ディストリビュータ編 SMB市場は伸びる可能性あり
業績好調の状況も
全国に販売代理店網を構築する総合ディストリビュータは、ネットワーク関連事業がSMB(中堅・中小企業)市場活性化のトリガーになるとの見解を示している。実際、ネットワーク機器の販売が伸びている。これには、販社に対する支援強化が大きく貢献している。
ダイワボウ情報システムは、シスコ製ネットワーク機器の販売が08年度(09年3月期)に前年度比10%以上増加したことを明らかにした。伸びた要因は、全国90か所程度の拠点を通じて販社への支援を進めたほか、販売代理店に対する教育を徹底的に行ってきたことにある。ウェブEDIシステム「iDATEN(韋駄天)」を通じてトレーニングやセミナーを開催したほか、ハンズオントレーングや技術検証する場の提供などの支援を実施。「地道な取り組み」(渡邊賢・テクニカル推進本部テクニカル推進部プロダクトエンジニアグループマネージャー)ではあるものの、こうした支援により、販社が獲得した1システムあたりの案件額がアップするなど、効果が現れているようだ。スイッチやルータとしてシスコ製品をメインに据える販社も増えてきているという。
また、シスコ製品に特化した総合カタログを自社で作成したほか、設置するためのマニュアルを製品に同梱することで簡単にセットアップできる環境を整え、「分かりやすさを追求した」(渡邊マネージャー)という。こうした取り組みで、今年度も前年度比10%増を見込んでおり、好調を維持していく構えだ。
丸紅インフォテックは、日本ヒューレット・パッカード(HP)製ネットワーク機器「ProCurve Networking」の販売を08年4月から開始し、「1000」「2000」番台のシリーズなどL2スイッチの販売ボリュームが大きい。販路は、丸紅情報システム、住商情報システム、菱洋エレクトロニクスなどで構成している。
需要に大きな変化はないが、景気低迷の影響で案件数が落ちており、今年4~6月の売上高が前年同期比30%減となっている。しかし、取扱い開始から1年強と期間が短いことから、「これから伸びる商材」(MD・販売推進本部MD1部ハードウェア1課の八尾嘉昭氏)とみて、拡販策を講じる。
売り方についてはHP製サーバーも扱っているため、「サーバーを売り込む際にオプションとして提案する」(八尾氏)という。今後は、サーバーと組み合わせたインフラ提案の強化や、HPとの連携で乗り換えキャンペーンに取り組むなど、「ソリューション面や価格面でトータル的に提案できる環境を整える」(杉浦治・MD・販売推進本部MD1部部長補佐兼ハードウェア1課長)としている。
通常、法人向けIT機器は秋から年末にかけて入札が集中し、翌年の1~3月に販売がピークを迎える。そのため、「お盆明け(8月中旬)の販売活動を本格的に強化し、できるだけ多くの案件獲得を目指していく」(杉浦部長補佐兼ハードウェア1課長)という考えを示している。
ITウォッチャーの目SMB市場の購買行動は?「社長が40代の企業は積極的」 調査会社のIDC Japanは、国内SMBのネットワーク関連機器に関する購買行動の調査を実施した。調査対象のネットワーク商材は、固定WAN回線をはじめ、携帯データ回線やデータセンターサービス、セキュリティサービス、ネット運用・保守サービス、IP電話機器の5分野。
調査結果から、「ICT投資積極型」「ICT投資保守型」「社長ICT活用先行型」「ICT投資後進型」の4分類が導き出されている。「積極型」を社長の年齢別にみると40歳台が43.2%となっている。ICT投資の面では社長の年齢に相関関係があるとIDC Japanはみている。
また、WAN回線導入した後の通信事業者に対する要望に関しては、「新商品/技術情報の案内がほしい」という答えが社員数500~999人の企業で42.0%と高い比率を占めている。社員数30~99人では14.1%だった。一方で、「ときどき訪問して御用聞きをしてほしい」と回答した企業をみると、500~999人が18.2%であるのに対し、30~99人が28.2%と小規模であるほど高い。
こうした結果から、IDC Japanでは「SMB市場では、市場をけん引するICT投資積極層とのコミュニケーションや社長のICT投資への意向を見極めることが重要。また、小規模企業に対してはユーザー企業の目線に立った営業活動が必要」(小野陽子・シニアアナリスト)としている。SMB市場では、ネットワーク関連案件で切り崩せる可能性がまだまだあるということだ。