【Volume 3】――Partner
海外進出支援
●海外ベンダーと組み成功事例も ウェブアプリケーション基盤製品「intra-mart」を展開するNTTデータグループのNTTデータイントラマートは、その基盤を利用して、海外展開を積極化している。「intra-mart」は、フレームワーク(基盤)上に用意したコンポーネント群を利用し、従来ゼロから開発していた複雑で大規模なウェブシステムを、既存システムと連携した統合ウェブフロントとして構築することができる。
現在、同社は国内シェア1位のシステム共通基盤型ワークフロー「intra-martワークフロー」を中核にして、中国を中心とした東アジアに事業を展開している。例えば、総合商社の住友商事は、SAP ERPベースの基幹システムのワークフロー標準基盤の開発に「intra-mart」を採用し、世界に点在する拠点の最適化を図った。NTTデータイントラマートの中山社長は、「当社は、2年前に海外展開を本格化し、海外売上高が当時の2.6倍に伸びた」と話す。同社全体の事業領域で海外進出企業向けや海外現地企業向けのソリューション展開が、業績の急速な成長を後押ししているのだ。
最近では、NTTデータ出身者などで構成する中国・香港に本社を構える大忠をハブとして、東アジアへの進出を強化している。その動きと並行して、内田洋行のウェブベースのERP「スーパーカクテルInnova」やクレオの給与システムなどを「intra-mart」上で動かすソリューションを揃え、海外進出企業向けに提供している。
大忠の大利秀幸・マネージングディレクターは「東アジアは欧米系のフレームワーク製品が市場を形成し、競争が激しい。しかし、日系企業をはじめ他の国の企業も、欧米系のシステムは高価で煩雑で使いにくい」と断言する。そして、欧米系システムの弱点を突き、NTTデータイントラマートの製品販売を拡大している。さらには、現地ITベンダーの製品に「intra-mart」を適用した成功例も出てきた。例えば、シンガポールの保険業向け製品を提供する現地ITベンダーにOEM供給し、導入数を増やしているという。

「intra-mart」の東アジア展開で手を組むNTTデータイントラマートの中山義人社長(左)と香港に拠点を置く大忠の大利秀幸・マネージングディレクター
●クラウドが世界標準化を後押し 日本IBMは、3月にグローバル進出総合支援パッケージ「IBM Global Ready Solution」を発表した。自社の世界拠点のITを標準化した経験値をパートナーなどとも共同で展開する。同社グローバル・ソリューションズの高橋和子・ビジネス開発理事は「まずは、企業の購買に関する標準化支援を本格化する」といい、目に見えてコスト削減ができる部分から支援を始めている。「IBM Global Ready Solution」は利用者1人あたりの年間使用料金を1万円から提供するクラウドサービスで、主に情報共有など同社の情報系システムを海外進出向け企業に体系化して提供する。海外拠点で個々に稼働するITを標準化する流れが加速すると判断しての戦略だ。
日本IBMが提供する「IBM Global Ready Solution」は、7分野14領域を体系化している。日本ならではの視点で日系企業が活用しやすい仕組みを取り入れている。例えば、グローバル購買では、テンプレート化されたツールを使ってコスト削減の可能性を診断し、業務変革に向けた購買組織・体制の立案やサプライヤー管理などを実行に移す支援を行い、場合によってはIBMやパートナーがアウトソーシングを手がける。すでに、パナソニックやリコーなど大企業が同社の仕組みを使った世界拠点の改革を実行に移している。
1990年頃から約20年間、日本IBMでグローバル戦略の推進経験者が実務と監修を行ってきた。その一人である高橋理事は「IBMの標準的なクラウドを使えば、世界のどの拠点でも同等のサービスで標準化できる。中堅・大企業に限らず、『グローバル標準クラウド』というメニューも用意しているので、中小企業でも少ない初期投資で世界展開ができる」と話す。すでに海外進出している企業だけでなく、新たに進出を検討する企業は増える一方だ。ここに一つの商機があるとみていいだろう。