2020年(1月~12月)の国内PC市場は想定外の成長を遂げた。それを支えたのが、小中学校において児童生徒1人あたり1台ずつPCを整備する「GIGAスクール構想」である。最低でも750万台以上の新たなPC需要が創出され、その効果は21年3月まで継続。さらに4月以降も、高校を対象にPCの導入が促進されることになる。GIGAスクール構想は、国内PC市場にプラスの効果を及ぼしただけでなく、今後の市場勢力図やPCビジネスの変化にまで影響を与える「大波」となった。GIGAスクール構想をきっかけとした国内PC市場の変化を見ていこう。
(取材・文/大河原克行  編集/前田幸慧)

PCメーカーの勢力図に 明確な変化

過去最高を記録した
2020年のPC出荷


 調査会社の発表をみると、2020年の国内PC市場は、想定外の好調ぶりとなったことがうかがえる。IDC Japanは、今年2月に発表した調査で、20年の国内PCの出荷台数は前年比0.1%減の1734万台で微減の実績となったものの、「20年は19年に続いて記録的な出荷数を達成した」と総括した。同社ではこの1年の状況について、「19年はWindows 7の延長サポート終了前の買い替え需要が発生し、国内PC市場は過去最大規模を記録。20年はその反動減が見込まれていた」としながら、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大がきっかけとなり、在宅での仕事や学習にPCを使用するケースが急拡大したことに加えて、GIGAスクール構想の始動により、コンバーチブルノートブックPCやデタッチャブルタブレットの特需が発生した」と説明している。

 一方、MM総研は、今年3月に発表した調査で、20年の国内PCの出荷台数は前年比1.3%増の1591万台となり、同社が調査を開始した1995年以来、過去最高だった19年を上回り、出荷台数記録を更新したと明らかにした。同社では、「20年の国内PC市場は、新型コロナ対策のための家庭からの支出と、教育市場向けの政府支出であるGIGAスクール構想に支えられた」と分析。Windows 7のサポート終了に伴う特需を超える需要がGIGAスクールによって発生したと指摘した。

 業界内では当初、20年の需要は前年比3割減にとどまるとの予測が出るなど、Windows 7特需の反動が大きく影響するとの見方が支配的だった。実際、電子情報技術産業協会(JEITA)の調査によると、20年1月14日にWindows 7のサポートが終了した直後の20年2月は、前年同月比20.4%減と大幅に減少。3月も22.6%減となり、月を追うごとに減少幅が拡大するとみられていた。

 だが、新型コロナの影響により、4月以降はテレワーク需要が顕在化。それに加えて、GIGAスクール構想によるPC導入が徐々に加速した。JEITAの調査では、20年度第1四半期は前年同期比7.4%減だったものが、第2四半期は2.4%増とプラスに転じ、GIGAスクール構想による導入が本格化した第3四半期は43.2%増と大幅な伸びを示した。そして、21年1月は前年同月比109.8%増と、Windows 7特需の駆け込みがあった前年実績の2倍という出荷台数を記録している。

 MM総研の調査では、法人向けPCの出荷実績の中からGIGAスクール構想による需要を除くと、29.0%減の実績になっている。テレワーク需要の多くが個人向けPCで賄われていたことを考えると、この減少水準が20年の本来の実力値とみることもできる。テレワークとGIGAスクール構想が、国内PC需要全体を3割ほど押し上げたというわけだ。

 GIGAスクール構想は、19年12月5日に閣議決定した「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」において、23年度までに小中学校の児童生徒1人1台の端末を整備することが盛り込まれ、同年12月13日に閣議決定した令和元年度補正予算案で予算を計上し、20年1月30日に成立した。だが、新型コロナの感染拡大の影響によって緊急時におけるオンライン学習環境の整備の遅れが表面化したこともあり、整備を前倒しで進めることを決定。当初、20年度の整備対象は小学校5・6年生と中学校1年生だけだったが、小学校と中学校全学年を対象にする計画へと変更した。児童生徒の学びを止めないための施策に位置づけられた形だ。21年度以降は、高校などでも“1人1台”の環境整備が本格化することになる。