勝ちパターン その3
「クラウド」と「モバイル」に注力  |
トレンドマイクロ 大田原忠雄部長代行 |
今、セキュリティメーカーの間では、大手/SMBといったターゲットの区分とは別に、「クラウド」と「モバイル」の二つのキーワードが注目されている。
「モバイル」とは、法人利用が増大している新型携帯端末をパソコンと同様にサイバー脅威から保護する製品群の展開を指している。セキュリティメーカー各社は昨年から、モバイル端末を包括的に管理することができるMDM(モバイルデバイスマネジメント)製品を揃えて、2012年、端末の普及と同じペースでの納入を狙う。もう一つのキーワードである「クラウド」は意味が広く、メーカーがセキュリティをクラウド型サービスとして提供するほか、DCでのクラウドインフラを守るための製品の展開も指している。
トレンドマイクロは、MDMの事業拡大を目指し、現在行っている大手向けのハイタッチ営業に加え、「モバイル通信キャリアと提携して、医療など幅広い業界・企業にMDM製品を提供する」(大田原部長代行)ことを計画している。クラウドに関して、同社は昨年7月に投入したクラウド向けデータ保護ソリューション「Secure Cloud」を商材として、DC事業者やDCを自社運営する企業に向けたビジネスを強化している。
「クラウド」と「モバイル」を軸にするセキュリティメーカーの製品を販売するにあたっては、クラウドサービスプロバイダやSIerへの“OEM提供”が有効な手法となろう。シマンテックは、富士通のクラウドサービス「オンデマンド仮想システムサービス」に統合セキュリティ「Endpoint Protection」を提供したり、マカフィーは、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)のスマートデバイス管理ソリューションにMDM製品「Enterprise Mobility Management」を提供するなど、コラボレーションの事例がいくつか現れてきている。
セキュリティメーカーの経営トップは、2012年、クラウドサービスプロバイダ/SIerとの協業に力を入れる方針を明らかにしている。
販社の視点
三和コムテック
ECサイト事業者を狙って事業を拡大  |
三和コムテック 岡山次長 |
ウェブセキュリティ事業を展開する三和コムテックは、マカフィーのウェブサイトぜい弱性診断サービス「McAfee Secure」の販売を手がけている。日本で「McAfee Secure」を独占販売している。このサービスは、「HACKER SAFE」として2004年から展開してきたが、昨年にマカフィーと協業してブランドを一新した。これを機に、ターゲットを広げて販売活動に拍車をかけている。
三和コムテックは、米国では「McAfee Secure」のECサイト事業者への導入が進んでいるとみて、2012年、日本でもECサイト事業者向け展開を本格化していくことを計画している。「McAfee Secure」は、クレジットカード情報のセキュリティ基準「PCI DSS」を踏まえ、サイト上での安全証明マークを採用する。ECサイト事業者は、この安全証明マークを自社サイトで表示することによって、消費者にサイトの安全性を訴求することができる。
「McAfee Secure」の販売を担当するソリューション営業部第二グループの岡山大・次長は、「2012年はセミナーを通じてECサイト事業者に向けた啓発活動に取り組み、早い時期に売上拡大につながるよう、『McAfee Secure』を展開する」としている。
記者の眼
2012年は、セキュリティメーカーにとって勝負の年だ。競争が激化するなかで、他社との差異化を図って、製品戦略と販売戦略で強い特色を出すことが優位に立つポイントと考えられる。大手企業向け展開では、最新型サイバー攻撃を防ぐ技術の優位性が強力な武器だろう。一方、SMB市場の開拓では、コンシューマ向け展開に強く、広く知られているブランドをもつことが、差異化要因の一つになりそうだ。