アルクテラス
勉強ノートの共有とQ&Aで自発的学習を促す
アルクテラスは、勉強したノートを共有できるSNS「Clear」を提供。利用する生徒や学生は自分がつくったノートを写真に撮って公開し、閲覧者は自分の好きなノートを参考書のようにして勉強することができる。
分からない問題がある際に質問を投稿して回答を募るQ&A機能や、勉強に関する情報を気軽に投稿したり検索したりできる機能も持つ。中高生を中心に、月間アクティブユーザー数で140万人が利用。サービスは日本のほか、タイ、インドネシア、中国、台湾、香港の各国・地域でも展開し、公開しているノートの数は25万冊に上るという。新井豪一郎代表取締役社長はClearについて、「教えたい人が教え、学ぶ人にお金はかからない。自分たちの好きな人から教えてもらえるとともに、教える人にとっては教えることで理解がより深まる」と、学習機会を広げるサービスだと説明する。
アルクテラス
新井豪一郎
代表取締役社長
また、塾などの先生向けに「ClearS(クリアエス)」を提供。「Clearの機能を塾の中で閉じて使える」(新井社長)サービスで、塾生同士でノートが共有でき、生徒が自発的に分からないことを質問・回答したり、過去の質問を検索して疑問を解決したりできる。グループウェアの機能を搭載し、先生同士のコミュニケーションにも活用できる。
現在、検索性能の向上を進めており、協調フィルタリングでのパーソナライズや、手書き文字認識に取り組んでいる。「ノートに書かれたコンテンツの中身までデータ化できるので検索精度が上がる。それにより学習スピードも上げられる」(新井社長)。さらに、海外展開を加速させる方針で、19年以降、韓国やベトナム、マレーシアなどでの提供を計画している。
また、Clearを使って学生と塾をマッチングする「Meets」をリリースする予定。塾で教えている内容のノートや動画を塾がClearに投稿し、興味を持った学生が塾に見学を申し込むことでマッチングを図る。新井社長によると、Meetsはすでに大手塾7社の導入が決定している。「塾と学生の出会いの場をつくることで、塾業界に大きく貢献できるのでは」とアピールする。
エドテック企業をサポートするAWS
教育現場でのIT活用が推進されている現在、エドテックは新たに手掛ける上で商機が見込める市場の一つだが、ビジネスを開始するにはそのためのリソースが必要になる。アマゾン ウェブ サービス(AWS)は18年にエドテックのスタートアップを支援するプログラム「AWS EdStart」を日本でスタート。今年4月に開いた記者説明会では、このプログラムによるエドテック企業にとってのメリットをアピールした。
AWS EdStartは「エドテック企業のスタートアップを加速するプログラム」だと、AWSのヴィンセント・クア アジアパシフィックジャパン教育、学術研究、ヘルスケア、および非営利団体ワールドワイドパブリックセクター地域統括責任者は話す。「無料で参加できる。コミュニティーや技術サポート、プロモーションクレジットを利用できることがメリット」だとした。
花まるラボ
徳丸晃大
執行役員/CMO
説明会では、プログラムの参加企業として花まるラボが登壇した。主力コンテンツの「Think!Think!」は考える力を育む5歳から10歳の子ども向けの教材アプリで、空間認識や平面図形など100種類1万5000問の問題を収録。「学力や思考力、非認知能力に効果がある」(徳丸晃大執行役員/CMO)という。サブスクリプションで提供し、世界150カ国90万ユーザーが利用。B2Cが主だがB2Bでも提供し、17年9月には三重県教育委員会と包括提携を結び、Think!Think!のPC版を県内小学校に展開している。
花まるラボでは、Think!Think!をリリースした16年3月当時からAWSのクラウドを採用している。徳丸執行役員は「初期投資が不要で、スモールスタートが可能。アクセスに応じてスケールアップダウンが自動で行われる」などをメリットとして挙げた。
19年1月からAWS EdStartに加入し、「プロモーションクレジットによるコスト削減や、イベントへの登壇や参加によるネットワーキング、今後はマーケティングや採用活動にもメリットがあるだろう」と語った。
内田洋行に聞く「教育データ活用」の可能性
ICT環境全体の中で利活用ができる体制整備を
