AIが進歩し、企業は大量のデータを収集、分析し、新たなビジネスの創出に活用するようになった。一方で、企業は膨大なデータをどこに、どのように収納するのか、どのように管理するのか、課題を抱えている。ストレージベンダーが提案する、新たなデータ管理とストレージのあり方とは。(取材・文/山下彰子)
ストレージのいま
●膨らみ続けるデータ
企業は新たなビジネスを創出し、競争力を強化するために、AIを活用する必要性があると指摘されている。このAIの重要な要素となるのがIoTが集める膨大なデータだ。米デルテクノロジーズのマイケル・デル会長兼CEOは、「AIエンジンがロケットなら、その燃料はデータだ。たとえ、どのようにすばらしいAIアルゴリズムがあったとしても、データがなければまったく役に立たない」と、データの重要性を強調する。
これから膨大な量のデータが生成される。調査会社によると、2017年までに世界中で生成されたデータの量は約12ZB(ゼタバイト)にのぼる。ところが20年になると、わずか1年間で40~44ZBのデータが生成される、と予測している。この膨大なデータをどうやって保存するのか、どうやってAIに効率的に分析させるべきか、データをどうやって管理していくのか。とくに、オンプレミスのストレージやクラウドなど、さまざまなところにデータが点在している今、これらを統合管理する方法が必要になる。
●フラッシュの波が到来
ストレージ市場はハイエンドのHDDからフラッシュへのシフトが盛んに進んでいる。
日本ヒューレット・パッカードの川端真・ハイブリッドIT事業統括 データプラットフォーム統括本部 技術本部 本部長は「フラッシュがよく伸びている」と分析。EMCジャパンの飯塚力哉・常務執行役員 システムズ エンジニアリング統括本部長は「HDDとフラッシュの割合は、ミッドレンジでは半々だが、ハイエンドクラスは9割がオールフラッシュ」と指摘する。日本アイ・ビー・エムの村田実・システムズ・ハードウェア事業本部 ストレージ・システム事業部 ビジネス開発担当 副事業部長は「売り上げの4割がオールフラッシュ」といい、老舗ストレージベンダーのなかでフラッシュの存在感が増していることを強調した。
ストレージベンダーのネットアップもピュア・ストレージも好調だ。ネットアップの近藤正孝・ 常務執行役員 Chief Technology Officerシステム技術本部は「容量ベースの国内マーケットでは、17年通年で21%のシェアを獲得し、オールフラッシュの市場ではNo.1になった」と強調。また、オールフラッシュベンダーであるピュア・ストレージ・ジャパンの志間義治・SE本部 本部長は「グローバルでは前年比48%の成長を遂げて、売り上げも1ビリオンドル(1000億円)を達成した」と、好調な売れ行きが続いているとした。
フラッシュの導入が増え、出荷容量は増大しているが、単価は年々下降している。それでも17年は、NANDフラッシュの供給が追いつかず、単価が上がったが、今年は十分な量を供給できそうで、昨年に比べて金額が下がると見込まれている。
こうした背景もあり、ストレージの出荷容量は右肩上がりで推移するが、金額は数年は横ばい、もしくは微増にとどまるだろう。
●ストレージの進化が加速
クラウドの急激な成長により、ストレージ市場が縮小するのでは、という予想もあったが、ストレージは安定した地位を保ち続けている。ただクラウドの成長はまだまだ続いている。ストレージとクラウドの比率について、EMCジャパンの飯塚統括本部長は「ITインフラ全体でみたとき、クラウドは2、オンプレミスストレージは5の割合になり、両方とも伸びていくだろう」と予想し、ストレージとクラウドの構成比が逆転することはないとした。
クラウドが急激に伸びた要因は複数あるが、月額従量課金のため、コストがわかりやすい、簡単に増量できる、インフラの準備、保守をクラウドベンダーに任せることができる、などがある。ストレージは、こうしたクラウドのメリットを柔軟に吸収し進化している。
一つが従量課金モデルだ。今回取材をした5社のうち、4社が従量課金モデルを展開している。なかでも特徴的なのが、日本HPEの「HPE GreenLake」、EMCジャパンの「Flex on Demand」、日本IBMの「IBM Storage Utility Offering」だ。顧客のオンプレミス環境にストレージを設置し、利用した容量分だけ料金が発生する仕組みにした。あらかじめストレージには多めの容量を搭載しておき、その範囲内であればすぐに利用容量を増やすことができる。月額料金、簡単に増量できる仕組み、そして何より顧客の環境下に置くことで機密性を保つことができる。クラウドとオンプレミスのいいとこどりをした形だ。
もう一つ、設置、管理も簡単にした。これはHCIのメリットを吸収したかたちで、ハードウェアの構造をシンプルにし、さらに管理ソフトのユーザーインターフェースを視覚化することで実現した。欠点、課題を克服することでストレージはさらに進化した。運用コストメリットもあり、海外ではクラウドからオンプレミスに戻るブーメラン現象も起きている。
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