Special Feature
デル・テクノロジーズの実践からみる ITベンダーの「サステナブル調達」
2023/03/09 09:00
週刊BCN 2023年03月06日vol.1959掲載
地球環境や社会的な負荷が少ないと保証された製品やサービスを購買する「サステナブル調達」の動きが国内で広がっている。しかし、明確な調達方法が確立されているわけではなく、調達側も提供側もまだまだ手探りの状況だ。多くの電力エネルギーを消費するIT業界では、サステナブル調達にどのように取り組んでいるのか。幅広いハードウェア製品をグローバル展開するデル・テクノロジーズに話を聞いた。
(取材・文/谷川耕一 編集/藤岡 堯)
サステナブル調達については、欧州が先行するかたちで広がり、近年は日本でも取り組みが拡大している。グローバルでビジネスを展開している製造業などでは「サステナブル調達ガイドライン」を公表し、ガイドラインに沿った製品やサービスしか調達しないと表明している企業もある。企業がサステナブル調達に取り組むことは、地球環境への配慮や社会課題に対して貢献しているとして、ブランドイメージの向上にもつながる。今後は官公庁や自治体でも導入が進むとみられている。
サステナブル調達のようなものが普及することは予測していた。とはいえ、当初から「サステナブル」がキーワードだったわけではない。「もともとは『ごみをなくそう』から始まった。15年12月に採択されたパリ協定(気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定)やSDGsなどを受け、調達も含めた企業のESG評価や、ESGに対応した企業が投資対象になることなどもあり、企業としてサステナブルな調達をより考えるようになった」と松本氏は話す。
松本笑美 Japan CDO Office
ESGエンゲージメントジャパンリード
現状、世の中の電力の3%程がデータセンターで消費されている。電力消費を減らしCO2排出量を減らすことには、ITベンダーとしては当然注力する。そして環境問題だけでなく、人権やサプライチェーンのリスク、各国の規制への準拠や国際的な条約などにしっかりと取り組めるかが重要だ。これらが同社におけるサステナブル調達の動きの源流となっている。
「日本でも、2年ほど前から具体的にサステナブル調達に関する問い合わせが顧客から出始めた。欧州ではその2、3年前から話題になり、取り組み始めていた」と松本氏。日本では当初、サステナブル調達とはどういう取り組みかが問われたが、2年を経て世界の動きや欧州の先行企業の具体的な取り組みに顧客はかなり注目している。
日本でもサステナブル調達の要求に応えられなければ、ビジネス機会の損失となると警告を鳴らすのは同社の上原宏・執行役員製品本部長・データセンターソリューションズ事業統括だ。顧客からの提案依頼書にも「提案するハードウェアはグリーン調達ガイドラインに準拠すること」などの項目が挙がるようになった。そのため営業活動の中でも、松本氏が顧客にESGに関する取り組みを説明する機会はかなり増えている。ESG的な取り組みはこれまで、企業として「あればよい」といった存在だった。それがここ1、2年は企業価値に変わってきていると松本氏は指摘する。
日本企業ではサステナブル調達の取り組みを社会的な責任や社会貢献の一つと捉える向きもあるが、最近は「価格が安いかではなく、サステナブル調達を優先して製品を選ぶようにステージが変わってきた」と上原氏。結果的に同社では、製品開発の中にサステナブルな思想、方針を入れ込んでいる。先日発表した新しいPowerEdgeサーバーの四つのポートフォリオにも「サステナブル」が入り、「水で冷やすなど提供するテクノロジーもサステナブルなものに変わっている」という。
加えて、グローバル、ローカルで顧客からの製品のサステナブル調達に関する問い合わせに回答する体制も整えられている。サプライチェーンも含め回答できるようにするため、サプライチェーンに参加する企業の行動規範も明確化している。サプライヤーには、デル自身のESGへの対応項目と同様なものを順守してもらう。国や地域により規制や法律は異なるので世界標準の行動規範が一つあるわけではなく、それぞれの地域の状況に合わせたものが用意されている。
その上で各サプライヤーとは、「覚書」を取り交わすか、年1回のCSR調査を実施し行動が守られているかを確認する。場合によってはサプライチェーンのメンバー企業に、監査を実施することもある。またトレーニングを提供し、ESGへの対応レベルを上げるサポートも行う。「一次サプライヤーに対しては、デルの社員と同等レベルの行動規範を求めている」と松本氏は言う。
