OSを移行できないユーザーもいる!?
最悪の場合は延命策も
●DaaSでシステムを区分け 
新日鉄住金
ソリューションズ
新堀徹
グループリーダー 前述の通り、「XP」でしか動かない業務アプリを抱えているために、サポート終了までに移行できないユーザーが存在する。こうしたユーザーに対して、OSの延命策を提案するのが新日鉄住金ソリューションズの仮想デスクトップサービス「DaaS@absonne」だ。ITインフラソリューション事業本部営業本部営業企画部ワークスタイルイノベーションSOL企画の新堀徹グループリーダーは、「OSの移行で問題となるのは、セキュリティパッチが提供されなくなること。セキュリティ上の安全性をある程度確保できれば、延命というかたちで使うことができる」と説明する。
「XP」のクライアントPCには、メールや、ブラウザ、Office、「XP」だけでしか動かない業務アプリなどがある。このなかで、ネットワークと関わるメール、ブラウザ、Officeを最新のOSに移行し、業務アプリだけ仮想デスクトップ上に「XP」を構築して導入する。このようにシステムを切り分けることで、セキュリティ上の安全性を確保するわけだ。新堀グループリーダーは、「基本的には、費用対効果が高いサービスだ。大企業では、すべてのシステムを切り替えるのに数億円単位のコストがかかるが、仮想デスクトップならば数千万円程度で済む」と説明する。しかし、「『XP』からの乗り換えという観点でいえば、100%の安全性を担保できるわけではなく、あくまで延命」とつけ加えた。
●独自にサポートを延長 
フォティーンフォティ
技術研究所
川原一郎
マーケティング部長 「XP」の延命策として、フォティーンフォティ技術研究所(FFRI)では、自社開発のセキュリティソフト「FFR yarai」で、「XP」のサポートを17年12月31日まで延長する。事業推進部本部の川原一郎マーケティング部長は、「パターンファイルだけでなく、既知・未知のぜい弱性攻撃の発動を防止する当社独自の『ZDPエンジン』によって、約99%のぜい弱性をカバーすることができる」と説明する。FFRIでは、過去の「Windows 2000」サポート終了時にも、同様の取り組みを行っており、ユーザーからの需要が高かったことから、今回もサポート延長を表明している。
しかし、川原部長は、「当社は、ユーザーが最適な方法で移行を推進できるように、選択肢を与えているだけにすぎない。これを利用すれば、『OS』の移行をしなくていいというものではなく、あくまでも延命策。どうしても移行できないユーザーに最終案として活用してもらいたい」と念を押した。
記者の眼
サポート切れに対する課題で、最も解決しにくいのは、「XP」依存の業務アプリがあるのでサポート終了後も使い続けざるを得ないケースだ。セキュリティ上のリスクを背負いながらも、こうした業務アプリを利用し続ける理由は、新しいOSに向けたシステムの改修・開発に時間がかかり、サポート終了までに間に合わないからだ。未完成のシステムに移行するわけにもいかないので、セキュリティの安全性とシステムの安定性のどちらかを取るかという選択肢を迫られている。
これに対して、ITベンダー各社は、ユーザーが最適な移行を推進できるよう選択肢を柔軟に用意している。極力避けたいが、延命策もある。サポート切れに間に合わないにしても、複数の延命策を利用して、多層防御できる体制を整えなければならない。その場合には、自社だけでなく、取引先や顧客も危険にさらしてしまうことを強く認識しなければならない。
また、こうしたサポート切れは、「XP」に限った話ではなく、今後のOSでも続いていく。そのことを考えれば、ユーザー企業は、今回のOS刷新の段階から、次のサポート切れに向けた計画を立てておくことが必要だ。そして、ITベンダーには、計画立案・実行への支援が求められている。