中国ビジネス拡大が不可欠 NTTデータは、13年3月期に海外売上高を今期(11年3月期)目標の1000億円から3000億円へと拡大する計画を立てている。中期経営計画段階で、この“3000億円プラン”を発表したときは、実現可能性はほとんどみえていなかった。だが、相次ぐM&Aによって、現実性が一気に高まってきた。新規に加わったキーンとインテリ、既存のビジネスで北米地区での売上高1000億円は射程距離内に入った。欧州地区はグループ会社の独itelligence(アイテリジェンス)、独Cirquent(サークエント)を中心に約600億円のビジネス規模を形成しつつあるという。
しかし、圧倒的に少ないのは中国・ASEAN(東南アジア諸国連合)地区の売り上げだ。NTTデータでは、北米と欧州、アジアでの売り上げをともに1000億円規模にすれば、3000億円を達成できると捉えている。このため目標達成には、「中国ビジネス拡大が不可欠」(NTTデータの山下社長)ということになる。中国の情報サービス業の売り上げは、ここ数年、年率25%水準で増加しており、2010年は1兆2000億元(約15兆6000億円)に達する見込みだ。中国はターゲットとしては申し分ないマーケットに成長しているのだ。
地場金融の案件で受注にめど 海外マーケット攻略に向けて着実に歩を進めるNTTデータを、猛烈な勢いで追うのはITホールディングス(ITHD)だ。NTTデータがキーンを迎え入れることで、世界30か国128都市、約2万1000人の人員を展開するのに対し、ITHDは主に中国とベトナムに進出し、海外拠点の総人数は370人規模に拡大した。NTTデータとはケタが違うが、それでもドメスティックな日本のSI業界では、トップクラスの勢いで果敢に海外市場を攻めている。
主要ターゲットの中国には、ITHDグループのTIS、ソラン、インテック、クオリカなど多数のグループ会社が進出。天津のTIS拠点は、中国最高の設備水準を誇る1200ラック規模の大型データセンター(DC)を運営。同国における自社DCは、現時点ではNTTデータですら保有しておらず、大きなアドバンテージとなっている。天津DCは、今年4月に全面開業して半年余り。悲願だった地場の金融大型案件で初受注のめどをつけている。金融機関を得意とするTISは、地場系金融案件については自社の強みを存分に生かせる分野だ。
ほかにも欧州の製造業、日系企業からのアウトソーシング案件の予約を獲得しており、初年度目標だった200ラック分の受注をこの半年余りでめどをつけた。今年10月、一時帰国した天津現地法人の丸井崇総経理は、「予想以上の確かな手応えを感じている。次年度の設備拡張計画を前倒しで詰める」と、現地ビジネスの活況ぶりを興奮気味に話す。
再編で投資余力を増やす  |
ITHD 岡本晋社長 |
ITHDは、11年4月をめどに、TISとソラン、ユーフィットの3社の合併による新生TISを発足させる。同じITHDグループのインテック傘下の子会社の再編も並行して実施しており、スリム化を急ぐ。ITHDは、複数の事業会社の集合体であり、それぞれの特性を尊重する“八ヶ岳経営”を実践してきた。ところが、リーマン・ショック以降の市況悪化や、競争力強化に向けたDCなどの設備投資、海外進出やM&Aなどに伴う資金需要の必要性に背中を押されるかたちで再編を加速させている。
3社の大型合併では、DCの相互活用やソフト開発の効率改善、重複・周辺業務の統合を積極的に推し進める。これによって、3年後には単年度ベースで最低50億円の営業利益押し上げ効果を見込む。手元のキャッシュが増えれば、成長に向けた投資に回す余力も増えるというものだ。ITHDの岡本晋社長は「八ヶ岳経営は、やめたわけではない」と、引き続きグループ各社の自主性や創意工夫による事業拡大を重視する。だが、より大きく成長するには、ある程度の既存グループ会社の再編は避けられない。新生TISの社長に就任する予定の桑野徹・現TIS副社長は、「筋肉質になることは将来、新たなグループ会社をスムーズに迎え入れる土壌づくりにもつながる」と、さらなるM&Aでの成長も視野に入れる。
世界のITベンダーは、大規模な再編を繰り返しながらトップ集団を形成している。NTTデータが日本のSIerとして唯一、世界のトップ10に入る。日本の情報サービス産業を真の意味で発展させるには、世界で活躍するSIerをさらに多く輩出することが欠かせない。
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