リコージャパン RPAの提案現場 2
Problem RPA導入でよくある課題
基幹系システムはロボットが24時間アクセスする前提では運用していない
リコージャパンでは2016年から自社でRPAを利用している。17年からは限定的にRPAのビジネスを開始。18年からはそれを全国に展開している。17、18年頃はRPAがブームとなり、いち早く興味を持った企業がPoCを開始した。「PoCはPCでの繰り返し作業の自動化など、効果の出やすいところから広がった」と言うのは、リコージャパンのICT事業本部ICT技術本部アドバンスドソリューション部部長の長島信史氏。それが19年になってから変化しており、RPAの対象業務を広げたい、働き方改革や基幹系システム刷新プロジェクトの中で使いたい、といった新たな動きが目立ってきているという。
リコージャパン 長島信史氏
RPAビジネスが拡大する中で、課題も見えてきた。RPAの導入は業務現場が主体となって進めるものが多い。業務現場で自動化のシナリオを作りロボットを構築しようとすると「想定以上に、プログラミングスキルが必要になる。単純な作業の繰り返しだと思っていたら、多くの判断が必要だと分かり、どう自動化するか悩むこともある」(長島氏)。また、1人で行う作業なら簡単に自動化できても、それを汎用化し横展開できるようにするのも難しいのだ。
さらに、「基幹系システムではオペレーターが24時間利用することを想定しておらず、夜間バッチやメンテナンスの時間にロボットがアクセスし、本番システムの運用に影響を与えたりロボットがエラーになったりすることもある」と長島氏。こうしたことも、企業の中で大規模にRPAを活用しようとすると新たに現れる課題だ。ほかにも、経営層のトップダウンで始めたものの、業務現場における推進役が不在でトップの思惑と現場のギャップが大きく、溝がなかなか埋められなかったり、全社規模に広げようとした際に、複数部門に業務がまたがり部門間の調整でつまずいたりといったことも起こるという。
もちろん、RPAを活用し成果が出ている事例も増えている。リコージャパンとしては成功した事例情報を積極的に顧客に伝えている。どこをどう自動化すれば効果が出るかのヒントは、顧客自身が持っていることが多く、他社で成功した情報を伝えることで、顧客自身で最適な自動化シナリオを見つけてもらう。その上で素早くロボットのサンプルを作り、横展開できるようにする部分はリコージャパンがサポートする。
「紙の業務やアナログで行っている業務を可視化し、それを棚卸しするところから始めることは多い。その結果としてRPAで自動化しても、それが部分最適となるならば次のステップで本格的にシステム化し、BPRにまでに踏み込む提案をすることもある」と長島氏。時には、業務そのものをアウトソースすべきとの提案になることもあるという。
Solution RPA導入を成功させる提案は
RPAツールに縛られずに、「スクラムアセット」で提案する
リコージャパンのRPA提案におけるセオリーとしては、「コンパクト&クイック」がキーワード。小さな成功を積み上げるアジャイル開発的なアプローチが成功するという。その上で全てをRPAでなんとかしようとするのではなく、ほかのIT商材と組み合わせる。「何でもRPAで自動化しようとすると複雑化し、誰も触れないロボットが出来上がってしまう。他のITの仕組みとRPAを組み合わせると上手くいきやすい。われわれはそれをスクラムアセットと呼んでいる」と長島氏。RPAのツールに縛られないところがリコーらしさだとも話す。
実際、RPAだけで自動化できない業務はたくさんある。紙のデジタル化などはその代表だ。紙をスキャンしてOCRでデジタル化し、それを活用できるようデータ化できて初めてRPAで扱えるようになる。これら全てのプロセスをサポートできないと、顧客がRPAを使いこなす手助けにはならない。
成功のために最も重要となるのは、RPAのツールではなく「業務改善」を現場に定着させることだ。業務改善の中でRPAを定着させるためには、業務現場で活躍するRPAのスペシャリストの育成も支援する。その人を中心に、業務改善が組織に定着するようにすることで、RPAを使って課題解決ができる雰囲気を組織の中に生み出す。
リコーではかつて、「Lotus Notes」でエンドユーザー・コンピューティングを推進し、それに長く携わってきた。その際に得たノウハウは、同社に豊富に蓄積されている。現場が便利に使える仕組みである一方で、エンドユーザー・コンピューティングを進めすぎれば、複雑になりサイロ化してイノベーションの足かせになることもよく理解している。導入しやすく使いやすいツールであるRPAは、エンドユーザー・コンピューティングと同じような状況に陥りかねない。そのためRPAも、「作り込み過ぎないことは重要だ」と、長島氏は指摘する。
