大都市部を中心にオフィス再編・縮小の動きが加速し、オフィス市場を主戦場とする大手複合機ベンダーのビジネスには向かい風が吹いている。リモートワークを全面的に取り入れ、低い出社率を前提としたオフィスの設計が一般化すれば、複合機の稼働台数や稼働量の低下につながる可能性は高い。主要ベンダーは複合機やプリンタ、カメラといったデバイスと連動して動くITソリューションへとビジネスの領域を急ピッチで広げている。全国に張り巡らせた営業網をフルに生かし、とりわけ中堅・中小企業ユーザーの経営的、業務的な課題解決に力を入れている。
(取材・文/安藤章司)

週刊BCNは今年10月、創刊40周年を迎えます。本紙が長年取材してきたITビジネスの現在を分析し、未来を占う記念特集を連載形式でお届けします。

出社率3~5割でオフィスを再編

 オフィスで使われる複合機は、コロナ禍で稼働量が大きく低下した。コロナ禍が収まれば一定量は回復するとみられるが、それでも大都市部を中心に「以前の水準には戻らない」(複合機ベンダー幹部)と見られている。

 一例を挙げると、NTTコミュニケーションズの昨年度(2021年3月期)の複合機・プリンタの印刷枚数は全社で前年度比57%減少し、A4用紙換算で1600万枚の削減となった。一方、従業員満足度調査では、在宅勤務やサテライトオフィスなど働く場所を選ぶ自由度が飛躍的に高まったことを受けて、男女とも満足度が向上。中でも女性従業員の満足度が初めて男性従業員と並ぶ水準まで高まった。モチベーションや生産性の向上につながっているとして、同社は首都圏の主要なオフィスを3分の2に集約し、オフィスへの出社率3割程度を想定したオフィス再編に取り組む。

 出社率3~5割を前提とした首都圏のオフィス面積の縮小・再編は、情報・通信系企業のみならずほかの業種でも広がりを見せており、大都市圏のオフィス市場でシェアを持つ複合機ベンダーにとって、リモートワークによる複合機の稼働量の低下はビジネスに大きな打撃となる。

 リコージャパンの坂主智弘社長は、「プリントボリュームはコロナ禍に関係なくジリジリと下がることは織り込み済み。ただ、コロナ禍で前倒しになった」と、ペーパーレス化や業務のデジタル化の進展を踏まえ、手は打ってきたと話す。具体的には建設や製造、不動産、福祉・介護、流通・小売り、食品製造・卸といった業種別のITソリューション「スクラムシリーズ」の開発に力を入れており、複合機の減収分を補う役目を果たしている。

 例えば建設業向けでは、遠隔地にいる担当者とリアルタイムに情報をやり取りできる仕組みや、CADデータを社内外で共有する機能など、業種ごとの課題を解決する具体的な解決策をひとまとめにしてあるのが特徴。中小企業向けには「スクラムパッケージ」として販売し、中堅企業向けにはカスタマイズができるよう部品化した「スクラムアセット」として販売することも可能だ。今年6月には自然言語処理AIを活用した「仕事のAI」を商品化。第一弾として食品業界向けに、エンドユーザーの声をAIで分析し「顧客満足度にマイナス影響が出る前の予兆を検知し、適切な対応ができるよう支援する」(リコーの梅津良昭・デジタル技術開発センター所長)サービスを始めている。
 
リコージャパンの坂主智弘社長(左)とリコーの梅津良昭所長