デジタルトランスフォーメーション(DX)を志向する企業が、その足枷とも指摘されるレガシーシステムをどう刷新するかを経営上の重要課題に据える例が増えてきた。そして、レガシーシステムの象徴として語られることが多いのがメインフレームだ。しかしトップメーカーの米IBMは、自社のメインフレーム「IBM Z」を、足枷どころかDXの基盤になり得る強力なクラウドプラットフォームに進化させていると強調する。日本市場でIBM Zはそうしたポジションを確立できるのか。
(取材・文/谷川耕一  編集/本多和幸)

 2018年9月に経済産業省から出された「DXレポート」では、既存システムがDXの足枷になると指摘された。ここで言う既存システムとは、技術面の老朽化、システムの肥大化や複雑化、ブラックボックス化などの問題があり、高コスト構造の原因となっている「レガシーシステム」のことだ。

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の17年のアンケート調査によれば、回答企業約200社中、8割の企業がレガシーシステムを抱え、そのうちさらに7割ほどがこれを経営や事業戦略上の足枷だと認識している。理由としては「ドキュメントが整備されていないため調査に時間を要する」「レガシーシステムとのデータ連携が困難」などが挙げられている。

 ブラックボックス化し技術的にも古いレガシーシステムでは、新しいクラウドシステムとの連携も難しく、それがDX基盤の整備を阻害する。25年までにレガシーシステムをなんとかしないと企業を崖下に落としてしまうということで、DXレポートのメインテーマとして問題提起されたのが「2025年の崖」だった。

メインフレームがDXの足枷 なんて言われるのは日本だけ

 レガシーシステムと言われて真っ先に思い浮かべるのはメインフレームだろう。「旧態依然」「高価」「独自のアーキテクチャーで相互運用性が低い」「何十年も前のプログラムが今なお動き続けている」といった負のイメージがある。しかしながら、「DXの足枷にはならず、AIなどを活用するクラウドプラットフォームとして活用できるメインフレームがある」とIBMは主張する。それが「IBM Z」だ。

 そもそもメインフレームがDXの足枷になるというのは「日本独自の論調」だと日本IBMテクノロジー事業本部の川口一政・ 技術理事は語る。実際、世界中でIBM Zの利用は増えているという。IBM Zの出荷キャパシティ(処理性能)を見ると、10年で3.5倍に増えている。特筆すべきは、IBM Zの標準エンジン以上に、IBM Z上でのLinuxの利用が拡大している点だ。堅牢かつオープンなプラットフォームとしての価値が直近の市場では評価されているように見える。
 
日本IBM 川口一政 技術理事

 「日本にはメインフレームを20年以上、何ら修正を加えずに使い続けてきた文化がある。それをいよいよ更新しなければならなくなったわけだが、何十億円もかけて同じようなものを作り直すという考え方では確かに足枷になってしまう」と川口技術理事。もはやメインフレームでも常に変化するコンティニュアス・デリバリー(継続的デリバリー)が必要で、IBM Zはそうしたシステムだと強調する。メインフレームをIBM Zで最新化すれば、むしろDXは加速できるとしている。

 IBMには、DXの基盤となり得る水準でメインフレームを進化させているベンダーは自分たちだけだという自負があるようだ。川口技術理事は「メインフレームを使い続けている企業も、当社だけがメインフレームの進化に十分な投資を続けていることは理解している。そのため、IBM Z以外のメインフレームを使い続けている企業では、IBM Zに乗り換えるかメインフレームを脱するかの選択になっている」と話す。  IBM Zは新しくなっても30年前のCOBOLのプログラムが動き、その上でAIなど新しい技術を活用できる。「かなり古いIT資産も生かしつつDXを加速させる」のがアピールポイントだ。