弥生は、Googleのクラウド・サービス基盤「Google Apps」とマイクロソフトの同基盤「Windows Azure」上で同社ソフトが動くサービスの開発を進めており、同年末ごろにβ版の提供を開始する見通しだ。同社はマイクロソフトの「ソフトウェア+サービス」を将来像として描いている。岡本浩一郎社長は、「給与明細書のフォームにオーバー印刷するには細かい制御が必要。そうするとローカルなプリントエンジンと組み合わせて利用することになる」と説明する。
応研は「特殊会計」の公益法人や福祉法人向けで、2010年初頭にクラウド・サービスを開始することを明らかにした。オービックビジネスコンサルタント(OBC)は、2010年を「クラウド元年」と位置づけ、09年に発表した「奉行iシリーズ」などでクラウド・ビジネスを拡大する計画。そのほか、クラウド・サービスの国内投入開始を公表時期より遅らせたSAPジャパンは、中堅・中小企業向け「SAP Business All−in−One」のクラウドサービスを、電通国際情報サービス(ISID)経由で2010年初頭に販売開始する。
中堅企業向け基幹システム領域では、景気低迷の影響で一時沈静化していた内部統制強化の動きが高まり、企業内に構築する「プライベート・クラウドのインフラ導入が重要」(インフォベックの小林晃社長)となる。業務ソフト市場の拡大を占ううえでのポイントだ。ビジネスモデルについては、「保守料という概念がなくなる」(同)ため、安定的なストック・ビジネスを構築できると、自社の収益モデルへの影響を見定めている。
「つくらないシステム開発」を掲げるNTTデータシステムズは、NTTデータグループとの連携を強化する。荒田和之社長は、「トータルソリューションを拡大し、グループ全体のなかで重要な役割を果たす」と語る。同社が資本参加するNTTデータ ビズインテグラルは、クラウド/SaaSに対応したSOA・BPMを基盤とするビジネスプラットフォームを提供している。SOA型で構築したアプリケーションをBPM基盤上で連携させることができ、既存システムとの連携も容易だ。関連するアプリケーションとしてはアイテックスやウイングアークテクノロジーズが同基盤にOEM供給しているが、今後も関連製品が拡充される。とはいえ、そんな期待と裏腹に、NTTデータシステムズが提供する「Biz∫SCAW」のSaaS対応はいまだ白紙であり、パートナーを経由したビジネスモデルの再構築とともに課題となっているようだ。
一方、グリーンITという観点からクラウドを見据える動きもある。大塚商会子会社のOSKは、使用エネルギーを集計するASP型の「エナジーカルク」を展開し、J−SaaSにも参加している。企業単位でエネルギー管理をしなければならない改正「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」や鳩山政権が掲げる温室効果ガス排出量25%削減の目標があるように、環境問題が高まりをみせている。同社では、計測器を開発・販売しているメーカーなどとの協業を進め、新たな分野を切り開く考えだ。
労基法改正などが“追い風” 2009年は、業務ソフト市場に吹くはずの内部統制強化や消費税改正などの“風”が吹かなかった。しかし、2010年4月施行の改正「労働基準法」や2010年度税制改正があり、これらに対してPCAと弥生は期待を寄せる。PCAの水谷社長は、「法令改正は非常に重要で、抜群に影響力がある」と、公益法人会計の新製品投入やバージョンアップを加速させる考え。弥生の岡本社長も「“追い風”だ」と表現する。
2010年度税制改正では、民主党が公約で掲げていた子ども手当の給付や高校の授業料無償化のため、従来の制度にメスが入った。15歳までの子どもがいる家庭を対象にする一般扶養控除の「年少部分」を廃止するほか、16歳~22歳の子どもらが対象の「特定扶養控除」のうち16~18歳の控除額を圧縮。扶養控除が見直され、給与計算の仕組みが変わることで、バージョンアップなどの需要創出が見込める。岡本社長は二つのポイントを挙げる。納税のあり方の変化と民主党による起業の促進だ。新しい事業主が増加すれば、見込み客の増加も期待できるわけだ。
制度改正など業務ソフト市場に明るい材料はあるが、2010年の景況感については慎重姿勢が目立つ。PCAは、「製造業など一部の業種では日が差してきたが、2010年10月頃から本格的に上向く」(水谷社長)との見方だ。ただ、09年中に種は蒔いていたようで、医療情報ビジネスに企業買収という形で本格参入したほか、「Windows 7」対応のロゴ認定を受けた「R7シリーズ」11製品を拡販しており、法令改正などの外部要因を“トリガー”として市場開拓する準備が整っているという。
一方の弥生は、09年前期に法令改正の好影響が出てくる可能性があると期待する。しかし、鳩山政権の方向性が定まっていないことによる不透明感も漂う。「国の予算が明確になっていないので、どの分野に日が当たるのかわからない。景気回復は遅くなるのでは」と、岡本社長の見立ては、期待と不安が相半ばする。弥生は、家電量販店での店頭巡回を強化しているほか、サポートサービスも充実させるなど、圧倒的なシェアを誇る店頭で他社を突き放し、中小企業市場での存在感をいままで以上に示す。
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