EOS特需を将来に生かす
リプレースは宝の山だ!
Windows XPのリプレースは、EOS直前の急激な需要増にも、なんとか対応して乗り切ることができた。ところが、Windows Server 2003となると、対応できる技術者も限られてくる。EOS直前にリプレース案件が急増すれば、ITベンダーがリプレース案件を断らざるを得ないケースも出てくるに違いない。しかし、これはチャンスでもある。対応能力に自信のあるITベンダーは、Windows Server 2003のEOSを単なる特需として終わらせるのではなく、将来への礎とするチャンスと捉え取り組んでいる。
大塚商会
仮想化でハードから切り離す

香山謙治
係長 Windows Server 2003のリプレースでは、国内トップクラスの案件数をこなしてきている大塚商会。同社が推進するのは、Windows Server 2012へのアップグレード。それも、今回のリプレースを機にHyper-Vなどを利用した仮想化を推奨するという、オーソドックスなスタンスである。
「今回のリプレースを機に、ユーザー企業にとって、よりメリットのある環境を提供したい。その一つが、ハード依存からの脱却、つまり仮想化だ。これによって、ハードのリース期間にIT戦略が左右されることがなくなる」と香山謙治・マーケティング本部 MS Webソリューション課係長は語る。実際、Windows Server 2003をリプレースできないユーザー企業のなかには、ハードのリース期間が縛りになっているケースもあるという。仮想化はその問題を解消するので、将来も続くサーバーOSのEOSに対応しやすくなる。Hyper-Vによる仮想化には、多くのメリットがある。例えば、サーバーをまるごとバックアップできるので、障害発生時の復旧が早い。BCP対策やクラウドへの移行も簡単にできる。
当然ながらセキュリティのリスクは説明するが、新しい環境にリプレースすることのメリットを強調することで、大塚商会はユーザー企業の信頼を勝ち取ろうとしている。「Windows XPのリプレースでは、ワークスタイルの変革を提案したことで、ノートPCの比率が高まった。Windows Server 2003も、時代のニーズに応えるさまざまな機能を搭載している。そこをアピールしていきたい」(香山係長)。
大塚商会の感触としては、リプレース案件の動きはまだ鈍いという。「Windows XPは面(台数)が多い。サーバーは、管理する人が少ない。当事者が少ないので、リプレースに向けたムードが盛り上がりにくい」と香山係長。EOSに向けて、リプレース案件が急増することを想定し、体制を整えている。
富士ソフト
2日あればリプレース可能
「問い合わせは旺盛だが、リプレース作業の8割は来期(4月以降)。サーバーとクライアント端末を年次で分けてリプレースする企業が多く、今期はWindows XPでIT予算を使ったので、現時点では控えている傾向にある」と、高野祐一・MS事業部プロモーション部部長は現状を分析している。
ユーザー企業は、Windows XPのリプレースを経験していることもあって、Windows Server 2003のEOSについても認知はしているという。ところが、「リプレースに時間がかかることをわかっていない。なんとかなると思っている」と高野部長は感じている。結果、リプレース案件はEOSの間際になって急増することは想像に難くない状況にある。
富士ソフトは、EOS間際で混乱状態に陥っても、リプレースを短期間(最短2日)で実現する「らくらくアップグレード for Windows Server 2003」で乗り切る考えだ。同社がターゲットとしているのは、ミッションクリティカルな基幹システムをはじめとする複雑なアプリケーション。パッケージシステムはそのパッケージベンダーで、ファイルサーバーなどはユーザー企業の担当者で対応できるという方針である。
らくらくアップグレードは、OS間の互換性をOS自身の機能で吸収することによってリプレースを実現する。例えば、Windows Server 2003からWindows Server 2012にリプレースする場合、Windows Server 2012の機能でWindows Server 2003と同等の環境を用意し、そこに既存環境を載せるという対応だ。そのため、多くの場合は既存のシステムを改修することなく、リプレースを実現する。「なかにはソースコードの改修が必要な場合もあるが、チェックツールで事前に修正が必要な部分を特定できる」と、片白健太・MS事業部らくらくプロジェクトプロジェクトマネージャーは語る。アプリケーションのリプレースについても診断できるチェックツールは、無償で提供している。
最短2日でリプレースを実現するというらくらくアップグレード。この経験を生かし、今後はクラウドなどへの移行も推進していく考えだ。

高野祐一部長(右)と片白健太プロジェクトマネージャー
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