【ネットワーク】
リプレース需要でビジネスチャンス 中堅市場で新規顧客開拓の動きも
IDC Japanによれば、国内ネットワーク機器市場は、2012年にルータが1187億3700万円(前年比0.6%増)、イーサネットスイッチが1786億6700万円(13.0%増)、企業向け無線LANが208億7100万円(41.4%増)と、いずれも2011年に比べて増加している。とくに、企業向け無線LANはリプレースの高まりによって、ルータやイーサネットスイッチも前年比10%以上のプラス成長になっているという。ネットワーク機器の販売は顕著に推移していることをみれば、ネットワークインフラのインテグレーションに強いSIerにとってはビジネスチャンスが到来しているといえそうだ。
このような状況を踏まえて、新しい市場に参入しようと力を注ぐベンダーがいる。ネットワーク機器のディストリビュータであるネットワンパートナーズは、シスコシステムズの製品を中心に中堅企業を新規顧客として開拓することに取り組んでいる。主力となる製品は「Cisco Catalyst 3850」だ。
「Cisco Catalyst 3850」は、有線ネットワークと無線ネットワークを物理的に単一のインフラストラクチャに統合する機能を装備。アクセスの一本化によって、パソコンだけでなくスマートフォンなどのモバイル端末からも社内ネットワークにアクセスすることができる。タブレット端末を利用する企業が増えている状況に対応しているわけだ。
ネットワンパートナーズでは、中堅クラスの企業に強いSIerとの商談を進めており、今年中に販売体制を整備して、売上高を現状の155億円規模から2015年度(16年3月期)までに250億円まで引き上げる計画を立てている。ディストリビュータでありながら、販社のSIerを技術的に支援することができる。これが中堅企業という新しい市場に参入するうえでの武器になる。

ネットワンパートナーズは中堅企業を新規顧客として開拓していく【垂直統合型システム】
クラウド構築の基盤として注目 中堅市場でビジネス拡大の可能性
クラウド構築の基盤として注目を集めているのが、サーバーやネットワーク機器、OS、ミドルウェアなどを統合した垂直統合型システムだ。海外と国内の大手コンピュータメーカーが次々と製品を市場に投入している。システム構築のノウハウも盛り込んでおり、インテグレーションを施さなくてもユーザー企業に提供することができるので、SIerにとってはシステム構築という主力ビジネスで力を発揮できないという見方もあるが、インテグレーションを手がけないぶん、自社アプリを組み合わせて提供するなど、新しいビジネスチャンスが生まれる可能性がある。
垂直統合型システムが注目を集めるようになったのは、日本IBMが昨年5月に「IBM PureSystems」を発表したことがきっかけとなった。インフラストラクチャの「PureFlex System」を発売し、ミドルウェアを統合したプラットフォーム「PureApplication System」も市場に投入。これに対して、垂直統合型システムの「Exaシリーズ」を展開してきた日本オラクルが営業体制を強化したほか、NECや富士通、日立製作所など国産メーカーも製品を発売することとなった。この動きによって、新しい市場が生まれたのだ。
基本的には、大手メーカーが市場に参入しているが、米シスコシステムズや米EMC、米ヴイエムウェア、米インテルなどの共同出資によって2009年に設立されたベンチャー企業の米VCEも最近になって騒がれ始めている。日本法人は2012年の設立で、その年の秋にはネットワンパートナーズとネットワールドを販売代理店として獲得した。同社の製品「Vblock」シリーズは、ネットワーク、ストレージ、仮想化、CPUなどと、共同出資したメーカーが提供している機器のすぐれた点を組み合わせて開発していることを強みとしている。8月末には中堅企業向けの「Vblock 200」を発売。垂直統合型システムを導入するのは大企業がメインだが、この製品によって新しいユーザー企業層の開拓も見込まれる。

VCE製の垂直統合型システム「Vblock 200」記者の眼
クラウドサービスの台頭によって、社内にシステムを構築しないユーザー企業が増えつつあり、オンプレミス型のシステム案件が縮小していることは事実だ。しかし、企業の社員が活用するクライアント端末の需要はなくならず、またオンプレミス型では、大企業で構築しているシステムをSMBも求めるようになってきており、ニーズに広がりがみられる。単にハードウェアだけを売るというビジネスモデルは確かに寿命を迎えたといえるが、自社の強みを生かしたサービスを組み合わせたり、新しい市場への参入などで需要を掘り起こしたりできる可能性はまだまだある。売り方次第では、ハードウェアが大きなビジネスチャンスを生む起爆剤になる。ユーザー企業のITへの投資意欲が徐々にではあるが高まりつつあるなか、改めてハードウェアありきのビジネスを手がけることも、ユーザー企業を増やしたり収益を確保したりするための一つの道といえそうだ。