多くのIT企業で業績好調が伝えられた2018年。エンジニア不足の課題は解消されないものの、若手のIT業界人気が復活してきており、“不足”が“金足”と変わって、好調なIT投資旋風を支えるムードになってきた。とはいえ、ボーっと生きていたら、この旋風を逃しかねない。IT企業たちはどう生きるか。やらなきゃ意味ないよ。(取材・文/畔上文昭)
業界動向も半端ないって
世界規模のもぐもぐタイム
IT業界はスタートアップの数が多く、大手ITベンダーの買収意欲が旺盛なこともあり、企業買収は頻繁に発生している。今年もさまざまな買収劇があったが、世界をざわつかせたのは次の二つのニュースだ。
富士フイルムホールディングス(HD)は1月、米ゼロックスの買収を発表。世界規模のもぐもぐタイムが始まった。ところが、5月には米ゼロックスが富士ゼロックスとの経営統合を撤回し、さらに富士ゼロックスと結んでいる営業地域の棲み分けを含む技術契約を更新しない方針を表明。富士ゼロックスと米ゼロックスの経営統合は暗礁に乗り上げてしまった。
この混乱の中で、富士ゼロックスの玉井光一副社長が6月に社長に昇格。インタビュー記事を8月20日付Vol.1739の連載KeyPersonに掲載した。玉井社長は米ゼロックスとの関係について、次のように語った。
「米ゼロックスと富士ゼロックスのパートナーシップは非常に重要で、それを維持し、深めていくことが両社にとってベストな選択肢だと考えている。とはいえ、これから先、どのようなシチュエーションになるか分からない。不幸にも離れることになったとしても、今では製品技術の骨格はほぼ当社で開発しているので、十分対応ができると考えている」。また、米ゼロックスが表明しているアジアへの進出には、疑問をもっていると語った。
もう一つ、後半の話題をさらったのが、IBMによるレッドハット買収。ソフトウェアビジネスの世界では最大規模となるもぐもぐタイムとなった。IBMのビジネスに対して、レッドハットの製品・技術がどのようなシナジーを生んでいくのか。12月3日付Vol.1754の連載KeyPersonでは、被買収側となるレッドハットのジェームス・ホワイトハーストCEOのインタビュー記事を掲載した。
ホワイトハーストCEOは、オープンソースの騎手が“ビッグ・ブルー”という巨大な力に飲み込まれるのではないかと懸念を伝えると、明確に否定。「わざわざ340億ドルという大金を支払って、その文化をあえて破壊するようなことをしても、何の得にもならないことは、IBM自身がよく理解している」と語った。
どのような形で統合されていくのかは、現時点では発表されていない。ただ、レッドハットの製品やサービスはIBMの競合ベンダーも扱っているため、IBMの一部門としてレッドハットブランドが残ると予想される。
GAFAに振り回される?
GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)の巨大プラットフォーマーは、ITベンダーにも多大なる影響力を持とうとしている。それが国内で注目されたのは、トレンドマイクロの一件だ(
10月1日付Vol.1745)。
9月12日、iOSの「App Store」およびmacOSの「Mac App Store」から、トレンドマイクロの提供アプリが一斉に姿を消した。ほとんどは個人向けのアプリだが、端末の遠隔ロックやポリシー管理を行う企業向けのMDM(モバイルデバイス管理)ツール「Trend Micro Mobile Security」も影響を受けており、同製品を採用している企業では、新規のiOSデバイスを管理できない状況になった。
iPhoneやiPadなどのiOSデバイスは、アプリの配布経路としてApp Storeに依存せざるを得ない。そのため今回のような事態が発生すると、個人向け/法人向けを問わず、iOSをターゲットにしたビジネス全体に影響する大きな問題につながる。巨大プラットフォーマー次第でビジネスが停止するという脅威が、現実のものとなった。
炎上案件 編集部で奈良判定
何かと話題の量子コンピューター。取り上げた記事に対する反響は、常に大きい。そのため、量子コンピューターではない富士通のアニーリングマシン「デジタルアニーラ」にも、量子の二文字が欠かせない。
掲載したのは
4月2日付Vol.1721のトップニュース。タイトルは「富士通 国産“量子コンピューター”がいよいよサービス提供を開始 デジタル回路で動く『デジタルアニーラ』」。奈良判定というわけではないが、強引に量子用いたタイトルにネットが敏感に反応。「なんだ、量子じゃないじゃないか」と炎上した。
ちなみに、デジタル回路を用いたアニーリングマシンを開発している富士通や日立製作所は、量子の2文字を使っていない。
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