アンチウイルスの市場では、検知率の高さを“売り”にしているメーカーが多い。セキュリティの分野でSMB市場が有望視されるなか、「検知率の高さ」だけで事足りるのか。セキュリティ製品を販売するパートナーはどのような要望をもっているのかを探った。
日本ではトレンドマイクロが独走
市場シェアでESETなども注目株に
企業数のうえでは大企業の市場は限られている。それに対して、中堅・中小企業(SMB)は無数に存在し、有望な市場として期待できる。とはいえ、まったくの未開拓市場というわけではなく、SMBでもアンチウイルスソフトを導入していない会社はほとんど見当たらない。セキュリティの対策を打っておかなければ事業の継続が困難になるという意識が浸透しているようだ。
SMB市場攻略に向けたセキュリティメーカーの動きをみると──。トレンドマイクロは、「ウイルスバスタービジネスセキュリティ」を2006年に投入し、マカフィーは「McAfee Total Protection for Secure Business」を、シマンテックは昨年から「Symantec Endpoint Protection Small Business Edition」といった中小企業向けの総合セキュリティ製品をそれぞれ展開している。「ビジネスセキュリティ」は、サーバーと複数のクライアントを一括管理する機能を備えている。このなかで、トレンドマイクロは“日本の会社”として、日本市場において早い段階から製品を展開していたことで、販社の担当者が自宅のPCに導入するなど認知度が高く、高いシェアを獲得している。
また、マカフィーはASPサービスに強く、「McAfee Total Protection Service」を2001年から販売し、90万ノードの利用者を抱えている。
シマンテックは、中小企業向け製品「Endpoint Protection Small Business Edition」の販売を昨年から開始した。同社の新しいパートナー制度ではリセラーに対して、売り込み先である中小企業向けの専門資格を設けるなど、拡販に力を入れている。
中小企業の実態調査を得意とするノークリサーチの調査結果によると、市場シェアはトレンドマイクロの「ウイルスバスター」が47.7%、シマンテックの「ノートン」と「Symantec Endpoint Protection」の合計が21.1%、マカフィーの「McAfee」が12.2%、コンシューマ製品で高いシェアをもつソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」は4.8%だった。
大手のシマンテックとマカフィーを抑えてトレンドマイクロがシェアトップに立つ日本の市場は、世界的にみて特殊な状況となっている。
特殊事情といえば、日本の中小企業ではコンシューマ製品が使われているケースも多い。家族経営レベルの従業員規模が小さい会社やSOHOクラスでは、セキュリティソフトに一括管理の機能があったところで理解ができないし、利用する機会がないからだ。その機能を説明しても「それで?」「だから?」と言われてしまうこともあるという。そうした事情から、保守・サポート拠点を全国にもっているパートナーはコンシューマ製品の販売に力を入れている。
ノークリサーチ・シニアアナリストの岩上由高氏は「一般ユーザーからは『マルウェア検知/駆除が正しくできているかどうかを確認できない』『PCが重たくなる』といった負の部分しか目に見えないため、減点法で評価される」と、実態を説明する。その点、キヤノンITソリューションズが販売する「ESET NOD32 Antivirus/ESET Smart Security」は、実行時に必要とされるメモリ容量が少ないことが評価を得たのと、価格面の割安さが受けて、シェアが伸びてきているという。
なかには、アップグレードする際にうまくいかないといった現象が発生したり、リアルタイム検索を有効にするとExcelファイルを編集した時にテンポラリファイルが生成されたりするような不具合が目立つソフトもみられる。岩上シニアアナリストは、「こうした問題は早めにつぶしておくことが大切だ」とも苦言を呈している。
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