──2021年1月に社長に就任した。
新型コロナ禍に加えて、オフィシャルパートナーを務めた東京五輪が開催されるなどチャレンジングな環境だったが、堅調に業績を伸ばすことができ、大きな自信を得た1年だった。
具体的な取り組みとしては、社員の働き方を100%リモートワークにした。難しい面もあったが、さまざまな対策を実施したことで、高いモチベーションとチームワークを維持し、生産性の向上を実現した。また、東京五輪・パラリンピックでは大会史上最多の拠点数をカバーするネットワークを構築した。大会の延期などイレギュラーなことも多かったが、無事に終えたことで新しい五輪のモデルを示すことができた。
代表執行役員社長
中川いち朗
──シスコのビジネスモデルも大きな変化を遂げている。
スイッチやルータなどのハードウェア中心のビジネスモデルからソフトウェアやサービス提供をメインとしたビジネスモデルに転換を進めた結果、売上構成比はソフトウェア・サービスの割合が半分を超えた。ネットワークやインフラの会社としての従来の実績が大きいため変革は容易ではなかったが、数字の面でも順調で、大きな手ごたえを感じている。
提供する製品が変化したことで、パートナー企業の増加や主要クラウドサービスのマーケットプレイスでの提供など販路が拡大した。その結果、SMBの顧客が大幅に増加している。
ハイブリッドワーク向けの機能拡充
──サービスの中でも「Cisco Webex」の販売が好調な印象だ。
競合サービスの多い市場だが、大手企業を中心に導入が進んでいる。豊富な機能や専用端末の提供などにより他のサービスとの差別化を図っていることが要因だ。今後は、ハイブリッドワークが主流になるため、その環境で求められる機能を拡充する予定だ。
Webex以外にもセキュリティサービス「Cisco SASE」をはじめとしたさまざまなサービスを提供できる体制となったため、既存ユーザーへのアップセルやクロスセルも注力していきたい。
──22年の重点施策は。
私が社長就任時に打ち出した「日本企業のデジタル変革(DX)」「日本社会のデジタイゼーション」「営業/サービスモデル変革」「パートナーとの価値共創」の四つの施策を、「3カ年成長戦略」に位置づけた。22年はそのスタートの年。社内一丸となって取り組んでいく。日本はデジタル競争力が低いと指摘されている。課題を解決できるように多くの企業を支援していきたい。
現在は、サステナビリティへの取り組みも企業の価値を左右する重要な要素だ。社内の取り組みはもちろんだが、顧客や社会全体がサステナビリティを実現するためのサポートを提供することも重要な役割だと考えている。