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AI PC元年、普及のかぎは 半導体メーカーの戦略

2024/06/03 09:00

週刊BCN 2024年06月03日vol.2016掲載

 生成AIが脚光を浴びる中、半導体メーカー各社がAI処理の高速化機能を持つプロセッサーを続々発表している。PCメーカーは、それらを搭載したAI対応の新製品を投入し、2024年を「AI PC元年」と位置付ける。「ChatGPT」などクラウドに依存するAIに対し、端末上で処理するAIには、消費電力、応答速度、プライバシーなどの面でメリットがある一方で、本格的な普及にはAI PCに対応したソフトウェア開発が欠かせない。各社はAI PC普及に向けどんな戦略を描いているのか。
(取材・文/堀 茜、日高 彰)
 

米Intel
AIのクラウド依存を脱却

 ChatGPTをはじめとする多くの生成AIは、さまざまなデータを学習したAIモデルをクラウドサービスとして提供している。このため、AIを業務に活用する「推論」のフェーズにおいても、クラウド上のコンピューティングリソースを消費することが前提となっている。

 これに対し、業務端末であるPCのプロセッサーにAI処理の専用回路であるNPU(Neural Processing Unit)を搭載し、クラウドではなく端末側でAIワークロードを実行する仕組みの実現に向けた製品が、半導体メーカー各社から提案されている。PC用CPU最大手の米Intel(インテル)は、CPU、GPUに加えてNPUを一つのプロセッサー上に包含した「Core Ultra」の提供を2023年12月に開始し、これを搭載した「AI PC」が各社から発売されている。インテルでは、25年末までに世界で1億台以上のAI PCを普及させることを目指している。

 なぜAI処理を端末側で行う必要があるのか。インテル日本法人の安生健一朗・技術本部部長は、現在主流のクラウドに依存するAIアプリケーションについて、「データセンターの消費電力の増大、クラウド利用料の高騰など、すべての推論をクラウド経由にすることは環境面やコスト面から限界がある」と課題を指摘する。また、ビジネスにおけるAI活用ではデータセキュリティー面の課題もある。「社内データをクラウドに上げることに抵抗がある企業は非常に多く、AIの便利さとデータプライバシーを両立させる仕組みが求められている」(同)。
 
インテル 安生健一朗 技術本部部長

 安生部長は「オンプレミスのサーバーとPCを活用して、企業にAIの価値を届ける役割を果たすのがAI PCだ」と説明する。個人がPC上でやり取りしたメールやWebの検索履歴などを学習した大規模言語モデル(LLM)がPC内で処理を行うことによって、よりパーソナライズされた推論を行い、個人が活用しやすいかたちのアウトプットができるというメリットもあるとする。

 現状、利用者が最もわかりやすいかたちでAIの価値を体感できる場面が、オンライン会議だ。背景をぼかす際に、人物との境目を明確にしたり、音声のノイズを取り除いたりといった機能をAIが担っている。これらの処理は応答速度の問題や、前述のプライバシーの観点から、端末側で実行する必要があるが、PC上のCPUやGPUに負荷をかけると、消費電力が増大してバッテリー駆動時間が短くなったり、同時に動いている他のアプリケーションのパフォーマンスを低下させたりする。AIワークロードに特化したNPUに処理を任せることで、より少ない電力で快適にAIの恩恵を受けられるようになるというわけだ。
この記事の続き >>
  • ソフト開発、早期製品化をサポート
  • 米AMD オープンソースでソフト開発を推進
  • 米Microsoftと米Qualcomm AI PCの新基準となる「Copilot+ PC」

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