NTTコムウェアの場合
既設のDCをリフォームする
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| 尾西弘之部門長 |
DCの省電力化/低コスト化は、DC事業者にとっての喫緊の課題。しかし、膨大な時間と投資をかけて、省エネ型やコンテナ型のDCを新設する余裕をもっているITベンダーはそれほど多くはないだろう。大半のITベンダーにとっては、既設のDCをリフォームし、省電力の設備を設けるのが、運用コスト削減の近道となる。
NTTグループ外向けビジネスの強化に取り組み、その主力商材として企業向けクラウドサービス「SmartCloud」を展開しているNTTコムウェアは、その「SmartCloud」の基盤となる既設DCで、外気空調システムの実証実験を進めている。DC運用コストの削減によってサービス料金の値下げを図り、「SmartCloud」を拡大するのが狙いだ。
NTTコムウェアがキーワードに掲げるのは、「排熱式データセンター」だ。このシステムは、外気をDC内に取り入れて、サーバーなどIT機器を冷却するもの。IT機器から出る熱を排熱ファンを使ってDCの外に排気する仕組みだ。外気とDC内の温度や湿度の状況によって、排熱と外気を混気して調整することができる。実証実験を行っているDCでは、現段階で1.1のPUE値を達成しているという。
●ハウジング用のDCに横展開 サービス事業本部SmartCloud推進部門の尾西弘之部門長は、「FacebookなどのSNSを活用してDC事業者間で情報を交換する“DCコミュニティ”と連動したり、ファシリティメーカーと協力するかたちで、今回の実証実験にあたってのあらゆるノウハウを手に入れた」と意気込む。NTTコムウェアは現在、排熱式の実証実験を「SmartCloud」用のセンター1か所で推進しているが、ハウジング需要が大きく伸びるとみて、今後、ハウジング用のDCへの横展開を検討している。ハウジングサービスの利用料金を引き下げることで、他社との差異化を図る考えだ。
尾西部門長は、「『SmartCloud』をはじめ、当社のサービス事業を強化するために、ICTインフラの運用コストをいかに安くすることができるかが、カギを握っている。DCの省電力化によって、電気料金を30~40%程度下げることができるとみている」という。DCサービスの提案活動で低いPUE値をアピールし、商談ベースで省電力DCのニーズに確かな手応えを感じているそうだ。
・記者の眼 DCというビジネスは、「建設」や「ファシリティ」が関わるので、ITの枠を大きく越えることになる。DCの進化を目指しているITベンダーは、空調システムづくりなど、自社の得意分野ではないあらゆる知識を取得する必要がある。競争が激化しているなかでも、DC事業者は、SNSなどのプラットフォームで情報の交換を重視したり、自社で蓄積してきたノウハウを他のベンダーに提供することを推進している。DCが進化するうえで、ベンダー間のパートナーシップが不可欠といえそうだ。