5月 宣言の延長から解除へ向かう
SIerは下期でコロナの落ち込み挽回狙う
5月に入ると、当初5月6日までを予定していた緊急事態宣言の延長が決定。企業活動も出社の自粛とリモート勤務が継続となった。その後、7日には全国の1日の感染者数が3月30日以来38日ぶりに100人を下回るようになり、次第に減少に向かったことで、14日に39県で宣言が解除。その後20日には関西の2府1県で解除となり、そして25日に、全国で宣言が解除された。外出自粛も解かれ、経済活動再開へ各企業が動き出している。
5月25日付vol.1826掲載
しかし、緊急事態宣言下での休業要請や不要不急の外出自粛は、あらゆる業種の企業活動に大きな影を落としている。また、依然コロナが完全収束したわけではなく、今後の動向次第では再び自粛ムードへと向かう可能性もある。そうなればこの「コロナ・ショック」もより大きなものとなりかねない。
SIer各社は、このコロナ・ショックが業績に与える影響をどうみているのか。決算期を3月とする大手SIer各社は5月に決算説明会を開き、その場で2020年度(21年3月期)業績の見通しについて言及した。
それによると、コロナ・ショックで第2四半期(20年7~9月)に受注がいったん落ち込んだのち、下期(20年10月~21年3月)には回復に向かうとの見方が多いことがうかがえる。対面での営業活動が困難になった影響で新規顧客の開拓が滞り、それが第2四半期の業績を押し下げるものの、第2四半期中に正常化へと向かったと仮定すれば、「下期へのマイナス影響はある程度抑えられる」(TISの桑野徹会長兼社長)と予測されている。
また、ユーザー企業のIT投資意欲が根強く、落ち込みの長期化は考えにくいとする見方も多い。野村総合研究所(NRI)の此本臣吾会長兼社長は「コロナの混乱が夏までに収束し、秋口から企業活動が正常化に向かえば、年明けに需要が戻る」、SCSKの谷原徹社長は「ユーザー企業がこれまで推し進めてきたDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の引き合いは減っていない」と説明。また、JBCCホールディングスの東上征司社長は、コロナ収束の時期がより明確になった時点で、「IT投資を再開するユーザーが増える」とみている。
ただし、予想に反して対面営業の自粛が年末まで続くとすれば、回復は来年度までさらにずれ込む危険性もある。当面は第2四半期の落ち込みを下期でどれだけ挽回できるかが、今期業績を大きく左右すると言えそうだ。
リモートワークの課題
工夫によって解消を
このコロナ禍でリモートワークの導入が拡大したが、実際にリモートで勤務する従業員はどのように感じているのか。
NTTデータ経営研究所は、緊急事態宣言が発出された4月7日からの4日間で「パンデミック(新型コロナウイルス対策)と働き方に関する調査」を実施した。調査対象は従業員規模10人以上の企業の役員・従業員のうち20歳以上のホワイトカラー職種で、有効回答数は1158人。
5月18日vol.1825掲載
調査の結果、在宅勤務などのリモートワークを「継続したい」意向を示した人の割合が52.8%だったのに対して、「継続したくない」とした人は34.2%、「分からない」が13.0%と、リモートワークに対する評価が大きく割れた。「継続したい理由」を聞いたところ、通勤時間が短くなったこと、仕事に集中できることなどが挙がり、逆に「継続したくない理由」には、リモートワークでできる仕事には限界があることや社内のコミュニケーションがとりにくいことなどが挙がった。
調査を担当したNTTデータ経営研究所の加藤真由美・ビジネストランスフォーメーションユニットシニアマネージャーは「リモートワーク環境での課題は、そう簡単には解決できず、新型コロナ問題が解決するまで続く可能性がある」と指摘。その上で、オンラインセミナーを積極的に開催して新規顧客の開拓につなげたり、各種の情報共有ツールを活用してクラウド上に仮想的なオフィス空間を構築するといった創意工夫によって部分的にでも補うことは可能だとも強調。「見通しが難しい事態に直面しても、その環境を逆手にとって事業継続や成長につなげられる人材の育成が急務」だと話す。
