3.協業や新体制で新たな挑戦
大阪IT市場を盛り上げる
協会・団体の動き
大阪を拠点とする協会・団体では、会員企業による協業が活発化しているだけでなく、新体制によって新しい取り組みを進めようとする動きが出ている。大きく成長しているわけではない大阪のIT市場では、新たな挑戦をしていかなければ生き残れないからだ。ここでは、中小SIerの会員が多い日本情報技術取引所(JIET)関西本部と、関西で活躍するITコーディネータを会員とするITC近畿会の取り組みを紹介する。あくまでも、大阪でビジネスチャンスを見出して、大阪のIT市場を盛り上げていこうという動きだ。
●JIET関西本部
案件はあるが人材が少ない JIET関西本部では、少人数での情報交換会を頻繁に実施しており、出席者が「獲得できた」もしくは「獲得できそうな」案件を持ち込んで一緒にビジネスを進めていくという流れが生まれている。
会では、それぞれ出席者がもつ案件の内容を説明。大半は、あと一歩で獲得できる案件が多い。というのも、人材が足りないことから案件を受注することができないのだ。そこで、出席者は案件を説明した後に「COBOLがわかるSEが必要」「上級SEが欲しい」「要件定義ができる人材を」などと口にする。ほかの出席者で人材が余っていれば案件が獲得できる可能性が高まるというわけだ。
2月に開催された、ある情報交換会では汎用機関連やネットワーク構築、Androidアプリやゲーム関連の開発など、さまざまな案件が出ていた。数は10件ほどだった。実際に協業するかどうかは、会が終わった後にSEを出す側と出される側の意見をすり合わせて、両者が納得すれば協議が完了する。
東京でも、SEの人材は決して潤沢とはいえない。そのため、東京から大阪に回ってくる案件もあるようだ。そのなかで、中小SIerがパートナーシップを深めて案件を確実に獲得したいという姿勢が大阪にはみられる。

JIET関西本部では頻繁に情報交換会を実施している ●ITC近畿会
カンファレンスで結束力を固める ITC近畿会は昨年6月、松下永昌氏が理事長に就任、谷口擴朗氏が副理事長兼事務局長、生田勝氏が事業委員長、左川睦子氏が広報委員長などに就く体制となった。新体制となって、最初の大きな取り組みは、大阪でのIT経営カンファレンスの開催だ。2014年11月に開催を予定して、当初は地方銀行(地銀)と組んで参加者を募るつもりだったが、急きょ、地銀の頭取が交代したことで協力を得ての開催ができなくなってしまった。それが昨年8月のことだ。そこで、手弁当で準備を進め、何とか11月26日に開催することを実現。地銀の協力があれば、中小企業を中心にユーザー企業の参加が多かったといえるが、実際にはITコーディネータがほとんど。中小企業にIT化の重要性を訴えたかったという。ただ、「ITコーディネータが参加したことで、参加者がユーザー企業に対してITシステムの強化を提案できる体制は整った」と、谷口副理事長は前向きに捉える。
今後、ITC近畿会では、引き続き金融機関と組んで中小企業にIT化を浸透させる体制を整えていく。松下理事長は、「攻めのIT経営を中小企業に訴えていきたい」との考えを示している。

(左から)ITC近畿会の松下永昌理事長、谷口擴朗・副理事長兼事務局長、生田勝・事業委員長、左川睦子・広報委員長
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