ESGを含めた強固なサプライチェーン体制を築けていることで、サステナブル調達の要求に対し必要な情報を迅速に提供することにつながる。これができることは、製品の性能や価格、セキュアであることに加え、もう一つの製品価値になっているようだ。上原氏は「デルは部品を安く調達しようとしているだけでなく、部品のバックグラウンドチェックなどをしっかりと行い、それがクリーンであることを担保している」と述べる。
今後のIT市場では、サプライチェーンが健全であることが「製品を提供するベンダーとしてのリスク回避となり、それが社会的な責任でもある」と語る。実際にサプライチェーンに何らかの問題が発生すれば、それも含めてベンダーとして責任を取ることになり、あらかじめ健全性を担保するコストよりもリスクのほうが大きくなる。その上で購入価格が安いだけでなく、顧客はサステナブルというこれまでとは異なる価値で製品を判断している。
上原 宏 執行役員
同社が強みとして挙げる「規模の経済」も、ESGのためには間違いなく効いてくる。規模が大きくなれば、サプライチェーン全体の安定化を図りやすい。安定化こそが重要であり、安価に調達できることはサプライチェーンのメリットの一部に過ぎない。規模の経済により、サプライヤーと長期スパンで計画的に物事を進められることがESGの面でも大きなメリットだと、上原氏は強調する。
加えて、そもそも顧客が価格の前にサステナブルに関する話を聞きたがっていると松本氏は言う。大規模な企業はサステナブル調達への対応に対し、自ら考え行動できる。一方でそれほど規模の大きくないところもサステナブルへの関心が高まっており、同社やパートナーに情報や対応のサポートを求めるケースがある。企業はサステナビリティに対し積極的に取り組んでいるところをパートナーに示し、彼らと一緒にサステナブル調達に取り組んだほうがよいことにも気づき始めている。
今後、サステナブル調達に対応できることが、ITベンダーの戦略でも重要な柱となる。そのため、製品やサービスの開発思想からサステナブルに取り組む必要があり「これはかけ声だけでなく、具体的に製品やサービスへ反映させなければならない」と上原氏は強調する。そして「きれい事ではなく皆さんと一緒に社会貢献するのがマイケル・デルの思想でもあり、それがデル製品やサービスに組み込まれている」と松本氏も言う。
デルはESG全てに対し、数値目標を掲げている。これら目標の達成は、1社では成し遂げられない。ESGの取り組みが1社でできないことは、顧客やパートナー企業も理解している。そのためこれからは、自分の会社だけが勝ち組になるのではなく、さまざまなパートナーと一緒に社会全体で目標を達成する必要がある。
さらに、災害の多い日本では、安全で持続性のある社会を築くにはどうすべきかを考える必要がある。これには、テクノロジーの進化で解決できることもあり、この課題にもさまざまな企業が一緒に取り組むことがより近道だ。松本氏は、さまざまな企業が一緒になって取り組めるかが、ESGのゴールを達成するには重要になると語る。今後は製品も、そして製品以外のESGについても、コラボレーションで進めることになるだろう。
(取材・文/谷川耕一 編集/藤岡 堯)

サステナブル調達については、欧州が先行するかたちで広がり、近年は日本でも取り組みが拡大している。グローバルでビジネスを展開している製造業などでは「サステナブル調達ガイドライン」を公表し、ガイドラインに沿った製品やサービスしか調達しないと表明している企業もある。企業がサステナブル調達に取り組むことは、地球環境への配慮や社会課題に対して貢献しているとして、ブランドイメージの向上にもつながる。今後は官公庁や自治体でも導入が進むとみられている。
ごみ削減から製品開発へ
デル・テクノロジーズの松本笑美・Japan CDO Office ESGエンゲージメントジャパンリードは、グローバルと連携し、日本で顧客にESG(環境、社会、ガバナンス)に関する情報提供を行っている。同社は、サステナブルな製品作りに20年以上にわたって取り組んでいる。2005年ごろからはリサイクルパーツを用意し、リサイクルサービスも始めた。これらは米本社のマイケル・デル会長兼CEOが、サステナブルな製品作りに早くから着目していたことも影響している。サステナブル調達のようなものが普及することは予測していた。とはいえ、当初から「サステナブル」がキーワードだったわけではない。「もともとは『ごみをなくそう』から始まった。15年12月に採択されたパリ協定(気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定)やSDGsなどを受け、調達も含めた企業のESG評価や、ESGに対応した企業が投資対象になることなどもあり、企業としてサステナブルな調達をより考えるようになった」と松本氏は話す。
ESGエンゲージメントジャパンリード
