【ブレインパッド】
「データ解析のプロ集団を有する」
ビッグデータの本質である「活用」を実現するために、データ解析やマーケティングの高度なスキルをもつ専門家、いわゆる「データサイエンティスト」が中核を握る存在となる。そのため、大手メーカーは急ピッチで専門家の育成を進めており、データサイエンティストのチームを結成している。
●ターゲットリストを提供  |
ブレインパッド 宍倉剛室長 |
すでに数年前からデータサイエンティストの育成に力を入れ、データ解析のプロ集団を有しているユニークなベンダーがある。2004年の設立で、企業の蓄積データの分析業務を受託したり、分析ソフトの販売を手がけているブレインパッドだ。ブレインパッドは、40人ほどのデータサイエンティストを集めており、彼らデータサイエンティストは統計解析に精通するだけではなく、現場のプロジェクト経験も豊富だという。
ブレインパッドの主なクライアントは、日本マクドナルドや日本航空など、膨大な顧客情報を抱える企業だ。ブレインパッドは各企業からデータを預かり、自社であらゆる分析ツールを使って解析を行ったうえで、「このお客様にメールを送るべき」といったことをアドバイスするなど、ユーザー企業にターゲットリストを提供する。経営企画室の宍倉剛室長は、「ユーザー企業には分析ツールを使いこなせる人材がいないので、当社が代行してデータ分析を行い、活用法を提案する」と、事業モデルの概要を述べる。
宍倉室長は、「このところ、大手企業の新規事業開発部門から、『ビッグデータを活用したいのだが……』というような、もやっとしたオーダーが増えている。こうした問い合わせから、企業トップの意識がデータ活用に向いてきていることを肌で感じる」という。ブレインパッドは、増えつつある案件に対応できるよう、エキスパート人材の強化に取り組むほか、同社の専門家がユーザー企業の担当者に必要な知識を移植する活動を推進している。
●研究会を立ち上げる ブレインパッドは、EMCジャパンの「Greenplum」を自社に導入して、データ解析のツールとして活用している。今後、EMCジャパンをはじめ、メーカーと協業するかたちで、データ解析の事業を伸ばす。「大手メーカーにクラウド環境を提供してもらい、当社がメーカーに分析・活用のノウハウを提供する」(宍倉室長)と、協業によって必要な部分を補い合うビジネス展開のパターンを構想している。
メーカーとの協業だけでなく、同業者との情報交換も深めていく。近々、メールマーケティング支援事業のディレクタス、ソーシャルメディアマーケティングに携わるメンバーズ、デジタル広告コンサルティングのデジタルインテリジェンスの3社と一緒に、ビッグデータによる商機とプライバシーリスクを考える研究会を立ち上げる予定だ。
宍倉室長は、「4社で意見を共有すれば、きっとおもしろい取り組みができるはず」と、研究会の活動に期待を寄せている。
記者の眼
概念だけが先行しがちな「ビッグデータ」。それを事業化するポイントは、ユーザー企業の目線で、実現しやすいソリューションを提案することだ。実際のところ、メーカーよりもユーザー企業の業務内容に詳しい販社こそが、ビッグデータのキープレーヤーになる。取材を通じて、ビッグデータを実ビジネスに結びつける販社の可能性を実感した。