NEC
RPAで生産性を高める好循環をつくる
製造や物流の現場ではRPA(ロボティック・プロセスオートメーション)を導入して作業を自動化し、生産性を高める動きが進んでいる。NECは今年7月からRPAソリューション「NEC Software Robot Solution」の販売を開始した。NECの得意分野でもある画面認識技術で、自動化したい作業に必要なマウスやキーボードの操作を画面上で登録・実行することができる。直観的な操作で、業務を自動化できるので、情報システム部門だけではなく、営業や経理など、実際の業務担当者まで幅広く登録ができる点が特徴だ。
左から折戸俊彦主任、服部佳正マネージャー、辻原成美氏
服部佳正・クラウドプラットフォーム事業部 クラウド運用管理グループマネージャーは、「RPAはAIと混同されがちだが、そもそも特別な技術がないと扱うことができない。NECのRPAは業務部門の人にも使いこなせるツールなので、適用の幅が広がる」と話す。
現在は製造業、金融業のほか、伝票管理や財務管理などバックオフィス業務に導入されている。ライセンス料は、買取版のほか、3か月、6か月、12か月の期間ライセンスを用意。年度末など繁忙期だけの導入も可能だ。料金は3か月ライセンスで36万円。「1か月で12万円。派遣社員一人の人件費より、コストを抑えることができる」と、折戸俊彦 ・クラウドプラットフォーム事業部主任はコストメリットを説明する。
RPAは既存のシステムに手を入れることなく導入できる点がメリットだ。最近では「大企業だけではなく、事務作業が多い中小企業も導入を検討している」(服部マネージャー)という。RPA市場は成長期に差し掛かったばかり。今後5年で10倍に拡大すると予測する調査会社もあり、期待が寄せられる分野だ。
人口減少や、それに伴う就業者数の減少が社会的な課題となるなか、働き手が足りなくなってくと、人件費が高騰する時代がやってくる。
そうした時代には、RPAやAIなどのソフトウェアのロボットに仕事を肩代わりしてもらうとともに、貴重な働き手はより生産性の高い仕事にシフトさせる必要性が増す。例えば伝票の入力作業のような単純な定型業務は従業員のモチベーションを低下を招きやすく、こうした状況をなくしていくことが、従業員の満足度や労働意欲を高め、労働時間の短縮や生産性を高める好循環をつくりだすスタートラインといえそうだ。
キヤノンマーケティングジャパン
AIで手書き文字のデータ入力を自動化
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、働き方改革ITビジネスの柱の一つに「ディープラーニングを駆使した手書き文字のデジタル化」を掲げている。
紙文書をデジタル化するOCR関連のソフト/ハードウェア商材を長年にわたって開発してきたキヤノングループの強みと、近年、技術革新が著しいAI技術を組み合わせることで、これまで困難だった手書き文字対応のOCRシステムを実現している。ディープラーニングのエンジンは、AIベンダーのCogent Labs(コージェントラボ)製を採用した。
ネットでの手続きが増えたとはいえ、店舗などの現場で申し込み手続きをするときの手書きの利便性は高いものがある。しかし、OCRに強いキヤノングループでさえ、従来の技術では手書き文字の実運用上の認識率は50%程度と低い。バックエンドで人手によって入力しなければならず、就業人口の減少の影響や、人件費の高騰が重くのしかかることがユーザーを悩ませていた。
キヤノンMJでは、ディープラーニングが画像認識に強い点に早くから着目。手書き文字を手入力しなければならない課題解決に向けて、OCRと相性のよいエンジンを探していた。汎用的な画像認識エンジンは多いものの、手書き文字に特化したエンジンは少なく、今回、ようやくCogent Labsの手書き文字認識エンジン「Tegaki」を採用を決定。実運用上の認識率84~94%を実現している。
西尾光一課長(右)と岡田直道主任
同手書きOCR製品を担当する西尾光一・ドキュメントソリューション企画課課長は、「ディープラーニングの学習効果によって、実運用上95%超も夢ではない」と手応えを感じている。
OCRでは、大きく分けて「活字OCR」「英数限定の手書きOCR」「手書きOCR」の三つに分けられる。「活字OCR」「英数限定の手書きOCR」はすでに実運用上で問題ない高い精度を発揮しているが、漢字かな混じりの「手書きOCR」のハードルは高かった。「理論値ではそこそこの精度を出せても、ディープラーニングなしでは実運用上の精度が高まらない」(岡田直道・金融SS第四グループ主任)課題を克服した格好だ。
AIやロボットに任せられるところは、できるだけ早く任せて、人でしかできない仕事や、価値を創り出すクリエイティブな領域に人的リソースを割り当てられるよう支援するのが働き方改革ITビジネスの重要な要素となる。キヤノンMJでは、まず自社が強みとする領域で、こうした流れを後押しできるよう取り組んでいく方針である。