エネモード」に切り替えられる。
環境対策はすべてのユーザー企業が意識している。ただ、直接的にコスト削減が見えづらく、パートナーの売り込みにつながりにくい。「電力削減による電気料金節約効果をはっきりと示すことがポイント」と、NECはユーザー企業への提案時には、「パソコン台数○台の場合、年間電力量○ワット、年間○万円のコスト削減」と明記することを徹底している。
50% off
DC事業はコスト提案に敏感
クラウド
「Google Apps」、使ってみては
不況の荒波でユーザー企業の多くがコスト削減に目を向ける。こうしたなか、クラウド型オフィスソフトウェア「Google Apps」は、ライセンスの安さで目立っている。1アカウントあたりのメール保存容量25GBを誇る「Gmail」、ワープロや表計算、プレゼンテーションなどを含む「Googleドキュメント」、スケジュール管理に役立つ「Googleカレンダー」などを含めたライセンス価格は、100アカウント以上で1アカウントあたり年間約6000円に抑える。
単純な比較は難しいが、マイクロソフトの「Office Enterprise 2007」と比較してみよう。ソフトバンクBBの子会社であるライセンスオンライン社のオンライン見積もりサービスを使って100アカウントを計算すると、約600万円と弾き出される。WordやExcel、PowerPoint、Outlookなどを含めたもので、仮に5年間使えば1アカウントあたり年間約1万2000円。「Google Apps」に比べ約2倍の価格水準だ。
クラウド型の「Google Apps」と、クライアント/サーバー型(C/S型)の「Office Enterprise 2007」とではデリバリーの方式が異なるうえ、「WordやExcelがないと仕事にならない」というユーザーは多い。価格差はそのままバリュー(価値)にならない。ただ、WordやExcelにかかわらず自前でサーバーを保有したくないユーザー企業に対して「Google Apps」はコスト削減ツールとして役立つ。
また、SIerが展開するサービスでもクラウド環境を活用してコスト削減を提案する動きが急浮上している。自前でクラウド型のデータセンター(DC)「absonne(アブソンヌ)」を構築した新日鉄ソリューションズ(NSSOL)は、ユーザー企業のシステム運用費などを5年間で従来比2割程度の運用コスト削減を目指す提案を強化する。
同社は、ソフト開発会社ワイズマンの介護・福祉向け業務ソフトや、ガス機器や情報システム構築の木産業のLPガス業向けのASP・SaaS型サービスを「absonne」で受注。ハードウェアの購入費や管理コストの増大に悩むユーザー企業の心を掴んだ。
業務ソフトベンダー側では、サーバーなどのハードウェアを自ら購入する負担が減る。一方、NSSOLはより多くのユーザーを取り込むことによって「absonne」の稼働率を高められる。DCの利用量が増えればハードウェアの一括購入などの規模のメリットが増し、コスト削減が進展。より一層価格競争力を強めることができるわけだ。
とにかく
安価なSaaS型も検討材料
セキュリティ
不況下だから施すべき
社会環境が不安定になると、インターネットがらみの犯罪が増えるともいわれる。事実、最近はWebサイトを攻撃する新しい脅威が次々と世間を騒がせている。また、企業の機密情報などが狙われるようになり、セキュリティへの投資はますます重要になってきた。セキュリティ対策を怠ったために機密情報漏えい事件が発生した場合、多額の事後処理のための出費を余儀なくされる。この不況で財務状況が悪化している企業であれば、事業継続が危うくなる恐れもある。
セキュリティ製品の導入は、万が一のための「保険」となるコストといわれている。国内企業のIT投資の抑制が始まった昨秋頃から、この「コスト」のハードルを下げるため、セキュリティベンダーはUTM(統合脅威管理)アプライアンスやSaaS型サービスなど、ユーザー企業で導入・運用コスト、運用管理の低減が実現できる商材を積極的に提供し始めている。
メールセキュリティに関していえば、セキュリティ対策は環境対策にも通じるとの調査結果がある。マカフィーが発表した「スパムメールと二酸化炭素排出量に関する研究レポート」がそれだ。レポートでは、気候変動を研究しているICFとスパム専門家が、スパムの送信、処理、フィルタリングに使われる世界の年間エネルギー消費量は33テラワット/時になると算出した。これは240万世帯が消費する1時間当たりの電力、310万台の乗用車が75億リットルのガソリンを消費する際の温室効果ガス排出量に相当するという。最新のスパムフィルタリングテクノロジによって、こうしたコスト削減や二酸化炭素排出量を減らすことが可能になるという興味深い結果が出ている。
一方、内部統制強化やコンプライアンス(法令遵守)などに対応するため、企業が「施すべきもの」として、セキュリティ投資のプライオリティ(優先順位)は高まっていると、セキュリティベンダーは口を揃える。
調査会社IDC Japanは、2009年の「10大予測」のなかで、情報漏えいや文書改ざんなど、内部犯行の脅威に対するソリューションに注意が向く年になると予測する。コスト削減策が「守り」のIT投資とすれば、セキュリティ投資も「守り」の一つとなる。
Epoch
マイクロソフト
「Save Money.」を旗印に進撃
ソフトウェアの巨人マイクロソフトは、景気後退の影響を受けるなかで例年にないPR施策に打って出ている。
「Save Money.」──。このキーワードを旗印に、コスト削減と生産性向上の両面を実現するためのソリューションやシナリオ6種類を用意し、大々的な広告展開に踏み切っている。ユニークなのは、マイクロソフト単独ではなく64社のITベンダーを募って共同展開していることだ。企業の経営者やIT管理者向けに6月30日まで約4か月にわたる長期PR施策で、「当社でも広告費用削減が著しい」(マイクロソフト社員)なか、「このPR施策にはかなりの広告費用を投じている」(同)という。マイクロソフトですら、コスト削減を重要なキーワードとして掲げ、この厳しい時期を乗り切ろうとしている。