クラウドで混戦模様に
ピー・シー・エー
クラウドに向けて一気に加速 「しっかり売れているのは、『PCA for SaaS』だ」。すでにSaaS事業の黒字化を達成しているピー・シー・エー(PCA)の水谷学社長はこのように強調する。
SaaSに対しては、抵抗感を抱くパートナーがないわけではない。水谷社長は、「パートナー自身の社内の営業成績の評価は従来型だから、営業担当者がSaaSで契約をとっても高く評価されない。SaaSはストックビジネスだから、一度に大金が稼げるわけではないけれども、5年間のトータルの売上高で考えれば、もっと高く評価してもいいはず。そんな観点に立つパートナーはまだ少ない」と嘆く。今期の売り上げ目標は、新規と継続を合わせて1億7000万円。2014年までに8万社のユーザー企業に導入を果たすという目標を立てている。
同社は、SaaS提供を見越した次期パッケージ製品を開発中だ。今年度中にはローンチする予定で、中小企業のコスト削減の切り札になるとしている。
一方で主力製品の「PCA Dream21」は「Xシリーズ」のローンチを契機に開発体制を強化する。モジュールを順次追加していくという「17モジュール構想」を掲げ、開発チームを再編して、開発のスピードを上げていく。「『Xシリーズ』のアーキテクチャを『Dream21』に取り込む」(水谷社長)という方針だ。
競合に先行してSaaS事業を展開してきたPCAは、強気の姿勢を崩さない。
富士通ビジネスシステム
SaaS展開を慎重に見極める 富士通ビジネスシステム(FJB)が提供しているSaaS型サービスには、ホテル向けの「GLOVIA smart ホテル SaaSサービス」のほか、ネットスイートの「NetSuite」、オロの「ZAC」などが揃う。梶山亮・GLOVIAビジネス統括部共通業務ソリューション部プロジェクト部長は、「あくまでも検討段階」と前置きしたうえで、「人事や給与などの共通系のアプリケーションのSaaS化を構想中だ」と明かす。その後、業種特化のSaaSを横展開していく道筋が考えられる。
「NetSuite」は、「重なる部分があるかもしれない」(堀井勝俊・民需ソリューション事業本部GLOVIAビジネス統括部プロジェクト統括部長)と認識しているが、同製品はサービス業に強い特徴などがあり、ユーザーニーズに応じて提供できる、と説明する。
「GLOVIA smart」は、年商50億・100億円前後の企業がメインターゲット。とくに年商100億円前後のユーザーが多い。堀井・プロジェクト統括部長は、「検討中のSaaSは下位市場に向けたものになるかもしれない」と話す。同社はSaaSアプリケーションを拡充していく考えを明らかにしているが、いまだ慎重な姿勢が目立つ。
インフォコム
ユーザーのすそ野広げる インフォコムは、クラウド型サービス「GRANDIT for Cloud」を5月に発表した。次世代ERPコンソーシアムメンバーの何社かは、2010年度の早い段階で提供を開始する予定だ。子会社であるインフォベックの山口俊昌社長は、「コンソーシアム陣営で一本化する話もあったが、業種によってニーズが変わってくる。そこで、メンバーにいろんな方面でサービスを立ち上げてもらい、フィードバックしてもらいながら戦略をブラッシュアップしていく」と説明する。
パートナー各社は、「GRANDIT for Cloud」に加え、それぞれが得意とする業種や連携製品などと融合したクラウドサービスを提供していく。例えば「GRANDIT for Cloud」では、標準版のほか、継続契約アドオンテンプレートやプロジェクト原価管理 工事進行基準対応テンプレートを用意する。パートナー制度は、今年度中に再整備する計画だ。「PaaSベンダーとの協業を推進してプライベートクラウド環境での提供を検討したい」(山口社長)としている。
ユーザーは、年商50億円以下の企業を想定している。従来のライセンス販売は、年商50億円から1000億円くらいの中堅企業がコアターゲットだった。クラウドビジネスの展開によって、3年間で100社への導入を見込む。「GRANDIT for Cloud」の提供開始を契機に、ユーザーのすそ野を広げる狙いだ。
ウェブマーケティングに注力
OBC/ミロク情報サービス
継続的強化でリーチ広げる オービックビジネスコンサルタント(OBC)は、「奉行シリーズ」を中心とした製品情報などのコンテンツを揃えた「奉行クリック」を、2009年8月に開設した。いくつかの設問に答えることで、ユーザー企業にとって必要な製品の種類やパッケージ価格がわかる「奉行製品ナビ」のほか、業務要件の回答や構築プラン、概算見積もりまでシミュレーションできる「奉行導入シミュレーター」など、初期の検討段階から支援するサービスを用意している。興味を抱いた既存・新規ユーザーには、同社の問い合わせ窓口が対応する。
和田成史社長は、「リクエストはいろいろと入ってきている。(サイトの開設で)窓口が広くなったのは大きな成果」と満足げ。2010年中頃にはリニューアルを控えており、体験デモやオンラインセミナー機能を追加していく方針だ。
ミロク情報サービスが運営するビジネステンプレート無料ダウンロードサイト「海bizocean」は、約2万点のビジネステンプレート集「書式の王様」などを用意している。現在の収益モデルは広告収入に頼っている。事業計画書や工事請負契約書、業務委託契約書などの書式がダウンロードできる。2010年2月時点で、会員数は約41万人。月間PV数は約700万PVの集客力がある。SMBのビジネスパーソンを対象としている。
会員の内訳は、経営者と経営の意思決定に関わる役員、個人事業主その他が3分の1ずつ。是枝周樹社長は、「クラウドを開始するにはこういうやり方が合理的。退職届SaaSや勤怠入力SaaSなど簡単なところから始めればよい」として、「海bizocean」がクラウド開始に向けた試金石になることを匂わせる。
選択と集中、パートナー再編
OBC/弥生
経営リソースを効率的に分配 2009年、OBCは商流の再編を進めた。「パートナーの自己責任でカスタマイズしてもらう。当社が自らカスタマイズすることはしない」(和田成史社長)方針に舵を切った。強みとしてきた販売網を洗い直し、パートナーの能力の底上げを図るのが狙いだ。開発ツール(SDK)などは継続して公開する。従来、同社のカスタマイズ支援を見込んで製品を購入するユーザー企業が少なくなかった。こうしたユーザーの要望に応えられるSI力を、パートナーに求める能力として明確に位置づけた形だ。
同社は、パッケージカスタマイズ以外の営業部分でパートナー支援を進める。「奉行iシリーズ」の提案に必要となる製品・業務知識を習得するパートナー支援プログラムOSA(OBC Solution Advisor)がその一つ。今後は、リプレース商談に対して中小パッケージの比較資料などを用意したり、データ移管の支援に「データコンバートセンター」を設置したりすることを計画している。
弥生は、パートナーを約600社から約400社までに絞り込んだ。販売実績がほとんどないパートナーが目立ったからだ。低実績パートナーの多くは、パートナー認定を受ければ手に入れることができる同社製品一式を目当てにしていたという実態がある。
同社のビジネスパートナープログラムは、販売・教育・開発パートナーと三つに分かれる。パートナーを絞り込むことで、各区分別・地域別に可視化でき、同社との連携が取りやすくなったといえる。立堀隆・マーケティング部製品戦略チームマネジャーは「選抜したパートナーと密にやっていきたい」と話す。
商流の見直しは、経営リソースの分散化を避ける狙いによるところが大きい。加えて、“箱売り”では生き残れなくなってきたというパートナーに、事業構造の改革を迫っているとも受け取れるだろう。
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