現状、世の中の電力の3%程がデータセンターで消費されている。電力消費を減らしCO2排出量を減らすことには、ITベンダーとしては当然注力する。そして環境問題だけでなく、人権やサプライチェーンのリスク、各国の規制への準拠や国際的な条約などにしっかりと取り組めるかが重要だ。これらが同社におけるサステナブル調達の動きの源流となっている。
「日本でも、2年ほど前から具体的にサステナブル調達に関する問い合わせが顧客から出始めた。欧州ではその2、3年前から話題になり、取り組み始めていた」と松本氏。日本では当初、サステナブル調達とはどういう取り組みかが問われたが、2年を経て世界の動きや欧州の先行企業の具体的な取り組みに顧客はかなり注目している。
日本でもサステナブル調達の要求に応えられなければ、ビジネス機会の損失となると警告を鳴らすのは同社の上原宏・執行役員製品本部長・データセンターソリューションズ事業統括だ。顧客からの提案依頼書にも「提案するハードウェアはグリーン調達ガイドラインに準拠すること」などの項目が挙がるようになった。そのため営業活動の中でも、松本氏が顧客にESGに関する取り組みを説明する機会はかなり増えている。ESG的な取り組みはこれまで、企業として「あればよい」といった存在だった。それがここ1、2年は企業価値に変わってきていると松本氏は指摘する。
日本企業ではサステナブル調達の取り組みを社会的な責任や社会貢献の一つと捉える向きもあるが、最近は「価格が安いかではなく、サステナブル調達を優先して製品を選ぶようにステージが変わってきた」と上原氏。結果的に同社では、製品開発の中にサステナブルな思想、方針を入れ込んでいる。先日発表した新しいPowerEdgeサーバーの四つのポートフォリオにも「サステナブル」が入り、「水で冷やすなど提供するテクノロジーもサステナブルなものに変わっている」という。
「規模の経済」もESGにメリット
同社は、顧客に自社の取り組みを伝えるための「ESGレポート」を毎年更新している。これはデル全体でESGにどう取り組んでいるかだけでなく、顧客のサステナブル調達で必要な情報も含まれている。環境への負荷が小さく、人権に配慮し社会規範などに則って製品が製造されているかは、自社工場などだけでなく調達する部品の製造、輸送などを含むサプライチェーン全体で捉える必要がある。ESGレポートを見れば、サプライチェーンに至るまで、サステナブルにどう取り組んでいるかが把握できるのだ。加えて、グローバル、ローカルで顧客からの製品のサステナブル調達に関する問い合わせに回答する体制も整えられている。サプライチェーンも含め回答できるようにするため、サプライチェーンに参加する企業の行動規範も明確化している。サプライヤーには、デル自身のESGへの対応項目と同様なものを順守してもらう。国や地域により規制や法律は異なるので世界標準の行動規範が一つあるわけではなく、それぞれの地域の状況に合わせたものが用意されている。
その上で各サプライヤーとは、「覚書」を取り交わすか、年1回のCSR調査を実施し行動が守られているかを確認する。場合によってはサプライチェーンのメンバー企業に、監査を実施することもある。またトレーニングを提供し、ESGへの対応レベルを上げるサポートも行う。「一次サプライヤーに対しては、デルの社員と同等レベルの行動規範を求めている」と松本氏は言う。
ESGを含めた強固なサプライチェーン体制を築けていることで、サステナブル調達の要求に対し必要な情報を迅速に提供することにつながる。これができることは、製品の性能や価格、セキュアであることに加え、もう一つの製品価値になっているようだ。上原氏は「デルは部品を安く調達しようとしているだけでなく、部品のバックグラウンドチェックなどをしっかりと行い、それがクリーンであることを担保している」と述べる。
今後のIT市場では、サプライチェーンが健全であることが「製品を提供するベンダーとしてのリスク回避となり、それが社会的な責任でもある」と語る。実際にサプライチェーンに何らかの問題が発生すれば、それも含めてベンダーとして責任を取ることになり、あらかじめ健全性を担保するコストよりもリスクのほうが大きくなる。その上で購入価格が安いだけでなく、顧客はサステナブルというこれまでとは異なる価値で製品を判断している。
同社が強みとして挙げる「規模の経済」も、ESGのためには間違いなく効いてくる。規模が大きくなれば、サプライチェーン全体の安定化を図りやすい。安定化こそが重要であり、安価に調達できることはサプライチェーンのメリットの一部に過ぎない。規模の経済により、サプライヤーと長期スパンで計画的に物事を進められることがESGの面でも大きなメリットだと、上原氏は強調する。
コラボレーションで取り組む
