2018年の中国経済は、米中貿易摩擦などの影響で減速基調になった。先行きに対する不安感が強まるなか、中国に進出する日系ITベンダーのビジネスはどのように推移したのか。BCN上海支局は2月~3月にかけて、「中国におけるビジネス動向に関するアンケート調査」(18年1月~12月)を実施。中国でビジネスを展開する18社からの回答をもとに、中国ビジネスの現状と今後の方針を分析した。(取材・文/齋藤秀平)
売上高・利益
堅調な推移も、一部で慎重な動き
各社の売上高と利益は、前年に比べて堅調に推移し、18年の中国市場は、日系ITベンダーにとっておおむね良好だったとみられる。売上高については、「5%~10%の増加」と「30%以上の増加」と答えたベンダーの割合が最も多く、全体の8割以上の企業が売上増を達成した。経常利益は「30%以上の増加」となったベンダーの割合が3割以上と最も多く、総じて売上高の状況とほぼ同じ傾向になった。成長要因については「自社製品の伸長」や「大型プロジェクトの実施」「中国内のデジタルトランスフォーメーションビジネスの増加」などが挙がった。一方、マイナス成長の要因では「競争激化」のほか、「ユーザーの設備投資計画凍結などの影響」といった回答があり、一部でIT投資に慎重になる動きがあったことがうかがえた。
日系市場
IT投資は横ばい、ベンダー間の競争激化
約半数の日系ITベンダーが18年に獲得した新規顧客のうち「70%以上」が日系企業と回答し、依然として日系向けの割合が高い傾向にある。日系企業のIT投資については「横ばい傾向」としたベンダーが約半数を占め、今後の日系企業市場に関する認識では、開拓余地の大小に関係なく「ITベンダー間の競争は激しい」との見方が最も多かった。顧客からは「売り上げや利益を向上させるソリューション」への要望があったほか、「業務効率化」や「コスト削減」に関するニーズがあった。このほか「製品単体の販売ではなく、ソリューション提案」や「単体の製品で多くの機能を実現したい」といった要求もでた。
非日系市場
「一定の成果」が最多 米中貿易戦争の影響も
巨大な中国市場で、日系向けのビジネスだけでは成長が続かないといわれている。中国企業などを対象とした非日系企業向けのビジネスの強化には、すでに各日系ITベンダーが取り組んでおり、18年は44%が「一定の成果を収めた」と回答。39%のベンダーは「現状を維持した」と答えた。中国経済の減速要因となった米中貿易摩擦の影響に関しては「IT機器の価格上昇などが引き起こされた」や「自動車関連産業へのマイナス影響大」などの回答があり、一部ベンダーのビジネスに響いていることが明らかになった。中には「19年は大きく影響し始めると思われ、特に製造業は18年より厳しくなる」とみるベンダーもあった。
19年の方針
中国法人への投資や支援は「現状維持」
8割以上の日系ITベンダーは、引き続き「利益率の向上」と「売上高の拡大」を目指す方針だ。19年は、「データ活用」「自動化」に商機があるとみるITベンダーもあった。一方、日本本社からの中国法人に対する投資や支援では「現状維持」が61%を占め、「拡大する方針」が33%と続いた。19年の懸念点としては「米中関係」や「日系企業の投資マインドの冷え込み」「現地企業の技術力とサービス品質向上による価格競争力の低下」があがったが、中には「政治的背景から日中間の活動が活発になる」と期待する意見もあった。