2015年7月15日(日本時間)の「Windows Server 2003 EOS(End of Support、サポート終了)」から3か月以上が経過した。まだ記憶に新しい昨年4月の「Windows XP EOS」と同様に、リプレース特需が見込まれていたが、実際、ビジネスの成果はどうだったのか。SIerや販社に話を聞いた。(取材・文/前田幸慧)
日本マイクロソフトに聞く
リプレースは成功したのか
Windows Server 2003のサポート終了によって最も危惧しなければならないのは、セキュリティの修正プログラムが提供されずに、ぜい弱性のリスクを抱えてしまうことにある。そのため、サポート終了に向けてサーバーのリプレースを促したわけだが、実際はどうだったのか。日本マイクロソフトを取材した。
●サポート終了時点で約6万台が残る 日本マイクロソフトでは、「(ユーザー企業が)セキュリティパッチを入手できない期間をできるだけゼロにすることが最も重要」(藤本浩司・クラウド&エンタープライズビジネス本部部長)であるとして、ユーザーができるだけ早く「サポート終了の1年半から1年前までにリプレースを済ませる」(同)ために動いた。IDC Japanの調査では、一昨年12月時点でWindows Server 2003を搭載したサーバーが約36万台、昨年12月時点では約21万台が国内市場にあったという。つまり、一昨年末から昨年末にかけて約15万台をリプレースしたことになる。この勢いとサポート終了直前の駆け込み需要を加味し、日本マイクロソフトは、サポートが終了する今年7月15日時点のWindows Server 2003の残り台数を5万台と目標に定めていた。ところが、複数の要因が重なった末、実際は「約6万台が残った」(同)という。
Windows Server 2003のリプレースにあたっては、昨年4月にマイクロソフトのクライアントOSのWindows XPがサポート終了したときと同様に「リプレース特需」の発生が見込まれていた。では、実際はどうだったのか。Windows Server 2003のサポート終了に伴う四半期ベースで売り上げの傾向をみると、今年1~3月期を起点に、4~6月期にかけて伸び始め、7月には20%超の売上増、そのため、7~9月期以降も同水準を保ち続けることを見込んでいる。Windows Server 2003では、サーバーの仮想化やクラウドへの移行によるサーバー台数の減少もあって、Windows Server 2000と比較すると売上額は劣るものの、サポート終了前後に伸び率が高まっているとみて取れる。また、売り上げの推移をみるとWindows Server 2000と比べてWindows Server 2003のほうが10~12月期、1~3月期にかけての売り上げが高い。このことから、リプレースの前倒しについてはある程度の成果があったといえるだろう。
●予算取りが難しかったケースも 結果として目標に掲げた5万台までは、1万台程度は達成しなかったことになる。要因の一つには、予算確保の厳しさが挙げられる。
Windows Server 2000やWindows XPのサポート終了のときに起こったリプレース需要を想定して、業界では多くのユーザー企業が、4月以降の今年度予算を使ってリプレースを行うと想定していた。売り上げの傾向をみると4月以降の伸びが顕著であり、日本マイクロソフトが1年を通して開催したセミナーでも、今年4月末から5月上旬にかけて「超満員だった」(藤本部長)そうだ。しかし、サポート終了とは別の事象として、ユーザー企業のなかには、来年1月に運用開始を控える「マイナンバー制度」に対応するためのシステム導入に予算を確保したケースもみられた。つまり、今年度に予算を取ることができないという理由で、Windows Server 2003のリプレースを行わなかったユーザー企業がいたことになる。実際、残った約6万台のうち、半数近くのユーザー企業が予算取りが難しかったという。
ほかにも、Windows Server 2003を購入したときのSIerがいなくなって、「ひとまず延命措置をとった」、あるいは「自分たちは大丈夫」という認識のユーザー企業もいて、想定より移行が難航したというわけだ。
とくに、SMB(中堅・中小企業)の移行の遅れが目立ったため、日本マイクロソフトでは、「SMBのなかでも、どの地方が多く残っているのか」という切り口から、全国8地域に分けてWindows Server全体のなかのWindows Server 2003の稼働率を調査した。その結果、首都圏を含む関東と比べて、地方にある企業でWindows Server 2003の稼働率が高く、そのなかでも、四国や東北などに多く残っていることがわかった。
そこで、全国で「Windows Server 2003 移行」キャンペーンを展開。地方の新聞広告や情報番組での告知など、「SMBの社長や総務部門がみていそうなもの」をターゲットに、地方の企業にもWindows Server 2003を使い続けることの危険性について、メッセージが行きわたるような施策を講じた。
また、経済産業省や商工会議所と連携し、全国でセミナーを開催した。ほかにも、SMBを対象としたディスカウントや融資を通して、コスト面の負担もサポートするなど、SMBに対して積極的にWindows Server 2003の移行促進を図った。
●ユーザー企業をどう動かすかがカギ 日本マイクロソフトは、最終的にWindows Server 2003の稼働台数を「残り1万台以下にしていきたい」(藤本部長)との目標を掲げている。ネットワークから分離された閉域網のなかで稼働しており、延長サポート契約を結んでいるものを除いて、「極力ゼロに近づくように動いていく」(同)。しかし、1万台まで減らすには、まだまだ課題が残っている。サポート終了まで時間がなかったために、Hyper-Vなどの仮想化基盤上にWindows Server 2003を置いて、とりあえず仮想化に逃げているユーザー企業や、延命措置を採っているユーザー企業がいる。このようなユーザー企業に対して、引き続きメッセージを発信していくという。また、パートナー企業がまだアプローチできていないユーザー企業もいる。しかし、サポートがすでに終了している今となっては、Windows Server 2003のリプレースを中心とした提案は難しくなってくるだろう。そこで、来年4月12日にサポートが終了するSQL Server 2005とあわせて、Windows Server 2003の使用の有無などを確認し、OSからアプリケーションまでを含めた提案へとシフトしていく。日本マイクロソフトでは、「ユーザー企業をどう動かすかがカギを握る」(藤本部長)としている。
売り上げとしては一定の成果があったといえるWindows Server 2003 EOSビジネス。ユーザー企業に対するリプレース促進が順調だったとはいえない状況だからこそ、まだまだビジネスチャンスが残っているといえそうだ。SIerやディストリビュータにとって、Windows Server 2003 EOSビジネスの手ごたえはどうだったのか、また、今後どのようなビジネスを手がけていくのか。次ページから紹介していく。
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