Special Feature
仮想化はサーバーだけじゃない SDSの爆発的普及が始まる
2017/11/22 09:00
週刊BCN 2017年11月13日vol.1702掲載
ヴイエムウェア
ハイパーバイザーに統合 管理のしやすさに定評
コンピュータ仮想化市場において高いシェアを誇るヴイエムウェア。なかでもSDS普及の重要なセグメントであるHCIの分野では、トップベンダーといえる。同社のSDS製品第一弾は、2014年3月に正式リリースした「VMware Virtual SAN」だ。その後、名称を変更し、現在は「VMware vSAN」となっている。
野田裕二・コーポレートSE部 システムエンジニアは、「vSANはすごい速さで採用されている。ワールドワイドでは17年10月末時点で1万社に採用され、6割以上の顧客が基幹業務に使用している」と話す。
従来型ストレージの差異化ポイントについて野田氏は、「従来型ストレージにはサーバーとやり取りをするためのコントローラがあり、そこで処理できるI/Oの量は決まっている。そのため、増設できるストレージ容量に制限が生じる。エントリーモデルの場合は2~3台なので、それ以上ストレージ容量を増やしたい場合は、大規模モデルに買い替えをしないといけない。一方、HCIはノードごとにコントローラがあるので、ノードを増やすごとにコントローラも増える。そのため、より多くの台数を拡張できる」と説明する。
vSANの特徴は、マルチベンダー構成が可能な点だ。SSDを活用してノード単体の性能を引き上げているため、各ノードに最低でも1台のSSDが必要になるが、その条件を満たした機器であればメーカー問わずに採用することができる。
もう一つ、大きな差異化ポイントが、サーバー仮想化プラットフォーム「VMware vSphere」のハイパーバイザーにvSANを組み込んでいる点だ。なお、ライセンス料はvSphereとは別に発生する。
ハイパーバイザーとSDSの両方をもっているヴイエムウェアだからこそ、統合して提供できるが、他社は別々で用意し、分離した形で納品する。ハイパーバイザーとSDSが分離することによるデメリットとして、「ハイパーバイザーとSDSは直接やり取りができないため、コントローラVMを中継する必要がある。そのため、経路が複雑になるし、コントローラVMに異常があった場合、ストレージの動作が不安定になる。vSANをvSphereに組み込むことで、コントローラVMが不要になり、データが最短距離でHDD、SSDに届く。このシンプルさが強み」と野田氏は説明する。
また、サーバーの管理ツールで、ストレージの管理ができることも優位点だ。「ストレージに異常が発生しない限り、ストレージ管理ツールに触れない人がほとんど。つまり、管理者にとってあまり馴じみがない。しかし、トラブルがあった場合、即座に対応する必要があるので、ストレージの管理・運用を外注する企業が多い。vSANはサーバー運用管理ソフト『vCenter Server』で管理する。慣れ親しんだサーバー管理ツールを使ってストレージまで管理できる点を評価してくださるお客様は多い」と野田氏は語る。
増設や管理がしやすいため、自社で運用・管理をする企業が増えている。それにより運用管理費を大幅に抑えることができるという。
Dell EMC
TCOの大幅削減を実現 SANからHCIまで柔軟な構成が可能
Dell EMCは数年前からSDS製品のポートフォリオを拡充してきた。用途別では、ブロック(SAN)ストレージ、ファイルストレージ、オブジェクトストレージ、ストリームデータストレージを揃えているが、なかでも注力しているのが市場の大きいブロックストレージだ。また、SDSの単体販売だけではなく、2016年に統合したDellのプラットフォームと組み合わせ、HCIからラックまで、さまざまなハードウェアにSDSを搭載したアプライアンス製品も提供している。なお、HCI製品として、他社のSDSである「VMware vSAN」や「Microsoft S2D(Storage Spaces Direct)」「Nutanix NDFS」に最適化した構成のPowerEdgeサーバーも提供している。Dell EMCの注力製品はScaleIOだ。x86サーバーにインストールすればストレージとして稼働するため、特殊なOSは必要ない。HDDやSSD、NVMeなど多様なローカルストレージをまたいでプール化できる。また、自動的にリソースを割り当てバランスを取り、アプリケーションの要求に従い、QoSの設定ができる。対応OSはESXi/Hyper-V/Linux/Windows。

左からEMCジャパンの林 孝浩ソフトウェア ディファインドストレージ(SDS)事業担当ディレクター、
中村雅史SDS事業シニアシステムエンジニア
中村雅史・SDS事業 シニアシステムエンジニアは、「OSごとに個別に島をつくるのではなく、混在して一つのストレージプールをつくるので、ストレージの容量効率がよくなる」と説明する。
構成に関しては、伝統的なサーバーとストレージの2階層構成や、1階層構成、2層・1層の混在環境に対応し、柔軟性がある。例えば、2階層構成では、コンピュートとストレージに明確に分けることができる。ストレージはすべての業務で共有し、コンピュートのリソースだけ、業務単位で分ける。これにより、一つの業務でコンピュートに負荷が集中してもほかの業務に影響が出ることがない。また、中村シニアシステムエンジニアは、「大規模な企業では、サーバー管理者とストレージ管理者が分かれているケースがある。そうした場合に管理体系を変えずにすむというメリットもある」と話す。
このほか、ノードの追加・削除が簡単で、追加・削除した際はデータを自動でリバランスする。障害が発生した場合は自動でミラーのリビルドを実行するため、データ移行が不要だ。
今後の展開について林孝浩・ソフトウェアディファインドストレージ(SDS)事業担当ディレクターは「SDSはまだこれからの製品。今はHCIが先行している」と話す。SDSの普及を促進するため、同社ではTCO(総保有コスト)を削減できることを強調している。林担当ディレクターは、「SDSを導入することで、ハードウェアコストを大幅に削減できると誤解しているお客様が多い。削減すべきは初期導入コストではなく運用・管理費だ。ハードウェアのコストを『1』とすると、メンテナンス、構築、保証などの運用・管理のコストは『7』にあたる。運用・管理コストを下げる方が効率がいい」と話す。
