沖縄クラウド事業が本格的に動き始めようとしている。早ければ2014年にも沖縄クラウドの中核を担う最新鋭データセンター(DC)が開業。新DCは沖縄県内の既存DCとも仮想的に連携するかたちで、“オール沖縄”体制でDCサービスを提供するための準備が着々と進んでいる。沖縄は国内DCの約7割が集中する首都圏から1500km以上離れており、災害時でも同時被災の可能性が限りなくゼロに近いことや、アジア市場の至近距離にあるという地の利を最大限に生かすことで、首都圏やアジアに向けたバックアップや国際情報ハブの役割を担う。(取材・文/安藤章司)
●大手ベンダーも沖縄を活用 沖縄クラウド事業とは、県内のデータセンター(DC)を仮想的に連携させて、あたかも一つのDCかのように利用するクラウド基盤のことである。

キヤノンITS
秋葉俊幸
ITサービスマネジメント事業部長 では、なぜ沖縄なのか──。一つは、国内DCの約7割が集中する首都圏から1500km余り離れており、震災などの災害が発生しても、同時被災する可能性がほぼゼロである点。首都圏のバックアップセンターとして申し分ない地理的条件である。ただ、これだけでは北海道や九州でも条件は同じ。そこで二つ目の利点として挙げられるのが、アジア成長市場のゲートウェイとしての沖縄の位置づけだ。沖縄と香港は国際通信回線「沖縄GIX」で結ばれており、これをフルに活用することで中国やASEANなど成長市場との国際情報ハブ拠点としてのポジションを固める意向だ。
沖縄の地の利に業界でいち早く目をつけたのが、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)だ。同社は2008年に沖縄でDCを運営するベンダーをグループに迎え入れ、首都圏と沖縄でバックアップする体制を構築した。2012年10月、首都圏に2300ラック相当の最新鋭DCを竣工させるタイミングで、沖縄も従来の約400ラック体制から200ラック追加して、計およそ600ラック体制へと強化している。

クオリサイトテクノロジーズ石垣長芳
IDC事業部
事業推進室長 キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)の秋葉俊幸・ITサービスマネジメント事業部長は、「同時被災が限りなくゼロに近い首都圏・沖縄の相互バックアップ体制は顧客から高い評価を得ている」と、手応えを語る。沖縄でDCを運営するキヤノンMJグループのクオリサイトテクノロジーズは、「沖縄DCはもともと金融特区に指定されている地域に建設されたもので、金融の基幹システムの運用に耐えられる設備」(石垣長芳IDC事業部事業推進室長)と、設備面でも首都圏と遜色がないと話す。同一グループ内で首都圏‐沖縄の相互バックアップ体制を明確に打ち出しているのは、主要SIerでは他に例がなく、「他社にはない先駆的な取り組み」(秋葉事業部長)と意気盛んだ。

クオリサイトテクノロジーズの名護市金融特区にあるオフィス兼DC棟の外観 ●公設民営で新DCの建設急ぐ 利点の三つ目として、沖縄は1998年の「マルチメディアアイランド構想」に始まるこれまでのおよそ15年間、IT基盤の整備やIT人材の育成に努めてきたことが挙げられる。県内のIT関連企業や団体に勤める直近の雇用者数は3万余りに達し、2004年の1万6000人に比べて倍増近い伸びを示している。当初は、比較的高度なITスキルを要求されないコールセンター業務からスタートし、その後、ソフトウェア開発やデジタルコンテンツ制作などの人材育成に力を入れてきた。ソフトウェアパークの「沖縄IT津梁パーク」も建設している。

沖縄県
仲里和之
情報産業振興課主査 沖縄県では、次のフェーズとして、より高いスキルが要求されるクラウド基盤の構築・運営や、この基盤を活用したクラウドサービスの開発、アジアの成長市場に向けたグローバルビジネス人材を手厚くしていくことで、地場の「情報サービス産業を振興していく」(沖縄県の仲里和之・情報産業振興課主査)ことを目指している。
クラウド基盤を支える沖縄のDC設備は、浦添地区に電力系DC、宜野座・名護地区に通信キャリア系、ITベンダー系のDCなどが分布している。
本紙の調べでは、ラック換算ベースで浦添地区に約1200ラック相当、宜野座・名護地区も約1200ラック相当の規模で分布しているものとみられる。ただし、いずれもここ1~2年の間に首都圏で相次いで竣工したクラウドネイティブ対応の第3世代DCに比べれば、1ラックあたりの標準電力供給が4kVA程度の第2世代寄りの古い設備も混じっているのが実態だ。
沖縄県は、東日本震災以降、急速にニーズが高まる首都圏のバックアップ需要や、アジア成長市場向けの国際情報ハブ拠点を担うには、県内の既存の設備では心もとないと判断した。そこで、浦添地区と宜野座・名護地区のほぼ中間に位置し、沖縄IT津梁パークからもほど近いうるま(兼箇段)地区にクラウドネイティブ対応の第3世代DCの建設準備を進める(図1参照)。建設費は50億円近くとみられる。公設民営の方式で、早ければ2014年中の開業を目指す。大きさはラック換算で300ラック相当、1ラックあたりの標準電力供給は既存DCよりも多い6~8kVAを想定している。
以下、沖縄主要ITベンダーの取り組みをレポートする。
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