クラウド事業立ち上げを支援
中小ベンダーとのエコシステムを前面に 日本ユニシスは、自社でプラットフォームをもたない中小ベンダーを主な対象に、SaaS事業への参入を支援する事業を展開している。大手コンピュータメーカーなどとは異なるのが、業種・業界特化の視点だ。
事業化や技術などの支援にあたっては、SaaS企画支援&ポータル「ビジネスパーク」を運営している。参加することで得られるメリットは、(1)SaaS事業の立ち上げノウハウを提供する「SaaS企画支援サービス」でビジネスと技術の両面からシナリオを作成、(2)ポータルサイトに商品情報や利用事例を掲載、(3)参加企業同士でのビジネスマッチングの機会として開催する交流会を活用──の三つである。交流会は、SaaSの利用事例や最新のクラウド動向などの情報収集などに役立てることができる。
SaaS事業への参入を目指す事業者は、SaaSアプリケーションの実行環境やシステム連携機能を提供する「SaaSプラットフォーム・サービス」と、ハードウェアやネットワーク回線、OS、運用、監視、セキュリティなどを一元的に提供する「ICTホスティングサービス」を活用する。
クラウド間あるいは社内システムとクラウドとの連携には、「SaaSプラットフォーム・サービス」の付加機能である「データ連携サービス」を利用する。これは、マジックソフトウェア・ジャパンのシステム連携ソリューション「Magic jBOLT」と、日本ユニシスが提供しているICTホスティングサービス、SaaSプラットフォーム・サービスのネットワーク・セキュリティ機能をベースに連携基盤を構築し、サービスを提供している。メールやFTP、ファイルサーバーを介したデータ連携だけでなく、データベースへの直接アクセス、SOAP、HTTPリクエストを用いた連携方法を提供し、アプリ間のデータ連携が可能となる。
参加企業は15社から20社ほどで、アプリケーションの大半は日本ユニシスの自社開発のものが占めている。なかでも電子書籍を貸出できる電子図書館サービス「LIBEaid/ライブエイド」が売れ筋だという。杉山陽一朗・ICTサービス本部サービスビジネス部2グループ主任は「来年には百数十にまで数を増やしていきたい」と話す。
販売チャネルは、原則は開発元の商流でそれぞれの自社アプリを販売する形で、各社のアプリケーションの再販を担うような代理店制度は設けていない。
なお、「ビジネスパーク」から派生してサブパークと呼ばれる業種・業界特化型の組織を立ち上げている。製造業支援SaaS普及協会は、主に中堅・中小企業を対象にSaaSの普及を目指す組織で、ミキ情報システムや日揮情報システム、日本生工技研、スミセイ情報システムなど10社ほどの中堅・中小規模の企業が会員となっている。
SaaSアプリは、生産管理システムや工場設備のメンテナンス情報管理システム、作業分析・改善システムなどが揃う。掛谷雅人・ICTサービス本部サービスビジネス部2グループグループリーダは「業種特化のアプリをもっているベンダーを募っている」と説明する。
アパレル業界などの他業種・業界での組織展開も想定しており、中小企業との結びつきが強いITコーディネータと連携しながら拡販につなげていく方針だ。
日立コンサルティング 伊藤泰樹ディレクター
クラウド利用への「誘導の仕方」
「コスト最適化」は諸刃の剣となる面をもっている。コストを意識するあまり、IT部門を縮小するようなことがあってはならない。IT部門を有用に生かすためには、システムごとの縦割型組織から機能別の横串型に再編成し、IT戦略の立案やシステムの企画、サービス品質の向上にリソースを集中させる必要がある。企業のトップはこれに気づいている。地方の金融機関などもIT子会社の位置づけを再検討している。既存システムは、システム統合が一つのトレンドになっている。こうした角度から仮想化の提案に持ち込む。
また、IT部門と総務部門を一つの組織に統合にするかどうかという場合は、もし日立製作所グループが請け負うということであればBPO、SaaSが考えられるし、財務会計のアプリケーションだけを利用するということであれば、SaaSの展開が可能だ。
このほか、情報展開のスピードが速く、グローバル経営が進展している今日は、システムを迅速に立ち上げるためにPaaSの利用が選択肢に入ってくるだろう。グローバル化に伴って導入されてきているヨーロッパ型の経営スタイルでは、説明責任が求められるので、膨大なシステムログを取得する必要が生じる。ここでもIaaSなどのクラウドが解決策の一つになる(談)