学校教育におけるデータ活用に関しては政府でも検討が進められている。Society 5.0(超スマート社会)における学校は、AIやビッグデータなどの技術が生徒一人一人の学習記録(スタディ・ログ)を把握し、個人に最適化された学びの場を提供できるようになると期待されている。17年度から19年度にかけては文部科学省が「次世代学校支援モデル構築事業」として、校務系と学習系のデータを連携し、学校におけるデータ活用の在り方や効果的なデータ活用方法のモデルとなる事例の確立やシステム要件の整理を目的とした実証研究を進めるなど、学校におけるデータ活用に向けた動きが本格化しつつある。
ただし、その大前提として、学校現場にデータの活用に足るICT環境が整備されている必要がある。18年に策定された「教育のICT化に向けた環境整備5カ年計画(2018~2022年度)」では、3クラスに1クラス分程度の学習者用コンピューターの整備をはじめ、普通教室の無線LAN整備率100%、普通教室の電子黒板整備率100%などの目標が定められ、そのために必要な経費について、単年度1805億円の地方財政措置が講じられている。しかし現状では配備が遅れており、18年3月1日時点で、学習者用コンピューターは5.6人に1台、普通教室の無線LAN整備率は34.4%、普通教室の電子黒板整備率は26.7%となっている。
真に必要なデータを見極める
内田洋行の三好昌已・上席執行役員営業統括グループICTリサーチ&デベロップメントディビジョン事業部長は「(学校のICT環境)全体の中でどういう順番に導入していったら良いのか、全体像を描かないといけない。必要なインフラやシステム、サポートをトータルで提供できないと、ICTの利活用が進まず、どこかが欠けていてもデータの利活用はできない」と指摘する。
内田洋行
三好昌已
上席執行役員
その上で、学校でのデータ活用に当たっては、本当に必要なデータが何であるかを見極める必要があるという。内田洋行では各種システムからタブレット端末、電子黒板などの機器、コンテンツ、内装まで教室全体を手掛けており、各機器やコンテンツの活用状況をはじめさまざまなデータを収集すること自体は可能だが、「何でも取ってしまうと先生に負荷がかかり、かえって使ってもらえなくなる」(三好上席執行役員)ようになってしまうため、多忙な教職員が価値を見いだすデータは何か、慎重に見極める必要があるとしている。
さらに、各種システムからデータを統合的に収集・分析する場合に、「各システム間でプロトコルがばらばらだとお客様に混乱が起きる」(同)。そこで、eラーニングや教育ITにおける国際標準化の推進を目的とした大学や企業からなる国際標準化団体「IMS グローバル・ラーニング・コンソーシアム(IMSグローバル)」の活動を日本でも浸透させるべく、内田洋行が事務局となって、16年6月に「日本IMS協会」を設立。「OneRoster」など統一規格の普及を図っている。三好上席執行役員は「どこかで基準を採用してデータがスムーズに流れていくようにしないといけない」と語り、設立から3年、「ようやく広まり始めている」と手応えを感じている模様だ。
ICTの全体像の中でデータ活用を描く
学校でのデータ活用が今後本格化していくとみられる中、ITベンダーとしてはこれが商機となるのか。三好上席執行役員は「ビジネスになるというよりも、それがないと生き残れない時代になってくると思う」とした上で、「大事なのは個別のデータではなく、トータルな環境の中で必要なデータをどう提示できるか。全体像として提供していく仕組みをつくらないとビジネスにはならないだろう」との見解を示す。
内田洋行は次世代学校支援モデル構築事業など国の実証実験にも参画している。「そこで積極的に勉強して人材育成を図りながら次のアプリ開発やシステム開発につなげていく。そういう意味では、国の実証実験は私たちの人材育成の場でもあると捉えて、積極的に進めていきたい」と話す。
なお、エドテック市場では新興企業の存在が目につくが、内田洋行ではそうしたエドテック企業との協業についても積極的に進めたい考えだ。同社の教育コンテンツ配信プラットフォームの「EduMall(エデュモール)」や校務システムと連携する可能性も視野に、「(業界を大きくしていくうえでは)むしろそうしていかないといかないと思っている。マーケットにインプレッションを与えてほしいという(市場からの)内田洋行への期待も大きい。われわれのプラットフォームやインフラを利用してもらい、いっしょにやっていくことができればうれしい」と三好上席執行役員は期待を示す。