商機は攻め方次第
販社が明かす市場攻略法
小規模法人・個人事業主の業務ソフト浸透率は低い。業務ソフトメーカーは攻めあぐねている状況だ。エンドユーザーと日々接する販社では、現場が抱える問題点や高まるニーズなどを肌で感じている。ディー・マネージの萱沼徹・代表取締役とスリーエスフォーラムの長谷川剛・取締役ネットワーク事業部部長が、中小企業への“攻め方”を語った。
景気回復の兆し
ユーザー層に変化  |
スリーエスフォーラム 長谷川剛氏 |
萱沼 業務ソフトは、案件ベースでは昨年より増えており、ダウンサイジングやリースの見直しが目立つ。ユーザーの規模は大きくなってきている。年商100億円から200億円規模の企業も抱えるようになった。予算を絞り込んだユーザーが、当社にきたのだろう。ユーザーの選択眼が厳しくなっているというのが実感だ。最近はユーザーがシステム導入の目的を明確化しており、最低限のスケールからの提案になっている。
長谷川 見積もり件数は1.5倍に膨らんだ。ただ、クロージングに至るまでのスパンが長くなってきた。ユーザー層の変化を感じており、上場企業からも声がかかるようになってきた。部門単位で導入することも多い。そのほか、公益法人からの引き合いやデータ移行の相談が目立つ。
避けられぬ個別最適化
“お局さま”に振り回される  |
ディー・マネージ 萱沼徹氏 |
萱沼 経理や総務などのバックヤード出身の経営者は少ない。そのため経理が勝手に部門最適を図ってしまい、肝心の経営者が実情を把握できていない。全体を俯瞰できる人物がいないケースが多いのが問題だ。
ITシステムの導入は、ユーザー企業の担当者の能力に左右される。従来はスタンドアロンのみだったが、今はネットでつながるという感覚をもち合わせなければならない。本来は管理職が担当すべきだろう。経営者は現場を理解していない。そのうえ、投資ではなく消費という意識をもっている。現場は、上からコストのことでとやかく言われ、下からはさまざまな要望を受けて板ばさみの状態になりがちだ。
課題解決に重要なのは、経営トップにどのように切り込んでいくか。中小企業の唯一のコンサルタントである会計事務所を活用することになるだろう。会計事務所にもちかけた悩みに対し、当社がコンサルティングや製品導入を手がけていく。
長谷川 経営者にはコスト意識をもってほしい。トップダウンのほうがうまくいきやすいので、窓口は役員であるほうがいい。問題は担当者ベースでプロジェクトが止まってしまい、経営者に理解してもらえないことだ。管理部門の“お局さま”に振り回されることもある。
当社ができるのはユーザーのもとに足しげく通うこと。無料で使用してもらって製品の優秀さを実感してもらう。
中小企業は攻め方次第
ユーザーリーチ度を見直し 長谷川 メーカーは中小企業に攻め切れていない。なかでも個人事業主のユーザーはとても少ないのではないか。まだまだ攻めどころがあると感じている。
個人事業主のなかでもとくに農業が未開拓だ。「会計は面倒くさい」「PCはわからない」「農協・青色申告会がやってくれる」というユーザーが多い。これからは、ユーザーと話す機会を設けていくことが必要で、セミナーなどを開催していきたい。自主流通を始める農家も登場してきているから農協には頼れないだろう。
弥生
サロンビジネスの担い手と新規開拓
個人事業主が多い理美容業は有望市場 個人事業主の割合が高く、開業や独立が多い理美容業。弥生は、美容サロン用品の販売や開業支援などを手がけるビューティガレージと協業し、業界へアプローチしている。
ビューティガレージの東京本社営業グループカスタマーサポートチームの舘石優氏は、「美容サロンは経営に疎い。税務・会計に対するアレルギーがある」と話す。とはいえ、理美容業は、競争が激しさを増し、戦略的経営が求められるようになってきた。厚生労働省の「平成20年度保健衛生行政業務報告」によれば、全国の美容所数は22万1394施設で、理容所数は13万5615施設にのぼる。飲食店に比べて起業にかかる初期投資額が低く、開業しやすいことが店舗の増加に拍車をかけてきた。だがすでに飽和状態になっており、廃業に追い込まれる理美容院も少なくない。
舘石氏は、「30年前は開業すれば儲かった。20年前はきれいな店であれば客が入った。10年前は技術があればよかった。今はすべてが揃っていても苦しい」(舘石氏)と業界の状況を語る。理美容院にとって、経営戦略の見直しが喫緊の課題だ。ビューティガレージにとっては追い風が吹く状況で、開業支援セミナーや独立開業支援塾などを開催。弥生と提携して、顧客深耕を図ってきた。
弥生は、広大な未開拓市場があると認識しており、個人事業主ユーザーの発掘に力を注いでいる。なかでも理美容業はマーケットが大きく、有望市場と判断。ビューティガレージと手を組むことでユーザーのすそ野を広げる狙いがある。ビューティガレージが運営するウェブサイト「SALON開業ch」は、「サロン税務・会計」というコラムを連載しており、弥生がサポートしている。弥生の吉岡伸晃・マーケティング部製品戦略チームビジネスデベロップメントマネジャーは、「起業家の支援に力を入れている。会計ソフトを啓発していきたい」と話す。
「SALON開業ch」やセミナーの効果はすでに現れている。弥生のホームページへの流入が増加しており、弥生会計の理美容業(法人・個人)テンプレートのダウンロード数が伸びている。
弥生は今後、異業種ビジネスの担い手との協業をさらに進める考えだ。

美容サロンの開業や独立、オープン情報を掲載している「SALON開業ch」