新型コロナウイルスのパンデミックに対応するための事業継続に追われた企業も多かった2020年。今年はそこから一歩前進し、ニューノーマルなビジネスを再構築するための「攻めのIT投資」が本格化するのか。NECと富士通の21年度(22年3月期)上期決算から見えてきたのは、簡単には解決できない市場の課題だ。
(取材・文/藤岡 堯、本多和幸)

NEC
国内IT事業、5Gが好調で増収増益 部材供給リスク根強く、対策を推進

中堅・中小企業向けは横ばい回復傾向見えず

 NECが10月29日に発表した21年度(22年3月期)上期の連結決算は増収で、営業、最終の各利益段階で増益となった。国内ではエンタープライズを中心としたIT事業や第5世代移動通信システム(5G)関連が好調。海外はスイス大手金融ソフトウエア企業Avaloqの買収による上振れもあり、デジタルガバメント/デジタルファイナンス(DG/DF)領域が伸びた。半導体などの部材供給リスクの影響は根強く、同社は代用品への切り替えや設計変更、販売価格への転嫁などの対策を展開するとした。
 

 売上高にあたる売上収益は前年同期比5.2%増の1兆3828億500万円、営業利益は16.2%増の232億500万円、調整後営業利益は45.0%増の421億1400万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は21.2%増の133億4200万円となった。

 上期には戦略的費用として130億円を投入。中身は5Gで70億円、コアDX、社内DX、人材ほかでそれぞれ20億円となっている。

 各セグメントの受注動向を前年同期比で見ると、社会公共が2%減、社会基盤が6%減、エンタープライズが4%増、ネットワークサービスが5%増、グローバルが29%減となり、全社では3%減だった。ただ、前年のGIGAスクール需要による反動減を除けば、社会基盤は6%増、ネットワークサービスは19%増だった。全体に関しても、大型案件が多く変動の大きい海洋や連結対象外のディスプレイ(いずれもグローバルセグメント)を除けば2%増となり、受注動向は堅調に推移している。

 セグメント別の売上に関しては、エンタープライズが18.5%増の2822億円で製造、流通・サービス業、金融業と全領域が増加し、売上全体を底上げした。ただし、中堅・中小のSMB領域は横ばいが続いており、回復傾向は見えないという。DX支援のコンサルティングに関しては着実に売り上げを増やしており、グループ会社のアビームコンサルティングは第1四半期、第2四半期それぞれで1割ずつ受注が伸びているとする。SI事業は下期も好調に推移する見通しだ。

 ネットワークサービスは5G事業が大幅な増収となったものの、GIGAスクールの反動減により、前年同期から変わらず2255億円となった。グローバルはAvaloqの買収効果のほか、サービスプロバイダーソリューションも順調に伸びた。ポートフォリオ改革も寄与し、7.3%増の2352億円だった。

AWSとの協業領域広げコアDX事業をさらに加速

 半導体を中心とした部材供給リスクに関して、藤川修・執行役員常務兼CFOは「市場では供給不足を懸念し、在庫の積み増しが顕著になっている。このような状況に強い問題意識を持っている」と強調。対策として▽代替品への切り替え・代替部材への設計変更▽費用抑制と販売価格の適正化による部材価格高騰への対応▽オンプレミス案件のクラウドシフト提案を加速し、販売機会の損失を回避──をすでに進めているとした。

 部材不足による出荷遅延によって、サーバーやストレージなどの汎用品を中心に影響が出ており、上期は利益面で30億円の下振れにつながったとする。改善の見通しについて、藤川常務は「今年度中は難しく、来年度以降まで長期化することを前提にしている」との見方を示した。
 
NEC 藤川 修 常務

 通期予想は期初から据え置いた。売上収益は0.2%増の3兆円、営業利益は22%減の1200億円、調整後営業利益は13%減の1550億円を見込む。DXや5Gの需要が旺盛な一方で、部材供給のリスクなど、マクロ経済の不透明感があることを理由に挙げた。

 今後の成長事業に関するトピックスも紹介した。グローバルの5G展開ではスペインの通信会社テレフォニカとともに海外4カ国においてOpen RANのプレ商用実証を進める。DG/DF関連では、NEC Software Solutions UKが英Capitaグループの警察向けソフトウェア事業を買収。この市場における顧客基盤の強化・拡大を図る。

 このほか、AWSとの協業領域をグローバル5GやDG分野へ広げたことも取り上げ、コアDX事業をさらに加速していく姿勢を改めて示した。成長事業以外の領域では、欧州と米国を結ぶ超大容量光海底ケーブルの供給契約を米フェイスブック(現メタ)と結んだことも報告した。