今やリコーは複合機だけでなく、ICTを使い顧客のデジタル変革に貢献しようとしている。RPAはその中で使いやすいツールの一つであることは間違いない。デジタル変革に貢献するさまざまなクラウドサービスやアプリケーションがあり、それらをつなぐ役割がRPAにはある。全てを開発により連携させるのは非効率だ。RPAに向いている連携があり、同社は現状ではRPAが活躍できるシーンはかなり多いと捉えている。さらに自分たちでRPAを活用してきたことで、そのノウハウを顧客に提供できる強みもある。今後もRPAの提案には注力していく方針だ。
コニカミノルタジャパン RPAの提案現場 3
Problem RPA導入でよくある課題
RPAの運用設計が不十分で、プロジェクトが失敗に
コニカミノルタジャパンでは、新規にRPAを導入する案件も多いが、「すでにRPAを導入している企業に対する、運用支援のビジネスがある。効果を出すためのアドバイザリーサービスが求められており、当社としてはそれに力を入れている」と、同社マーケティング本部オフィス事業統括部デジタルワークフォース事務局リーダーの藤塚洋介氏は話す。
コニカミノルタジャパン 藤塚洋介氏
新規導入の際、RPAの導入を単にツールの導入だと捉えてしまうと、プロジェクトは失敗しやすく、逆に、導入時から運用を考えている場合には成功しやすいという。そのため、当初から全社展開を見据えた上でスモールスタートするのが得策だと、同社マーケティング本部オフィス事業統括部オフィス事業企画部の武藤崇志氏は指摘する。
コニカミノルタジャパン 武藤崇志氏
17年頃のRPAは、PC操作を録画し自動実行するような「デスクトップ・オートメーション」が多かった。実はこれが、その後の全社展開の障壁になりやすい。デスクトップ・オートメーションは個人に依存しがちで、組織展開しにくいのだ。組織をまたいだ自動化では、ガバナンスをどのようにして確保するかなどが新たな課題となる。デスクトップ・オートメーションが成功したからといって、それをそのまま拡大しようとすると、ガバナンスの確保などが難しく頓挫するケースは多い。
また、RPAを活用して組織として導入効果を出すには、結局は顧客の業務の見える化を行いBPRにつながるようなアプローチが必要となる。また、運用を始めるとロボットはエラーなどで止まることもあり、スケジュール通りに動かないことも多々ある。そういったトラブルを解消するには、RPAの運用設計をしっかりと行うことが重要であり、コニカミノルタジャパンとしては、その部分をサービスとして提供することに力を入れている。
Solution RPA導入を成功させる提案は
自社RPA導入・活用をリードしたメンバーが、ノウハウとナレッジを提供する
コニカミノルタジャパンでは、新規導入企業に対しては、短期的に効果を出しやすいものと中長期的に効果を出し続ける運用設計のアプローチの2軸で提案することが多いという。短期的にはすぐに効果が出るところに絞って自動化を行い、投資したライセンス費用などを迅速に回収できるようにする。その上で、同社で扱っているRPA以外のサービスとも組み合わせて、中長期的な視点で効果が出せる運用設計を含めた提案を行う。
今は話題先行でRPAを切り口にすることは多いが、基本はそこから顧客とじっくり話をして、コニカミノルタ全体で取り組んでいる「いい時間設計」のコンセプトでアプローチしていく。「働く人の時間を“作業じかん”“創造じかん”“自分じかん”の三つに分け、作業じかんを減らすところでRPAが活用できる」と藤塚氏は解説する。
一方、すでにRPAを導入している企業へのサポートでは、コニカミノルタ自身がRPAを実践し成功したノウハウを駆使して、RPAプロジェクトの「成功させ屋」として動く。グローバルな製造業としていち早くRPAを全社規模で使ってきたこともあり、さまざまな業務領域でRPAを活用するノウハウには自身があると藤塚氏。同社では、製品開発、製造など製品ライフサイクル関連部門やコーポレート部門などでRPAを活用し約2万4000時間を削減した実績がある。このRPAの活用に至る過程で、失敗も含めRPA活用のためのノウハウやナレッジを数多く蓄積している。また、セミナーなどでも、ベンダーではないのでオープンな立場で実体験者として語れる点は、参加者からも評価が高いという。
コニカミノルタでは、ロボットの8割は現場の業務担当者が全社の運用ルールに則り作成している。RPAのトレーニングを受けている社員は600人超。武藤氏も、もともとコニカミノルタ本体でRPA導入、活用のプロジェクトをリードしてきたメンバーの1人だ。
そのような人材が、今ではコニカミノルタジャパンでRPAビジネスの先頭に立ち、顧客の元でリアリティのある提案をしている。「自社で培ったナレッジとノウハウが強み。その上で、人もリソースもグループ全体で共有して顧客に対応する。自ら実践してきた人が、顧客の元に行き語りサポートできるのが、コニカミノルタの最大の強みだ」と武藤氏。この体制で、顧客が自律型でRPAを活用できるように支援するという。