2020年1月、「Windows 7」のサポートが終了する。これに伴い、Windows 10への移行が今後ますます加速していくとみられ、ITベンダーにとっては商機が拡大することになるだろう。Windowsとして最後のバージョンになるとされるWindows 10。クライアント移行ビジネスはラストチャンスとなるかもしれない。(取材・文/前田幸慧)
最後のクライアントOS
2020年1月14日、マイクロソフトのクライアントOS「Windows 7」がサポート終了(End of Support=EOS)を迎える。以降は、セキュリティ更新プログラムの提供が受けられなくなる。とくに昨今の巧妙化するサイバー攻撃の状況をみると、ぜい弱性を抱えることはセキュリティ上、大きなリスクだ。「Windows 8.1」も、23年1月10日にEOSがくる。サポートが終了する前に、最新OS「Windows 10」への移行を完了させなければならない。
Windows 10の大きな特徴は、「WaaS(Windows as a Service)」というアップデートモデルを採用していることだ。Windows 7や8といった従来OSはおよそ3年ごとに新バージョンがリリースされてきたが、Windows 10では、年に2回、3月と9月を目標に、「Office 365 ProPlus」と同タイミングで提供され、サポート期間はリリースから18か月となる。このアップデートモデルが採用されたのは、高度化するセキュリティ脅威への対策と最新技術への対応の実現が背景にある。また、Windows 10が最後のバージョンといわれるのもこのためだ。WindowsクライアントOSのマイグレーションビジネスとしては、今回がラストチャンスということになる。
なお、年2回のアップデートがあるのは、「SAC(Semi-Annual Channel)」というサービスモデルだ。名称変更があり、従来、「CB(Current Branch)」「CBB(Current Branch for Business)」と呼ばれていたものがこれに該当する。また、組み込み機器のような特定用途向けのサービスモデルは「LTSC(Long-Term Servicing Channel)」となり、こちらも従来の「LTSB(Long-Term Servicing Branch)」から名称を変更している。
SMBの認知度に課題
日本マイクロソフト
藤原正三
エグゼクティブ
プロダクトマネージャー
Windows 10は、Windows史上最速のペースで普及が進んだバージョンといわれている。日本マイクロソフトの藤原正三・Windows&デバイスビジネス本部 Windowsグループ エグゼクティブプロダクトマネージャーによると、「エンタープライズの顧客は早期に移行計画を立てていて、すでに終了しているところや、移行に向けての調査や準備を進めているところが多い」という。「Windows XP」EOS時の経験を生かし、早めに動いている企業もあるようだ。また、自治体についても、「都道府県・都市それぞれでサポート期限を認識し、更新計画を決定していたり、順次移行を進めているところが多い」と、Windows 7からの切り替えが進んでいる。
ただし、中堅・中小企業(SMB)についてはそうもいかない。「今年6月に発表した楽天リサーチの調査によると、Windows 7のサポート終了時期をSMBの54%が『知らない』という。また、『知っている』と回答した46%の企業についても、そのうちの7割近くが『検証・移行はこれから』。SMBに対しては、まだまだ終了の告知をしていかないといけない」と藤原エグゼクティブプロダクトマネージャーは話し、駆け込みでの移行を減らすべく、SMBに向けての情報発信の必要性を指摘する。
また、「調査会社のIDC Japanによる昨年末の予測では、法人市場においてWindows 7の導入率は、18年6月末時点で39%まで下がるとともに、Windows 10の導入率は、46%まで上がると見込まれている。さらに半年後には60%近くまでいく予測だが、当社としては顧客、パートナーの負担を減らすため、半年早くこの状況にもっていきたい考えだ」としている。
早めのアプローチを
日本マイクロソフトとしては、Windows 10への移行を促進するための施策の一つとして、「セルフサービスでの展開をわかりやすくした」ことを挙げる。
一つは、移行前の事前評価を行えるようにする無料のクラウドサービス「Windows Analytics」だ。「Upgrade Readiness」「Update Compliance」「Device Health」で構成され、アップグレードしたい端末がWindows 10に対応しているか、アップデート後にセキュリティパッチがきちんと当たっているかどうか、端末が正常に動作しているか検知できるといった機能が利用できる。また、「Ready for Windows」のサイトでは、Windows 10とのアプリケーションの互換性を調べることが可能。こうしたサービスの認知を広めつつ、エンドユーザーの移行を促している。
「19年の1月から6月にピークがくるといわれている」と藤原エグゼクティブプロダクトマネージャー。日本マイクロソフトとしては、その半年前を狙い、18年を活動強化の年として、パートナーとともに市場を盛り立てていく意向だ。「絶対にWindows 10移行への需要があることはわかっているので、すでに気づいているパートナーは、Windows XP移行のときにおつき合いのあった顧客に対して声掛けを始めている。XPのときのように『来るよね』と思って受け身で待っていたら他社に取られてしまう。単にOSの移行だけでなく、ネットワークやセキュリティなど、さまざまな意味で商機があるので、早めにアプローチしていただきたい」と呼びかけている。
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