――2023年を振り返ってどうか。
総じて大きく成長できたいい1年だった。23年11月期の実績としては、SaaSのARR(年間経常収益)が231億5000万円で、前期比42%増となった。法人向け事業の「Businessドメイン」ではARRが46%増の166億9000万円となり、特に50人以上の会社を指す中堅企業のARRの伸びが71%増と高い成長率を示し、SMB向けについても32%増と着実な伸びを見せている。中堅企業やエンタープライズの領域をしっかり伸ばすことができた。
代表取締役社長CEO 辻 庸介
――エンタープライズや中堅向け領域が好調の要因はどこにあるか。
プロダクトのクロスセルが徐々に進んでいるからだと考えている。これにより、ユーザーベースが増えていることに加えて、1企業あたりの支払額が前年同期比11.9%増と伸びている。当社は経理財務や人事労務など、中堅企業向けのプロダクトを数多く持っており、クラウドに関する業界随一のプロダクトラインアップを提供できている。また、開発力に裏付けられたプロダクトの質も強みの一つだ。
――金融機関に関するビジネスにも注力されている。
金融機関を通じて企業に業務DXサービスを提供する「Mikatanoシリーズ」が好評で、売り上げも力強く成長している。地方のDX推進という意味では、金融機関が強力なパートナーとなっており、36金融機関まで取り組みが広がってきている。当社は、いいプロダクトをつくって届け、ユーザーの生産性の向上から成長のスピードを上げるところまでサポートしていきたいと考えている。しかし、全国をカバーするとなると、われわれだけでは難しいので、金融機関や会計事務所、SIer、販売代理店などとのパートナーシップが大事になる。
EBITDA黒字化を目指す
――課題は残ったか。
足元はしっかり伸びているし、プロダクトもそろってきたという意味では順調だった。しかし、パートナービジネスに関して、もう少し早めに動ければよかったとも感じている。
――24年の目標は。
目標達成に向けてなにか新しいことに着手するという以上に、今、取り組んでいる分野のスピードやクオリティをより上げていく。具体的には、特にSIerや販売代理店とのパートナーシップ構築など課題になっているパートナービジネスの強化に取り組む。そのほか、プロダクトの拡充やアップデートをさらに強力に推進し、SaaSと金融サービスを連携させるSaaS×Fintechの戦略をしっかり進めていく。これらを通して、企業の価値を客観的に評価する指標のEBITDA黒字化の達成を目指す。