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<データセンター事業者座談会>BCP対策の見直しで注目集まるDC市場 主要5社のキーマンが現状と戦略を語る(前編)

2011/08/25 19:56

週刊BCN 2011年08月22日vol.1395掲載

 東日本大震災によって、企業におけるBCP(事業継続計画)は大きな見直しを余儀なくされている。こうしたなか、注目を集めているのが、堅牢な構造、冗長化されたシステム、強固なセキュリティを誇るデータセンター(DC)の活用だ。また、電力をはじめとする省エネや効率化の面からも、DCのメリットが再認識されている。そこで、DC事業者の有力5社から9名の参加を得て、DC市場におけるニーズの変化や影響、DCを利用するメリット、さらに今後の戦略や設備投資などについて幅広く語ってもらった。


IDCフロンティア
事業企画本部 技術企画部 部長
山中 敦 氏
会社全体の技術戦略とDCの建設プロジェクトを担当している。2000年頃よりDC業界と関わる。

IDCフロンティア
ビジネス推進本部 カスタマーコミュニケーション部
部長 粟田 和宏 氏
広報宣伝、営業企画/営業サポート、クラウドのカスタマーサポートの業務を担当している。

エクイニクス・ジャパン
代表取締役
古田 敬 氏
1997年頃よりDCのビジネスに関わる。それ以前は、中近東での建設プロジェクトや国際通信事業、日米欧を結ぶ海底ケーブル敷設などグローバル規模の通信やインフラプロジェクトを多数推進してきた。

エクイニクス・ジャパン
営業本部 セールスエンジニア
大槻 顕人 氏
2002年入社。営業本部でセールスの技術的なサポートを担当。データセンターの建設プロジェクトの立ち上げなども担当してきた。

KVH
営業本部 上席執行役員
ニコラ ゾェルゲル 氏
営業全般を統括している。データセンター、クラウドビジネスを幅広く担当。ドイツテレコムの法人顧客事業ブランドのT-Systemsで、アジアパシフィックの代表を務めた経験がある。

KVH
営業本部 データセンター営業部 シニアスペシャリスト
齋藤 晶英 氏
今年2月に運用を開始した千葉の新データセンターをメインに、営業をサポートする技術営業を担当。社会人になった当初から長くDCビジネスと関わる。

さくらインターネット
代表取締役 社長
田中 邦裕 氏
学生時代に18歳でさくらインターネットを立ち上げる。ベンチャー企業の創業者として多くの業務担当を兼務し、新しいサービスの立ち上げをすべて統括する。

ビットアイル
取締役 CTO
安藤 卓哉 氏
2002年入社。データセンターのファシリティなど全体の構築を担当。また、情報システム室の責任者でもある。汎用機のOS周りの開発などを経験している。

ビットアイル
マーケティング本部 事業推進部 部長
高倉 敏行 氏
IR以外のコミュニケーション関係の業務を幅広く担当。アライアンスやグループ会社の管理、経営企画などの業務も担当。社会人としてのスタートは銀行員。

司会・進行/谷畑良胤


都市部だけでなく、地方DCの増強が進む

 ――最初に、ご自身の会社の紹介をお願いします。

ビットアイル
高倉 敏行氏
「これまで東京のみとしていましたが、品川、文京に次ぐ第3の拠点として、新たに大阪データセンターを6月に開設しました」
 高倉(ビットアイル) 独立系のDC事業会社として東京を中心に展開し、アクセス性にすぐれた都心型DCであることを大きな特徴としています。DCは、東京都の品川区と文京区に立地し、2009年2月にグランドオープンした第4DCは、最大2600ラックを設置可能としており、都内最大級で、アクセス性のよさと高い拡張性を兼ね備えています。さらに、これまで東京のみとしていたのですが、第3の拠点として、新たに大阪DCを今年6月1日に開設しました。

 以前のユーザーはベンチャー企業が多く、比較的小規模のシステムをお預かりするケースが多かったのですが、最近は規模の大きなユーザーも増えており、業種・業態も多様化しています。

 田中(さくらインターネット) 高品質でコストパフォーマンスにすぐれたサービスの提供を企業理念としており、低料金を大きな強みとしています。同時に、余分な機能をくっつけない“低付加価値データセンター”であることをモットーとしています。また、ホスティングを事業の柱としていることから、全ラック数の半数以上を自社利用で占めていることも他のDC企業とは異なる点です。

 当社では、ユーザー層を、サービスの売上金額で10万円以下、100万円以下、1000万円以下、1000万円以上の4つのカテゴリーに分けていますが、1000万円以上のユーザーは十数%で、10万円以下のユーザーが大多数を占めています。当社は東京都内と大阪に計5か所のDCを運営していますが、ここ数年、規模が小さく、設備的にも古いDCは、大きいものへ統合するスクラップ&ビルドを推進しています。現在、全体で2300ラックを保有していますが、東京から大阪への移設も進めています。

 ニコラ(KVH) 通信事業者として事業を開始した当社は、自前のネットワーク(ファイバー)とDCを所有し、これに加えてクラウド、ITマネジメント、プロフェッショナル・サービスを統合した「KVH情報デリバリー・プラットフォーム」戦略を打ち出しています。すべてをワンストップ・ソリューションとして提供できることが大きな特徴です。現在、東京本社をはじめ、東京地区、大阪地区の4か所に信頼性、安全性の高い自社所有のDCを保有し、自社構築のネットワークで通信サービスを提供しています。

 当社のDCは、東京証券取引所など、日本の主要取引所の認定を受けるなど、金融業界のミッション・クリティカルなニーズに対応して、高いセキュリティを備えています。また、多国籍スタッフによるバイリンガル対応も特徴の一つです。

エクイニクス・ジャパン
古田 敬氏
「今回の震災を機に、日本の設備やサービスは高品質な分、コストが高いのは当然だという幻想が崩れました。いくら莫大なコストをかけても“絶対”はありません」
 古田(エクイニクス) 当社は、基本戦略として「Platform Equinix」を打ち出しています。特徴は大きく分けて三点があります。その一つ目は、グローバル展開。現在は世界12か国、37都市、99か所にDCを構築しており、延べ床面積は55万8000m2に上ります。二つ目としては、幅広いユーザー層。650社以上の通信事業者をはじめ、グローバル企業やクラウド企業、コンテンツ・プロバイダ、金融機関といった五つの分野にわたり4000以上のお客様が当社をご利用になられています。そして三つ目が情報エコシステム。これは、ネットワーク・プロバイダやグローバル企業がネットワークを相互接続できる水平統合の環境を当社のDCが提供していることです。各企業は一つのDC内で自由に相互接続ができ、地理的に離れた場所でネットワーク接続する必要がなくなります。これにより、すぐれたパフォーマンスと柔軟な接続性、そしてスピーディーな拡張が可能となる、情報システム、通信網の生態系を実現できます。

 粟田(IDCフロンティア) IDCフロンティアは、Yahoo! JAPANのグループ企業です。長年のDC運用ノウハウをベースとして、DCサービスとパブリッククラウドサービス「NOAH」を提供しています。現在、アクセス性の高い東京の7か所をはじめ、大阪、北九州と、国内に9か所にDCを所有しています。なかでも、北九州データセンターは、画期的な外気空調による省エネルギー効果が注目されています。東京と大阪の経済圏、北九州、さらに新規開設予定の福島県白河を3メガ・データセンターに位置づけて、事業展開を推進しています。

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