国内のハードウェアビジネスにおいて、同社はチャネルパートナーとサステナブル調達について会話する機会が確実に増えているという。パートナーとはこれまで「経済的なメリットの話題が主だったが、例えばデルのサーバーならデータセンターの温度を5度高く運用できるので、結果的に電力消費量が減りCO2も削減できる、といった話題が増えている」と上原氏。サステナブルな製品の話が先にあり、次に価格などがくるケースが増えているのだ。加えて、そもそも顧客が価格の前にサステナブルに関する話を聞きたがっていると松本氏は言う。大規模な企業はサステナブル調達への対応に対し、自ら考え行動できる。一方でそれほど規模の大きくないところもサステナブルへの関心が高まっており、同社やパートナーに情報や対応のサポートを求めるケースがある。企業はサステナビリティに対し積極的に取り組んでいるところをパートナーに示し、彼らと一緒にサステナブル調達に取り組んだほうがよいことにも気づき始めている。
今後、サステナブル調達に対応できることが、ITベンダーの戦略でも重要な柱となる。そのため、製品やサービスの開発思想からサステナブルに取り組む必要があり「これはかけ声だけでなく、具体的に製品やサービスへ反映させなければならない」と上原氏は強調する。そして「きれい事ではなく皆さんと一緒に社会貢献するのがマイケル・デルの思想でもあり、それがデル製品やサービスに組み込まれている」と松本氏も言う。
デルはESG全てに対し、数値目標を掲げている。これら目標の達成は、1社では成し遂げられない。ESGの取り組みが1社でできないことは、顧客やパートナー企業も理解している。そのためこれからは、自分の会社だけが勝ち組になるのではなく、さまざまなパートナーと一緒に社会全体で目標を達成する必要がある。
さらに、災害の多い日本では、安全で持続性のある社会を築くにはどうすべきかを考える必要がある。これには、テクノロジーの進化で解決できることもあり、この課題にもさまざまな企業が一緒に取り組むことがより近道だ。松本氏は、さまざまな企業が一緒になって取り組めるかが、ESGのゴールを達成するには重要になると語る。今後は製品も、そして製品以外のESGについても、コラボレーションで進めることになるだろう。
地球環境や社会的な負荷が少ないと保証された製品やサービスを購買する「サステナブル調達」の動きが国内で広がっている。しかし、明確な調達方法が確立されているわけではなく、調達側も提供側もまだまだ手探りの状況だ。多くの電力エネルギーを消費するIT業界では、サステナブル調達にどのように取り組んでいるのか。幅広いハードウェア製品をグローバル展開するデル・テクノロジーズに話を聞いた。
(取材・文/谷川耕一 編集/藤岡 堯)
サステナブル調達については、欧州が先行するかたちで広がり、近年は日本でも取り組みが拡大している。グローバルでビジネスを展開している製造業などでは「サステナブル調達ガイドライン」を公表し、ガイドラインに沿った製品やサービスしか調達しないと表明している企業もある。企業がサステナブル調達に取り組むことは、地球環境への配慮や社会課題に対して貢献しているとして、ブランドイメージの向上にもつながる。今後は官公庁や自治体でも導入が進むとみられている。
サステナブル調達のようなものが普及することは予測していた。とはいえ、当初から「サステナブル」がキーワードだったわけではない。「もともとは『ごみをなくそう』から始まった。15年12月に採択されたパリ協定(気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定)やSDGsなどを受け、調達も含めた企業のESG評価や、ESGに対応した企業が投資対象になることなどもあり、企業としてサステナブルな調達をより考えるようになった」と松本氏は話す。
松本笑美 Japan CDO Office
ESGエンゲージメントジャパンリード
現状、世の中の電力の3%程がデータセンターで消費されている。電力消費を減らしCO2排出量を減らすことには、ITベンダーとしては当然注力する。そして環境問題だけでなく、人権やサプライチェーンのリスク、各国の規制への準拠や国際的な条約などにしっかりと取り組めるかが重要だ。これらが同社におけるサステナブル調達の動きの源流となっている。
「日本でも、2年ほど前から具体的にサステナブル調達に関する問い合わせが顧客から出始めた。欧州ではその2、3年前から話題になり、取り組み始めていた」と松本氏。日本では当初、サステナブル調達とはどういう取り組みかが問われたが、2年を経て世界の動きや欧州の先行企業の具体的な取り組みに顧客はかなり注目している。