「メインフレームからUNIX、x86サーバー、Linuxへ。価格性能比がよくグローバル標準のものがどんどん進化している。ネットワークもオープンネットワーキングのようなものに変わっていく。ストレージも同様だ。さらに性能面では、これまでのストレージでは出せなかったパフォーマンスが、ソフトウェアによって引き出せるようになってきた。今後は販売パートナーに向けてSDSの製品のレジテンスを上げてもらうために共同販売を強化していく」と林担当ディレクターは意気込む。
ネットアップ
ハイブリッドクラウド時代に 多様な提供形態を実現
データはオンプレミス、サーバー、クラウドに散在している。そのため、オンプレミスとクラウドとの相互連携ができるよう取り組んでいるのがネットアップだ。
篠木隆一郎
マーケティング本部
戦略企画推進室
室長
同社では、ハードウェアにストレージOS、SDSを搭載した「ハードウェアアプライアンス」、SDSのみで提供する「仮想ストレージアプライアンス」、クラウド上で動くストレージOSを提供する「クラウド環境アプライアンス」の三つの販売形態を用意した。
ストレージOSのラインアップは、仮想環境のサーバー統合に適した「ONTAP」、大規模な非構造化データを格納・管理できるオブジェクトストレージの「StorageGRID Webscale」、バックアップ・アーカイブ用の「AltaVault」、次世代データセンター向けの「SolidFire」の四つを揃えた。それぞれ、SDSとクラウド環境アプライアンスを用意する。このほか、高機能なエントリーストレージの「SANtricity」もあるが、「スピードを速くするために、ハードウェアに依存している」(篠木室長)ためハードウェアアプライアンスのみの提供となる。
同社の注力製品はONTAPとSolidFireだ。クラウド、オンプレミス間の連携だけではなく、この二つの注力製品間の連携機能をこの秋に追加した。従来は、同シリーズ間でのみ、スマップミラーを使ったデータのミラーリングができた。新たにONTAPとSolidFire間でのミラーリング機能を追加し、お互いのデータを同じ状態に維持することができるようになった。
また、6月に発表した同社初のHCI製品「NetApp HCI」は、SolidFireのELEMENT OSをベースにしている。ストレージ部分を担うオールフラッシュノードとハイパーバイザーを担うコンピューティングノードで構成しており、ニーズにあわせてストレージとコンピューティングをそれぞれ個別に拡張できる。また「コンピューティングノードにONTAPを乗せることでNASとして使うことができる」(篠木室長)という。
この秋にはさらにラインアップが拡充するネットアップ。篠木室長は、「パートナー様と連携しながら、お客様の多様な利用の仕方に合わせて提案していく」と語る。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ
他社のSDSを採用 サポートは一元的に提供
パートナーのSDSと自社のプラットフォームを組み合わせて販売しているのが、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズだ。検証を自社で実施するほか、米国や台湾などの開発チームからも情報を得て、ハードウェアだけではなくソフトウェアのサポートも一元的に提供している。
早川哲郎
アライアンス&
マーケティング本部
ソリューション開発部
部長
また、顧客のニーズに合わせて、自社のソリューションを乗せて付加価値をつけた提案もしている。「VMwareはネットワークの機能を搭載しているが、ニュータニックスはネットワークの仮想化、自動化ができない。そこでネットワークスイッチの自動化を実現するソリューション『ThinkAgile Network Orchestrator』をアドオンして提供する。これによりVMに対するVLANの設定など、スイッチ側で自動で行うことができる」と早川部長は説明する。
SDSのアプライアンス製品のラインアップは、Amazon S3 APIに準拠するオブジェクトストレージの「DX8200C」、ファイル/ブロックアクセス可能なユニファイドストレージの「DX8200N」、ストレージの仮想化機能をもったSANストレージ「DX8200D」を用意した。
「DX8200C」は、CloudianのSDSをプリインストールしており、製造業や医療など、大容量のデータをオンプレミス環境に置きたい企業に提案している。Amazon S3 APIに準拠し、AWSの環境をそのままもってこれる。
「DX8200N」は、NexentaのSDSを採用する。高速レプリケーション、スナップショット、重複排除/圧縮など、エンタープライズストレージ機能を備えながら、汎用サーバーに搭載できるので、コストを大幅に抑えることができる。
「DX8200D」は、DataCore SoftwareのSDSを搭載する。内蔵ストレージや外付けストレージを一つのプールに入れて、統合管理でき、これまで使っていたストレージを束ねることができる。
早川部長は「自社のハードウェアとソフトウェアだけを組み合わせていては市場は広がらない。そのためソフトウェアベンダーを買収するのではなく、パートナーとして協業してやっていく」と話す。SDSは外部から調達することで、ハードウェアの開発に注力し、強みをより伸ばしていく考えだ。
ストレージを仮想化する手段として、主流になりつつあるソフトウェア・デファインド・ストレージ(SDS)。今話題のハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)の中核を担う技術でもあり、HCIの普及とともにSDSが広がっている。調査会社によっては、今後、年30%増の勢いで成長するとの予想もある。SDSで何が変わるのか、ストレージの最前線を追った。(取材・文/山下彰子)
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