日本IBM系
JBCC-HD
クラウドへの傾注進む
日本IBMのトップソリューションプロバイダのJBCCホールディングス(JBCC-HD)は、ハード製品を含むシステム販売事業の今年度上期(09年4~9月期)売り上げが前年同期比28.6%減少。リーマン・ショックの影響は販売系SIerの“弱い部分”でより顕著に現れた。落ち込みをある程度予見していた販売系SIerは、すでにさまざまな手を打っている。その代表格がクラウド・コンピューティングに代表されるサービスビジネスの立ち上げだ。
JBCC-HDでは、個々の部門サーバーを客先に設置する従来型から仮想化によるサーバー統合へと進み、仮想化プラットフォームの上にクラウドシステムが構築される流れを想定。自らのハード販売やSIビジネスの方向性をクラウドを強く意識したものへと大きく変えた。具体的には、自社の基幹業務用にプライベート・クラウドを09年春から段階的に採用。09年11月には使用量に合わせてグループ事業会社に課金する機能を実装した。JBCC-HDグループで新規商材の開発を担当するJBアドバンスト・テクノロジーの山田隆司社長は、「顧客先へいつでも販売できる完成度に高まってきた」と、プライベート・クラウドの販売に強い意欲を示す。
この方式ならば、顧客の既存サーバーを統合するだけでなく、クラウド方式での使用に耐え得るネットワーク機器やストレージの販売が増加し、さらに新規サーバーの販売に結びつく余地も広がる。基幹業務をクラウドに集約することで、トータルでのIT運用コストを下げられるばかりでなく、顧客のグループ企業を再編する際のITシステムの機動的な変更や再配置、リソース分配がやりやすくなる。「グループ会社再編で競争力を高めようと考える顧客の経営者層にとても受けがいい」(JBCC-HDの石黒和義社長)と手応えを感じている。
JBCC-HDは上期、ハード販売を含むシステム事業の売り上げが3割近く落ち込んだのに比べ、サービス事業は前年同期比7.4%減と少ない。粗利ベースでみるとシステム事業が同33.3%減に対してサービス事業は3.4%減と、利益面での落ち込み幅の方がより小さい。ハードウェア事業とクラウドをはじめとするサービス事業をいかに融合させ、相乗効果を高めるかが、販売系SIerの勝負どころといえそうだ。
独立系
大塚商会
サービス&サポートに活路
大塚商会は、ハードの単価下落に伴いSI事業が厳しいなか、サービス&サポート(S&S)事業の拡大に活路を見出している。なかでも、サプライ用品などの販売サイト「たのめーる」を中心としたMRO(間接材)事業を核に利益を確保する方針だ。
2009年度(09年12月期)第3四半期(09年1~9月)までの連結決算は、前年同期比で減収減益だった。大塚裕司社長は、「第3四半期の時点で4~5年前(の数値)と同じような状況」と振り返る。ITシステムのリプレースに投資できないというユーザー企業が多かったほか、ハードの下落が顕著に現れたことで、サーバーやパソコンなどは台数と売上高ともに減少。結果、SI事業は売上高で前年比17.4%減の1709億7000万円と縮小した。一方、S&S事業は第3四半期までの売上高が1496億400万円(前年比0.9%増)。わずかだが増収を果たした。大塚社長は、「大幅な悪化を抑制する、業績を支えた事業だった」としている。
第4四半期は連結業績で微減にとどまる見通しだが、SI事業の厳しさは依然として変わっていないようだ。大塚社長は、「これまでも行ってきたが、“日銭”を積んでいく時代といえる」と噛み締める。そういった点では、2010年度もS&S事業がポイントになるという。なかでも、「コピー紙の出荷が2ケタ成長を遂げている。今後は、ソリューションベースの提案だけでなく、MROを手始めに案件を獲得するなどといった、これまでとは異なる受注の仕方も視野に入れなければならない」としている。
ITインフラの“主役格”だったサーバーの拡販を図る時代は過ぎ去ったといえそうだ。ただ、「サーバーの統合化や仮想化などは、まだまだ需要を掘り起こせる可能性がある。このように、サーバー販売では落とし所を考えてユーザー企業に提案していくことが重要」としている。
また、製品・サービスで2010年度の重点分野は回線やモバイル端末を組み合わせた提供という。「PBX(構内交換機)のIP化は大きなコスト削減が見込める。加えて、UC(ユニファイドコミュニケーション)関連のソリューションは業務効率化を図ることができる。コスト削減と業務効率化を案件獲得のカギを握るのではないか」とみている。
日立製作所系
ニッセイコム
SaaSに傾注、すでに実績も
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| 横山茂郎社長 |
中堅・中小企業をメインターゲットとしているニッセイコムでは、売上高の約40%をハードの販売事業が占める。同社はこれまで、資本関係にある日立製のサーバーなどにソフトウェアなどを組み合わせたアプライアンスを拡販することでハード事業を伸ばす戦略を立てて、推進してきた。
ところが09年、不況のあおりを受けてハード事業は5ポイント減少した。横山茂郎社長は、「ハードは完全にダメ。PCは、『Windows7』発売の効果がまったくない。ブレードは比較的好調だが、それ以外は確実にマイナス」と嘆く。ただ、ブレードサーバーは1台に複数のブレードを集約することで設置台数が減り、「結果的に売り上げが下がることは避けられない」ともみている。
ニッセイコムはハード販売の不調を補うため、自社データセンター(DC)を活用したASP事業やアウトソーシングサービスにも力を入れている。最近では、「顧客からクラウド・コンピューティングについて問い合わせてくるケースも多い」という。クラウド・コンピューティングといっても、すべてのアプリケーションが向いているわけではないと考え、使い分けを提案するコンサルティングができる人材の育成に力を入れる。
生産管理や販売管理など、企業の独自性が強く反映されるものには不向きな一方、給与や人事管理はルーチンな業務であり、SaaSによる業務の効率化が期待できる。「当社では現在DCを持つ財団法人に対してアプリケーションの提供も行なっている。公共的な団体と組んだほうがSaaSを展開しやすい。特長のあるパッケージをカスタマイズして扱ってくれるところと協業し、SaaS提供を強化したい」(横山社長)とし、クラウド、SaaS型サービスに大きく重心を傾け始めている。
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