セキュリティベンダー
オンデマンド展開が加速
他のIT業界に比べセキュリティ関連では、ASPの提供形態で、早い段階でサービスビジネスを展開している。特に、中堅・中小企業向けで実績を上げている。セキュリティ大手3社のうち、マカフィーは通信事業者との協業でSaaS事業の強化を図る。シマンテックは拡張性の高いインフラ提供も含めたクラウド戦略を推進する。トレンドマイクロもクラウド関連でいち早くソリューションを提供開始しただけでなく、仮想化環境の独自保護製品を展開することを計画中だ。
マカフィーは1999年から、ASPサービスを中堅・中小企業向けに提供し、他社の追随を許していない。競合他社でも、ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)と組んでセキュリティ機能を提供する形態は主流になっている。
マカフィーでは、2010年に通信事業者との連携でSaaS戦略を強化。アンチウイルスやスパムメール、ファイアウォールなど一連のセキュリティ機能を組み込み提供。これらを一元管理する「ePolicy Orchestrator」を活用したソリューション展開を計画中という。加藤孝博・会長兼社長は「極端にいうと端末以外のすべてがクラウドで提供される時代が来る。通信事業者にソリューションを提供し、エンドユーザーのセキュリティを担保する戦略を強化する」と、先行きを見通す。
シマンテックでは、世界の売上高の15%をクラウドで獲得することを念頭に置いている。同社では、自社製品をすべてクラウド対応するとともに、サービス提供、クラウドに対応のインフラ提供などを進める。 クラウド・サービスとしては、2008年に買収したSaaS型セキュリティを提供するメッセージラボの「Symantec Hosted Services」など、世界展開中のサービスがこれに当たる。
トレンドマイクロでは、仮想化技術を活用したサーバ統合化など、システム全体を最適化する流れを受け、新商材の国内市場投入を計画中だ。「仮想化環境が広がれば、独自のセキュリティ対策が必須になる」(大三川彰彦・取締役日本地域担当)ことから、同社では、カナダのサードブリゲイドを買収し、仮想化環境を保護する製品群を拡充した。
プリンタメーカー
業界が「二極化」、MPSもカギに
プリンタ業界は、リーマン・ショック以降のコスト削減要求に最も影響を被った領域といっても過言でない。調査会社IDC Japanによると、09年第3四半期までは、レーザープリンタとデジタル複合機(MFP)ともに15%前後の出荷台数減となった。しかし、シングルファンクション機は病院や小売店など「特定用途」向けなどで台数を伸ばし、MFPも官公庁・自治体向けで大規模案件を獲得したとするプリンタメーカーが多く、2010年に向け悲観の色は、徐々に払われてきた感がある。
プリンタ業界を見渡すと、業態が「二極化」してきた。一方はリコーや富士ゼロックス、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)のコピーメーカーによる「サービス指向」。もう一方がシングル機中心の「分散プリント志向」だ。
サービス志向を強めるメーカーのうち富士ゼロックスは「物販からアウトソーシングへ移行する年」(山本忠人社長)と、物売り指向だった戦略を大胆に転換する考え。しかし、リコーやキヤノンMJがプリンタ周りだけでなくITインフラ全体のソリューションに手を染めるなか、「あくまでプリンタ周りを攻める」(同)と、競合2社と異なる戦略を打ち出す。これに対し、リコーの近藤史朗社長は「ITサービスと、MPS(マネージドプリントサービス=印刷コストを削減する業務向け印刷サービス)を融合させていく必要がある」と、プリンタ周りだけにこだわらず、ITインフラの全体最適へ向けたソリューション販売にシフトするとの方針を語る。
一方、シングル機中心のプリンタメーカーは、高価で高機能過ぎるMFPでなく、セキュリティや環境配慮機能などが備わるシングル機で分散印刷環境を構築するニーズのある中小規模の企業をターゲットに据える。
ブラザー販売の片山俊介社長は「当社のプリンタはSOHO向けを自認していたが、もう少し上の中堅・中小企業に通用するほど機能が高度化した」と、安さと高機能、省スペース性で一つ上のクラスへ領域を伸ばす。OKIデータは09年中、「5年間無償保証」が受け、大手ディストリビュータの2次店に市場を伸ばした。杉本晴重・社長兼CEOは「2次店チャネルへインセンティブを投下するなど、2次店の囲い込みを強化するほか、新製品の投入でMPSへも手を伸ばす」と、シングル機の販売台数を伸ばす一方で、アウトソーシング的な提供にも手を付ける年が10年だという。エプソン販売の平野精一社長は「現在の高機能化されたプリンタ機器でできる領域はまだある。顧客の声を聞き、現場の視点で安価に提供できるスタイルを確立する」と、新製品を投入したりせずに、現製品などで十分需要を掘り起こせると、2010年は販売・マーケティング体制の強化に力を入れる考えだ。

まとめ
メーカーと販社の間に温度差
2010年2月には、マイクロソフトがクラウド・サービス「Windows Azure」推進の具体策を発表し、実質的にローンチする。国内業務ソフトウェアの大多数がWindowsベースで開発されており、09年内に起きたクラウド・コンピューティングのムーブメントに動じず、ここまで自社開発ソフトのSaaS提供などを待っていたベンダーは少なくない。とくに、中堅・中小企業向けでは、Azureの動き次第で急速にクラウド・サービスが拡大することが予想される。
一方、先行する大手ITメーカーは「プライベート・クラウド」と「パブリック・クラウド」、既存システムを融合させるハイブリッドなシステム提案を具体化させ、これを2010年中に花を開かせようと懸命だ。これら戦略を聞く限り、まずは大手企業を対象にクラウドを手がけ、中小規模の企業向けは次のステージになると感じる。
大手ITメーカーの販社を中心にクラウドに対する慎重姿勢が目立ち、クラウドの再販にめどが立っていないためだ。こうした販社側の困惑やクラウドを理解しているユーザーがどの程度存在するのかの問題は依然として残る。ただ、2010年はIT業界にとって「パラダイムシフト」が起こる年であることは間違いない。さらに、クラウドの浸透により行き場を失うITベンダーの淘汰や、大手ベンダーが規模の優位を追求する上での合従連衡が進むだろう。