日本でもサステナブル調達の要求に応えられなければ、ビジネス機会の損失となると警告を鳴らすのは同社の上原宏・執行役員製品本部長・データセンターソリューションズ事業統括だ。顧客からの提案依頼書にも「提案するハードウェアはグリーン調達ガイドラインに準拠すること」などの項目が挙がるようになった。そのため営業活動の中でも、松本氏が顧客にESGに関する取り組みを説明する機会はかなり増えている。ESG的な取り組みはこれまで、企業として「あればよい」といった存在だった。それがここ1、2年は企業価値に変わってきていると松本氏は指摘する。
日本企業ではサステナブル調達の取り組みを社会的な責任や社会貢献の一つと捉える向きもあるが、最近は「価格が安いかではなく、サステナブル調達を優先して製品を選ぶようにステージが変わってきた」と上原氏。結果的に同社では、製品開発の中にサステナブルな思想、方針を入れ込んでいる。先日発表した新しいPowerEdgeサーバーの四つのポートフォリオにも「サステナブル」が入り、「水で冷やすなど提供するテクノロジーもサステナブルなものに変わっている」という。
(取材・文/谷川耕一 編集/藤岡 堯)

サステナブル調達については、欧州が先行するかたちで広がり、近年は日本でも取り組みが拡大している。グローバルでビジネスを展開している製造業などでは「サステナブル調達ガイドライン」を公表し、ガイドラインに沿った製品やサービスしか調達しないと表明している企業もある。企業がサステナブル調達に取り組むことは、地球環境への配慮や社会課題に対して貢献しているとして、ブランドイメージの向上にもつながる。今後は官公庁や自治体でも導入が進むとみられている。
ごみ削減から製品開発へ
デル・テクノロジーズの松本笑美・Japan CDO Office ESGエンゲージメントジャパンリードは、グローバルと連携し、日本で顧客にESG(環境、社会、ガバナンス)に関する情報提供を行っている。同社は、サステナブルな製品作りに20年以上にわたって取り組んでいる。2005年ごろからはリサイクルパーツを用意し、リサイクルサービスも始めた。これらは米本社のマイケル・デル会長兼CEOが、サステナブルな製品作りに早くから着目していたことも影響している。サステナブル調達のようなものが普及することは予測していた。とはいえ、当初から「サステナブル」がキーワードだったわけではない。「もともとは『ごみをなくそう』から始まった。15年12月に採択されたパリ協定(気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定)やSDGsなどを受け、調達も含めた企業のESG評価や、ESGに対応した企業が投資対象になることなどもあり、企業としてサステナブルな調達をより考えるようになった」と松本氏は話す。
ESGエンゲージメントジャパンリード
現状、世の中の電力の3%程がデータセンターで消費されている。電力消費を減らしCO2排出量を減らすことには、ITベンダーとしては当然注力する。そして環境問題だけでなく、人権やサプライチェーンのリスク、各国の規制への準拠や国際的な条約などにしっかりと取り組めるかが重要だ。これらが同社におけるサステナブル調達の動きの源流となっている。
「日本でも、2年ほど前から具体的にサステナブル調達に関する問い合わせが顧客から出始めた。欧州ではその2、3年前から話題になり、取り組み始めていた」と松本氏。日本では当初、サステナブル調達とはどういう取り組みかが問われたが、2年を経て世界の動きや欧州の先行企業の具体的な取り組みに顧客はかなり注目している。
日本でもサステナブル調達の要求に応えられなければ、ビジネス機会の損失となると警告を鳴らすのは同社の上原宏・執行役員製品本部長・データセンターソリューションズ事業統括だ。顧客からの提案依頼書にも「提案するハードウェアはグリーン調達ガイドラインに準拠すること」などの項目が挙がるようになった。そのため営業活動の中でも、松本氏が顧客にESGに関する取り組みを説明する機会はかなり増えている。ESG的な取り組みはこれまで、企業として「あればよい」といった存在だった。それがここ1、2年は企業価値に変わってきていると松本氏は指摘する。
日本企業ではサステナブル調達の取り組みを社会的な責任や社会貢献の一つと捉える向きもあるが、最近は「価格が安いかではなく、サステナブル調達を優先して製品を選ぶようにステージが変わってきた」と上原氏。結果的に同社では、製品開発の中にサステナブルな思想、方針を入れ込んでいる。先日発表した新しいPowerEdgeサーバーの四つのポートフォリオにも「サステナブル」が入り、「水で冷やすなど提供するテクノロジーもサステナブルなものに変わっている」という。
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- コラボレーションで取り組む
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