5月に入ってからは、新型コロナの新規感染者数は減少傾向にあるものの、完全に収束する気配は見えず、「第2波」到来の懸念もある。コロナの影響は長引くと予想される中、衛生対策や対人距離を保ち、夕食会などのコミュニケーションも抑制される新しい生活様式を政府が示した。ビジネスのあり方や働き方への大きな影響も避けられない見通しだ。
リモートワークが可能な職種を中心に、在宅勤務や分散ワークが推奨されるとともに、社内のコミュニケーションや新規顧客の開拓といった営業活動における制約といった課題も浮上。ITや組織運営の見直しでどこまで解決できるかが問われている。
BCN News
アクセスランキングからアンダーコロナを振り返る
ここまで紹介してきたように、週刊BCNでは新型コロナ禍でのIT業界動向をニュースとして報じてきた。その中でも、注目度の高かったニュースは何だったのか。国内でコロナの影響が拡大し始めた2月から5月までのニュース記事を対象に、ウェブサイト「週刊BCN+」のアクセス数を集計し、ランキングにしてみた。
結果は表の通り。新型コロナに関連するニュースとしては三つの記事がランクインした。そのうち10位の「デル GIGAスクール構想の前倒しでChromebookの提案を強化 今年度に数百万台の上乗せ需要」(4月27日付vol.1823掲載)は「4月」で言及した話題だ。
残る二つの内の一つは、6位の「コロナ・ショック 変化の振れ幅を逆手に IT投資の優先順位が激変」(4月6日付vol.1820掲載)の記事。コロナ・ショックの影響で、SIerの今年度下期業績は落ち込む可能性が高いが、ユーザー企業のIT投資が完全に消えてなくなるわけではない。4月1日付でアビームコンサルティングのトップに就任した鴨居達哉社長は、「(コロナ・ショックで)IT投資の優先順位が大きく変わっている」と指摘。IT投資のいくつかある候補のうち、そのユーザー企業にとって「最低限必要なIT投資は何かを整理して、絞り込む」ことで受注につなげられると話す。また、4月1日から事業を開始した富士通の戦略子会社でコンサルティングを担うRidgelinez(リッジラインズ)の今井俊哉社長は「何をするのかの優先順位を明確にするとともに、今のデジタル技術を積極的に取り入れて仕事のスタイルや従業員の意識を変えていく」こともポイントだと指摘している。
もう一つは、9位の「新型コロナ禍 情報サービス業にも影響大 “コロナ後”を見据えた改革を」(4月13日付vol.1821掲載)の記事。このコロナ禍で初めてテレワークを取り入れたような企業では、それに合った運用の仕組みが十分に整わない中で始めたことに不安を持っていることも考えられる。記事の中でNRIの黒崎浩・コーポレートイノベーションコンサルティング部プリンシパルは、コロナ禍での「人の移動や集まりを最優先で避けるべき時期」においては、「ある程度の生産性の低下は前提とし、通勤時間が不要になる分も含めて元が取れればいい、くらいの割り切りも必要だ」と指摘。「移動や集まりに対する極端な制限は求められないものの、依然として警戒を怠ることができない時期」に入った後も、バーチャルオフィスは有力な選択肢であり、リアルオフィス以上の生産性を目指し、ミッションや成果を基軸とした人材マネジメントなど、人事制度や組織風土の改革も行うことで企業の競争力を維持していくことが大切だとしている。
いずれの記事も4月に掲載されたもので、世間的には日を追うごとに感染が拡大し、緊急事態宣言も発令。不要不急の外出自粛が求められ、またより多くの企業で時差出勤や在宅勤務を取り入れたタイミングだ。コロナの感染、企業活動への影響などの不安が募る中で、コロナ後を見据えてどのように動くべきかを紹介した両記事に関心が集まったものと考えられる。
ちなみに、3位にランクインした「富士通の自治体向け事業とFJMを統合、7月に新会社発足へ」(4月6日付vol.1820掲載)では、タイトルの通り、富士通が自社の自治体、医療、文教向け事業部門と、準大手から中堅・中小企業向け事業を担当する富士通マーケティング(FJM)を統合した新会社を7月1日に発足するとした発表ついて報じた。しかし、5月29日に開催された富士通の決算説明会における発表によれば、「現在の状況を鑑み、ICTを活用した顧客の事業継続により一層注力する」(時田隆仁社長)ことを理由に発足日が延期となっている。